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目指すはiTunes越え? 「Gumroad」を生んだ19歳社長に聞く

2012年03月21日 12時00分更新

文● 鈴木淳也(Junya Suzuki)

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決済システムもあくまでシンプルを目指す

 Gumroadはシンプルな仕組みが評価される一方で、「決済はクレジットカードのみ」「海賊版や盗用コンテンツを判別する仕組みがない」などの問題も当初から指摘されている。前者についてLavingia氏は「シンプルさを求めた結果」だとしており、現時点での最良解だとしている。

 例えば「決済にPayPalは使えないのか?」といった意見がある。だが同氏は

「現状のGumroadでは買い手が基本情報とクレジットカード情報さえ入れれば、ものの10分とかからずに決済手続きが完了する。一方でPayPalはさらにプラスαの手続きが必要なうえ、決済用のページを持たなければならなくなる。また手数料の問題もある。現在PayPalを決済に利用しているサイトの場合、おそらく月額10ドルないしはそれに近い水準のサービス利用料を徴収する必要が出てくるだろう。現在のGumroadの場合、手数料はトランザクション単位で発生し、利用額に応じた数%単位の負担で済む(現在は1件ごとに0.30ドル+金額の5%)。使ったときだけ必要分の負担をするというシステムだ」

とPayPalを採用しなかった理由について説明している。

“Gum”は“Ame”に興味あり!?

 現在、Gumroadでは売り手が売上金を月単位で回収するときのみPayPalを利用する仕組みを採用しており、買い手の支払い方法はクレジットカードに限定されている。クレジットカードはVISAやMasterCardのほか、日本でおなじみのJCB、ダイナースも利用でき、決済金額もドル、円、ポンド、ユーロに対応している(2012年3月現在)。基本的にはこれだけでも必要十分なのだが、各地域やユーザーによってさまざまなニーズがあるのは確かだ。

Gumroad登場後にインスパイアサイトとして登場した「Ameroad」。こちらはSNS連携という基本コンセプトを維持しつつも、決済や出品方法が独自実装された日本向けにローカライズされたサービスだといえるだろう

 例えば前述したGumroadの類似サイト「Ameroad」では、PayPal、Google Wallet(旧Checkout)、BitCashなど、多数の決済システムをサポートしている。これについてLavingia氏は

「(Gumroadの類似サイトが多数登場した現象は)興味深い。こうしたサイトが登場したことは歓迎するし、競合は意味のあることだ。日本には日本のマーケットに根ざしたニーズがあるだろうし、そうした部分を補完してくれることだろう。Gumroadとしてはシンプルを信条に、今後も自身の製品の改良に努めていくだけだ」

と述べ、あくまで現在の基本路線の延長でサービスを改良していく方針のようだ。とはいえクレジットカード決済が万能というわけではなく、あくまで現在の最良解というだけで今後5年、10年単位で変わっていく可能性があるともしている。目標としては、決済にかかる手数料を少しでも低減していくことが挙げられるという。

 またAmeroadなど類似サイトの存在については「どれだけの売上を出しているのかが気になる」とも言っている。

 現在Gumroadはサービス開始からの利用者が数万人、利用者1人あたりの1ヵ月の販売額が数千ドル(数十万円)程度に上るケースもあるという。立ち上げて間もないサービスだが「これは非常に大きな数字」(Lavingia氏)だといえる。仕組みの実装は重要だが、それでユーザーの負担が増えては意味がない。あくまでユーザー視点のサービスで、多くのユーザーが気軽に利用してくれるものでなければならないという考えのようだ。これがGumroadならではの差別化ポイントなのだろう。

リスクはSNSの信頼関係で回避できるはず

 Gumroadで問題の1つとしてよく挙げられている海賊版や盗用コンテンツなどの不正行為対策。現在Gumroadでは、コンテンツの売り買いは当事者同士の責任ということで、いっさい関知しないスタンスを取っている。一方でAmeroadなどでは一定のセキュリティ対策が施されており、このあたりのスタンスで違いが明確に出ている。Lavingia氏は「難しい問題」としながらも、Gumroadの仕組みがあくまでSNSに紐付いたシステムである点を強調し、売り手と買い手の間の問題をある程度解決するものだと説明する。

 「マーケットプレイス型サイトにおける問題は、出品者と購入者のお互いの素性がよくわからない点にある。例えば購入者は気に入ったものがあるとして、その出品者が知っている相手とは限らない。購入者についても同様で、出品者が購入者がどういった人物であるかはわからない可能性が高い。ゆえに過去の出品履歴や購入履歴をみて相手の信頼度を測ろうとする。だが例えばTwitterであれば、フォロワーは自身のファンか一定の知り合いである可能性が高いし、信頼関係がある程度築けている。もし売買でトラブルを起こしたとして、コミュニティ内での評判を落とすだけだ」

とLavingia氏はいう。評価システムや認証システムを導入するより、よりシンプルな形で売買が行なえる仕組みが重要というのがGumroadのスタンスのようだ。

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