OSに依存したスマホアプリから
HTML5アプリに移行を進める開発者
FacebookがHTML5アプリ開発中という噂は、FTがアプリを公開した後の6月中旬に「Project Spartan」として浮上したものだ。モバイル版Safariに最適化したものといわれており、実現すればそれなりのインパクトを与えそうだ。というのも、利用が増加の一途をたどっているモバイルアプリだが、その多くがゲーム(47%)、SNS(32%)といわれているからだ(Flurry調べ)。
FTやFacebookのような動きは単なる偶然ではなさそうだ。モバイルアプリの開発動向調査でも、モバイルウェブは明らかに増加している。同じく6月のイベントでコンサルティング会社のVision Mobileが発表した調査報告書によると、モバイルウェブはAndroid(67%)、iOS(59%)に次ぐ3位で、56%の開発者が「利用中」と回答している。これは前年の40%から大きな増加となる。(余談だが「今後使う計画のプラットフォーム」としては、Androidがトップで、Windows Phoneが2位、Chrome OSが3位。iOSは4位となった。)
モバイルウェブのメリットは、プラットフォームを問わずあらゆるウェブブラウザーで利用できる点、端末(プラットフォーム)を買い換えても使える点、開発コスト(数あるアプリのうち、売上げが1000ドル以下のアプリが最も多いといわれており、今後アプリの開発コストを抑えることは重要となりそうだ)などだろう。
現実にはHTML5でもその対応度はバラバラ
またユーザーにどう見つけてもらうか
だが、課題もある。HTML5の場合、端末/プラットフォーム側の対応がバラバラだ。また、流通チャネルやユーザーによる発見がどうなるのかという点も気になる。モバイルウェブでは、アプリストアではなく検索エンジンからの流入が主になりそうだが、FTやFacebookなどすでに知名度のあるコンテンツプロバイダならともかく、現在アプリストアに並んでいる多数のアプリの場合はどうなるのだろう?
全体としては、App StoreとAndroid Marketの2大アプリストアが主流となる傾向は今後も変わりなさそうだが、アプリストア側とアプリ開発者との勢力関係が以前ほどアプリストア優勢ではない場合が出てきている、と見てよさそうだ。料理本を自費出版するという、Angry Birds開発元のRovioほどになれば、もうアプリストアは必要としていないようにも見える。
人気アプリが手に入ることがアプリストアの魅力となるのであれば、アプリストア運営側(AppleやGoogle)は開発者、それにユーザーとの良好な関係を維持していく必要がある。今後、このバランス次第でアプリがどう流れるかが変わってきそうだ。
筆者紹介──末岡洋子
フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている
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