ディスプレーデバイスの進化が
Windowsの画面解像度を変えた歴史
Windows 8では、ハードウェア上の最低画面解像度は1024×768、いわゆるXGAと規定されている。特にMetro環境に対しては、これよりも小さな解像度にはならないとされている。今回のテーマは、これまでのWindowsでも多くの問題を生んだ画面解像度についてを解説しよう。
Windowsの最低解像度をXGAにするという規定は、実はWindows XPの頃からあった。起動時の最低解像度を本来はXGAに限定していたため、それ以下の解像度のディスプレーでは、起動できない可能性があった(実際はできたわけだが)。
しかしXPが登場した頃は、まだCRTディスプレーが主流だった。CRTは内部で水平・垂直のスキャンをしており、入力端子からの信号に同期して動作する。このときPC側(グラフィックスカード)は、解像度とは別に水平・垂直の周波数をディスプレーに合わせる必要があった。解像度を上げるには、ディスプレー側が受け入れられる水平・垂直の走査周波数を高くする必要があった。PC側が出力する信号のスキャン周波数とディスプレーの仕様が一致しなければ、画面は表示できない。
その後、複数のスキャン周波数に対応できる、いわゆるマルチスキャンディスプレーが登場したが、一方のPC側は、同じ解像度でも複数のスキャン周波数のモードを持っていた。同じ解像度の場合、単純に言えば走査周波数が高いほうが画面が見やすかったからだ。周波数が低いとちらつきが見えるが、周波数が高ければきれいに見えて疲れにくいと言われていた。だが高い周波数になるほど、高速な回路と高性能なCRT(いわゆるブラウン管)が必要になる。
マルチスキャンディスプレーが主流となっても、解像度とスキャン周波数の間には一定の関係があった。ディスプレーの接続には解像度やディスプレーの物理的なサイズだけでなく、スキャン周波数というパラメーターも存在していた(今でもあるが)。解像度とスキャン周波数には多数の組み合わせがあり、それを正しくサポートするのは、実は結構大変だった。
Windows XPでの解像度の制限には、過去の「CGA」(640×200ドット)や「EGA」(640×350ドット)といった、古いデバイスを整理するという目的があった。接続可能なディスプレーとグラフィックスカードを整理して、起動時にはVGA(640×480ドット)、Windows自体はSVGA(800×600ドット)以上の解像度を使えるようにすることが主眼であったわけだ。
これが液晶ディスプレーになると、画面解像度は液晶パネルそのもののドット数とデータの転送レートで決まるようになった。つまり、Windowsが管理すべきパラメーターは解像度とディスプレーの物理的なサイズのみとなり、最大解像度は液晶パネルの縦横ドット数で決まる固定値となった。解像度もXGA以上が当たり前となり、Windows向けに低解像度のディスプレーが新たに作られることはほとんどなくなった。XGA未満の解像度が多かったネットブックは、例外的存在だろう。
Metroアプリケーションの最小解像度は
1024×768ドット
Windows 8では最低解像度を1024×768ドットに規定しているが、これはマイクロソフトの公開した仕様書「Windows 8 Hardware Certification Requirements」(2012年5月9日版)に記載されている。それによると、
System.Fundamentals.Graphics.Display.MinimumResolutionandColorDepth
というパラメーターで、「1024×768ドットで32bitカラー」と定義されている。ただしこの定義は、Windowsクライアントのx86(32bit)とx64(64bit)、およびWindows Server 2012だけで、タブレットについては、別途値が定められている。
この1024×768ドットという解像度は、Windows 8のMetro Styleアプリケーションを利用する条件にもなっている。つまりMetro Styleアプリは、XGA以上の解像度がなければ起動しない。Windows 8での最低解像度の規定は、ハードウェアを制限するものというよりも、ソフトウェアに対して最低限の解像度を定めるものと考えるべきだろう。Metro Styleアプリケーションの開発者は、「1024×768ドットよりも小さい画面で動作することはありえない」という前提で、画面レイアウトを設計できる。
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