「浅草」と言えば、雷門、仲見世、浅草寺。観光資源に乏しい東京にあって、江戸情緒の名残り、昭和の面影を残す貴重な街である。実際ここでは、法被を着た人々がリキシャで行き交い、「ちきしょうめえ」「べらぼうめえ」等と言い放ちながら、黄金に輝く排泄物のようなものを見上げている。私は決して嘘を言っていない。
昨年開催した「大阪シンセ界」ツアー(関連記事)。大阪の天満界隈には、シンセのギャラリー「implant4」、シンセ専門の古本屋「ビオンボ堂」、そして店内にディスプレイされたシンセがノイズを奏でる「電氣蕎麦」と、通常あり得ないお店が点在していた。
「自分の好きなものを好きなように扱いたい」、ただそれだけの理由で存在している店。東京にはなぜそうした文化がないのか。そう嘆いてツアーは終わったのである。
が、 浅草には、なんとオンド・マルトノを作っている人がいるという。その名を「浅草電子楽器製作所」、略して「ASADEN」。そして、そのオンド・マルトノの製作家が自力で作ったショールーム「オンド・マルトノ・カフェ」が、突如として浅草2丁目に出現したのである!
「えーっ、オンド・マルトノって浅草の新しい踊りか何か?」
というような反応も、三社祭のこのシーズン、十分に予想できるので、ここで一応ご説明。オンド・マルトノは、1928年に発明された黎明期の電子楽器で、オンド(Ondes)はフランス語で「波」、マルトノはこれを発明したフランス人モーリス・マルトノ(Maurice Martenot)の名前からきている。発音の原理はテルミンと同じながら、リボンや鍵盤など、演奏者が音程を取りやすいよう工夫されている。
発明者のモーリス・マルトノは1980年に亡くなるまで、この楽器の改良を続けた。その後をアトリエ・モーリス・マルトノが引き継いだが、1988年を最後に楽器の生産は終了。楽器の生産台数も限られており、購入するにしても高価な楽器だ。だから名前こそ知ってはいても、実際の楽器を見たことも、弾いたこともない方がほとんどではないのか。かくいう私も、iPadアプリでしか知らない。
が、浅草へ行けば、このコアな楽器に接することができるのだ。そしていざ行ってみれば、浅草にはASADENのほかにも電子音楽関連のディープスポットがあふれかえっているではないか。いざ行かん、21世紀の電子楽器の故郷、浅草へ!
Petites Ondes 〜プティット オンド〜 | |||
---|---|---|---|
価格 | 250円 | 作者 | Masao Suzaki |
バージョン | 1.0.1 | ファイル容量 | 1.9 MB |
カテゴリー | ミュージック | ユーザーの評価 | (5.0) |
対応デバイス | iPad Wi-Fi / iPad 2 Wi-Fi+3G / iPad 2 Wi-Fi / iPad Wi-Fi+3G | 対応OS | iOS 4.0以降 |
浅草エレキスポット 巡礼マップ
より大きな地図で 浅草エレキスポット 巡礼マップ を表示
この連載の記事
-
第164回
トピックス
より真空管らしい音になるーーNutubeの特性と開発者の制御に迫る -
第163回
トピックス
超小型ヘッドアンプ「MV50」のCLEANは21世紀の再発明だった -
第162回
トピックス
欲しい音を出すため――極小ヘッドアンプ「MV50」音色設定に見る秘密 -
第161回
トピックス
最大出力50Wのヘッドアンプ「MV50」は自宅やバンドで使えるのか? -
第160回
トピックス
新型真空管「Nutube」搭載ヘッドアンプのサウンドはなにが違う? -
第159回
トピックス
開発で大喧嘩、新型真空管「Nutube」搭載超小型ヘッドアンプ「MV50」のこだわりを聞く -
第158回
トピックス
唯一無二の音、日本人製作家の最高ギターを販売店はどう見る? -
第157回
トピックス
「レッド・スペシャルにないものを」日本人製作家が作った最高のギター -
第156回
トピックス
QUEENブライアン・メイのギターを日本人製作家が作るまで -
第155回
トピックス
QUEENブライアン・メイのギターは常識破りの連続だった -
第154回
トピックス
てあしくちびるは日本の音楽シーンを打破する先端的ポップだ - この連載の一覧へ