高密度で省電力な新しいデータセンター向けサーバー
ラックとブレードを合体?マルチノードサーバーに注目
2012年09月18日 06時00分更新
最近、データセンターサーバーの有力な選択肢として台頭しつつあるのが、既存のラックマウントサーバーをより高密度化した「マルチノードサーバー」である。ここではこれまでのフォームファクター(形状)の変遷と共に、マルチノードサーバーの特徴について見ていこう。
時代と共に変わるサーバーのフォームファクター
サーバーのフォームファクターは、時代と共に大きく変わっている。タワー型がメインだった1990年代のサーバーは、いわゆるRAS(信頼性、可用性、拡張性)といういわゆる3要素を満たすことが最優先され、フォームファクターに関しては特に意識されてこなかった。
しかし、1990年代の後半のドットコムブームでデータセンターの建設ラッシュが起こると、サーバーをラックにまとめて収納する必要が出てきた。従来からのタワー型に加え、薄型で集積密度を重視したラックマウントサーバーが登場した。当初はISPでの利用が多かったUNIXサーバーからサーバーのラックマウント対応は、その後x86サーバーにも浸透していく。
「ピザボックス型」などと呼ばれたラックマウントサーバーは当初ISPやホスティング事業者が利用する特殊用途の製品だったが、その後データセンターの利用が一般企業に拡がってくるとは一気に市民権を得るようになる。製品が汎用化することで価格も低廉になったほか、拡張性や性能面でもタワー型に劣らないスペックを持つようになった。
一方、仮想化技術やグリーンITの台頭と共に、エンクロージャーにサーバーモジュールを差し込むという形状のブレードサーバーも2000年に入ってから登場した。当初はノート用の低消費電力CPUを用いることで発熱などを抑え、高密度な実装を実現するといったコンセプト的な製品も多かったが、その後は性能や拡張性など汎用サーバーとしてのスペックも充実するようになった。現在では、スイッチやストレージをも統合した仮想化向けプラットフォームとして、進化を続けている。また、電源やファンなど共用が多いため、グリーンITという観点でも優れた製品といえる。
データセンターでの最適化を目指す
このようにデータセンター向けのサーバーとしては、長らくラックマウントサーバーとブレードサーバーが利用されてきたが、最新のデータセンターの需要にうまくマッチしないことが増えてきた。ラックマウントサーバーの限界は、ラックの最小単位である1Uよりも集積密度を高められないこと。ブレードサーバーの課題は消費電力や重量の問題から、ラックにフル実装できないこと、そしてベンダーが用意した運用管理ツールや手順を用いる必要がある点だ。まさに「帯に短し、たすきに長し」ということで、ニーズを満たすのが難しい。
ラックあたりにどれだけサーバーを詰め込めるかは、データセンタービジネスの大きなテーマである。集積密度が上がれば、ユーザーの収容数や仮想マシンの台数が増える。そのため、一部のデータセンターは自前で高密度なサーバーを自社開発し、サービスに投入してきた。そして、ベンダーからもラックマウントサーバーとブレードサーバーのまさにいいとこ取りを実現する製品が提案されてきた。ラックの前後からマウントするハーフサーバーや、初期のブレードサーバーのように電源のみ共用するモジュールサーバーだ。
今回紹介するマルチノードサーバーも、こうした試みの延長といえる。マルチノードサーバーとは、文字通りシャーシに複数のサーバーモジュールを挿入するタイプの製品だ。ブレードサーバーと似ているが、高度な管理機能はなく、運用面ではむしろラックマウントサーバーに近い。最近の注目は、2Uのシャーシに4台のサーバーモジュールを格納できるいわゆるマルチノードサーバーだ。日本ヒューレット・パッカードのほか、富士通やNECなどが次々と製品を投入している。
本企画では、NECと日本ヒューレット・パッカードの2機種を紹介する。両者とも、開発コンセプトの違いが共用部分やフォームファクターに現れているのが興味深い。現在は、比較的電力容量の大きいデータセンターでの利用を前提としているが、今後こうしたマルチノードサーバーの流れはラックサーバーに波及するのは間違いない。
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