CPU黒歴史インテル編は一段落したので、お次はAMDである。インテルについてはまだ細かいネタはあり、例えば採用製品のデモまで行なわれながら開発中止になった「MXP5400/5800」とか、バンガロールデザインセンターで最初に開発されたものの、完成前に開発中止となったCore MicroArchitectureベースのネイティブ・クアッドコア「Whitefield」など、いろいろある。だがこの辺は黒歴史というよりも、単に製品の開発に失敗したというレベルなので、今回は取り上げないことにする。
AMD編の第1弾では、知名度こそ低いがある意味AMDの方向性を決めることになったRISCプロセッサー「Am29000」と、これを転用した「K5」の話をしたい。
AMDの礎を築いた「Am2900」シリーズ
AMDは、インテルのセカンドソース契約を結んで8086以降の製品の生産を担ったことで大きくなった会社であったことは事実だが(関連記事)、これとは別に自社でもプロセッサーを開発していた。その最初の製品が「Am2900」シリーズである。
「bit-slice technology」という名前の方がむしろ有名かもしれないが、Am2900シリーズそのものは4bit幅の処理しかできないチップである。だがこのチップを2つ並べれば8bitの、4つ並べれば16bit、8つ並べれば32bitのシステムができることになる。逆に言えば、こんな具合に複数のチップを並べることを前提としたアーキテクチャーになっていた。
「それなら最初から8bitにすれば?」と思われそうだが、シリーズ最初の製品である「Am2901」が出荷されたのは1975年のこと。この頃の製造技術では8bitにすると大型化・複雑化してしまいやすいという側面と、4bit幅だと例えば12bitシステムでも容易に構築できるという側面もある。12bitなど今では考えられないが、昔はハネウェル社などが6bitをベースとしたアーキテクチャーのシステムを作っており、12bitというシステムも現実的だった。
それはともかく。このAm2900は、当時としてはかなり成功したチップであり、Data General社の「Nova 4」やDECの「PDP-10/11」、「Tektronix 4052」とか「Siemens Teleperm」など、非常に幅広い分野のシステムで採用されることになった。
構造的に言えばAm2901は「ALUのみ」なので、他にもキャリー制御用の「Am2902」とかバス・トランシーバーの「Am2905」、割り込みコントローラーの「Am2914」など、さまざまなチップを組み合わせないとCPUとしての体は成さないものだ。そのためAm2900シリーズを使ってシステムを作った場合は、ボード上に多数のAm2900シリーズチップが搭載されたもの全体が、CPUボードになる構造だった。1970年代ではこれは普通のことだった。
このAm2900の後継となるのが、今日のお題のAm29000である。後継と言いつつも、別に互換性があるわけではない。単にAm2900シリーズと同じく組み込み向けやワークステーション向けなどをターゲットとしてラインナップした、というだけの話である。型番的にAm2900を連想させる番号を付けたあたりは、AMDも意識してのことであろう。

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