ところがHuluは“大して儲からなかった”
Huluの米国での売り上げは、2010年に2億4000ドルに達している。だが、大手メディア企業が合同でサービスを運営している割には(つまり株主が期待したほどには)、収益は大きくないのだ。
意地悪な見方をすれば今回の日本進出も、「カタログから上げられる収益をなんとか拡大するため」と言えなくもない。レンタルビデオや国内配信事業者にとっては、ドル箱となっている米国の連続ドラマをいわば直接扱われる(しかも定額で!)わけで、国内のビジネスプレイヤーにとっての影響は決して小さくないのだが。
また日本版Huluには、米国内でHulu人気に火をつけた“広告型無料視聴モデル”はない。米国版よりも若干高い1480円での定額見放題のみが提供される。図に示したウィンドウ展開の中、アメリカでは「テレビの見逃し視聴」というニーズに応えたのに対し、日本版のそれはビデオグラム(レンタルビデオ市場)を代替するものとして設計されているように見える。つまり日本に進出したHuluは、米国本家とは全く性格が異なる“別物”なのだ。
さらに、すでに報じられているようにHuluは売却を計画している。
大手メディア企業にとって、Huluを共同で抱えても収益面でのメリットは少ない。UGC系動画サイトが無許諾配信への削除対応を整備している中、対抗処置としての役目を終えたという判断もあるだろう。一方でAppleやGoogle、Microsoftなど名だたるIT企業大手がHuluの買収に名乗りを上げている。特にGoogleは先日のモトローラ・モビリティ買収(約125億ドル)と同様、かなり大きな金額を提示するという予想もある。YouTubeのさらなる成長のためには「プロコンテンツの獲得が必須」(インタビュー)だ。また第一世代は失敗に終わった「Google TV」の次につなげるためにも、有料会員100万人を擁するHuluは是が非でも必要だろう。
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