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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第94回

伝説の電子楽器をツマミに酒を飲む~浅草エレキスポット巡礼

2012年05月19日 12時00分更新

文● 四本淑三

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大阪の新世界になんとなく似ている浅草六区。通天閣にしては若干大きすぎるが、書き割りみたいなタワーもある

 「浅草」と言えば、雷門、仲見世、浅草寺。観光資源に乏しい東京にあって、江戸情緒の名残り、昭和の面影を残す貴重な街である。実際ここでは、法被を着た人々がリキシャで行き交い、「ちきしょうめえ」「べらぼうめえ」等と言い放ちながら、黄金に輝く排泄物のようなものを見上げている。私は決して嘘を言っていない。

 昨年開催した「大阪シンセ界」ツアー(関連記事)。大阪の天満界隈には、シンセのギャラリー「implant4」、シンセ専門の古本屋「ビオンボ堂」、そして店内にディスプレイされたシンセがノイズを奏でる「電氣蕎麦」と、通常あり得ないお店が点在していた。

 「自分の好きなものを好きなように扱いたい」、ただそれだけの理由で存在している店。東京にはなぜそうした文化がないのか。そう嘆いてツアーは終わったのである。

 が、 浅草には、なんとオンド・マルトノを作っている人がいるという。その名を「浅草電子楽器製作所」、略して「ASADEN」。そして、そのオンド・マルトノの製作家が自力で作ったショールーム「オンド・マルトノ・カフェ」が、突如として浅草2丁目に出現したのである!

浅草電子楽器製作所(ASADEN)。オープンは2012年4月2日

 「えーっ、オンド・マルトノって浅草の新しい踊りか何か?」

 というような反応も、三社祭のこのシーズン、十分に予想できるので、ここで一応ご説明。オンド・マルトノは、1928年に発明された黎明期の電子楽器で、オンド(Ondes)はフランス語で「波」、マルトノはこれを発明したフランス人モーリス・マルトノ(Maurice Martenot)の名前からきている。発音の原理はテルミンと同じながら、リボンや鍵盤など、演奏者が音程を取りやすいよう工夫されている。

 発明者のモーリス・マルトノは1980年に亡くなるまで、この楽器の改良を続けた。その後をアトリエ・モーリス・マルトノが引き継いだが、1988年を最後に楽器の生産は終了。楽器の生産台数も限られており、購入するにしても高価な楽器だ。だから名前こそ知ってはいても、実際の楽器を見たことも、弾いたこともない方がほとんどではないのか。かくいう私も、iPadアプリでしか知らない。

 が、浅草へ行けば、このコアな楽器に接することができるのだ。そしていざ行ってみれば、浅草にはASADENのほかにも電子音楽関連のディープスポットがあふれかえっているではないか。いざ行かん、21世紀の電子楽器の故郷、浅草へ!

浅草電子楽器製作所ではオンド・マルトノをシミュレートしたiPadアプリ「Petites Ondes(by Skip Note Studio)」も販売中。どんな楽器なのかを知ってもらうにはこれを試してもらうのが早い。

Petites Ondes 〜プティット オンド〜 App
価格250円 作者Masao Suzaki
バージョン1.0.1 ファイル容量1.9 MB
カテゴリーミュージック ユーザーの評価(5.0)
対応デバイスiPad Wi-Fi / iPad 2 Wi-Fi+3G / iPad 2 Wi-Fi / iPad Wi-Fi+3G 対応OSiOS 4.0以降

浅草エレキスポット 巡礼マップ


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