ついに「OS X Lion」がリリースされた。Mac OS Xの8番目のメジャーリリースというと、それほど大したことがないように聞こえるかもしれない。しかし、実はこのLionは、2001年3月にMac OS Xの最初のバージョンがリリースされてから、きっちり10年目のアップグレードである。これから先10年の未来を見据えた、非常に重要な位置付けのアップグレードなのだ。
2001年からの10年間、ITの世界で、なんといっても最大の事件は2007年1月のiPhone発表だ。これによって、IT技術が使われる層や分野、あるいはその使われ方をはじめ、IT技術に接している時間や場所が激変してしまい、ある意味、IT業界そのものの再創造が始まったといえる。
ちょうどiPhone発表直後に「iPhoneは大きな森を生み出す『最初の木』」という記事を書かせてもらったが、iPhoneによって誕生した森はあまりに巨大で、いよいよパソコンそのものの存在すらも脅かす存在になってきた。
そんな状況をとらえ、アップルCEOのスティーブ・ジョブズ氏は、iPhoneやiPadを「ポストPC」機器と呼んで寵愛し、「パソコンはトラックのように退屈なものになってしまった」と語っている。しかし、今回リリースされたOS X Lionは、そんな「ポストPC機器時代」に、パソコンを改めて魅力的な製品として蘇らせる意欲的なOSだということが、そこかしこから感じられる。
以下では、同OSを1週間試用してみた所感をまとめてみたい。
Macとのつきあい方を激変させるマルチタッチ操作
Lionを一番特徴付ける機能は何だろうか?
おそらく、見た目の新しさによって、複数の作業環境を行ったり来たりできる「Mission Control」機能が最大の特徴に思えるだろう。実際にLionを本格的に使い始めると、ユーザーに起きる一番大きな変化は、「トラックパッドを使ったジェスチャー操作を多用するようになる」というものだ。
Mission Control関連の操作の動きも気持ちいい。Mission Control画面で任意のウィンドウを右上にドラッグして新規スペーシズ(作業場)をつくったり、消したりしてみよう(shiftキーを押しながら操作すれば、アニメーションがスロー再生される)
例えばSafariを使ったウェブブラウジングなどは、かなりiPad的になる。ウェブページを表示したところで、読みたい箇所を2本指でダブルタップしてコラム幅に合わせて拡大、あるいピンチイン/ピンチアウトの操作で倍率自在でズーム表示したりできる。また、上へ下へとウェブページをスワイプ(手で払うような動作)してスクロールさせることも可能だ。
ちなみに、このスクロール操作、先にiPadを使ってからMacに移ってくる人には問題がないが、昔からMacのマルチタッチ操作をしていた人は混乱するかもしれない。
従来は、ウェブページの下に隠れている部分を読むには、トラックパッドに指を2本置いてこれを下向きにスワイプした。スクロールバー内のボックスを下に引きずり下ろすことで、下にある情報が表示されようという発想だ。
一方、Lionの操作はiPadと同じで、下に隠れている情報を見るには、指を2本トラックパッドに置いて、ウェブページを上のほうに押し上げる。つまり、逆方向の上向きに払う操作になっているのだ(設定で逆転させることも可能)。
これも、Lionがいかに「マルチタッチ」の操作を重視し、設計されたOSかを垣間見させる側面のひとつだ。
(次ページに続く)
