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第54回宇宙科学連合講演会に川口淳一郎教授が登壇

「はやぶさ」の父がプロジェクト秘話を語る

2010年11月20日 12時00分更新

文● 秋山文野

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JAXA川口淳一郎教授が登壇

 2010年11月17~19日、第54回宇宙科学連合講演会が東静岡で開催された。これは宇宙科学及び宇宙技術に関する講演を集中的に開催するイベント。

 特別講演では、「はやぶさ」のプロジェクトマネージャー・JAXA 宇宙科学研究本部の川口淳一郎教授が登壇し、「『はやぶさ』探査機の帰還/カプセル回収―その経緯と意義について」と題する、約1時間の講演を行なった。

特別講演には「はやぶさ」のプロジェクトマネージャー 川口淳一郎氏が登場。会場は満員となった

 折りしも講演の3日前には、「はやぶさ」のサンプル収納容器A室に納められていた微粒子1500個がイトカワ由来の地球外物質であると確認されたばかり。

 「はやぶさ」プロジェクトの巨大な成果に湧いた直後のプロジェクトマネージャー川口氏本人による講演だけに、380席のホールは期待を込めた聴衆で埋まった。

日米豪の3機関が「イトカワ起源の微粒子と確認」

 講演では、「はやぶさ」プロジェクト開始前の1985年当時、小惑星サンプルリターン検討を始めた状況から、7年間にわたるミッションを振り返ったのち、1500個のサンプルについても触れた。

 当初、A室のサンプル採取は収集率がなかなか上がらなかったが、テフロンのヘラでかき取る方法に変えたところ、1500個程度、岩石質の微粒子が確認できたという。

 その大部分は地球外物質で、輝石やカンラン石は火成岩にもたくさん含まれているものの、鉄の含有量が地上のものと宇宙起源のものはまったく違う。鉄の量を比較して、地球外物質と結論したとのこと。また、非常に酸化しやすく地球上ではまれな硫化鉄という物質も見つかっていることも大きな特徴だとか。

 また、地球外物質がイトカワ由来であることについては、「小惑星近傍で近赤外分光器で観測した情報とも、総合するとぴったり合っている。イトカワ起源であることもほぼ確実であると日米豪の3機関で確認した」と述べた。

講演はスライドを交えながらおよそ1時間にわたって行なわれた

国内の宇宙開発関係者が一堂に

 特別講演の行なわれた宇宙科学連合講演会は、日本航空宇宙学会が開催する、宇宙技術に関する研究発表の場だ。国内最大の宇宙機関JAXAはじめ、大学ほか各研究機関、宇宙産業メーカー関係者が集う。

 第54回となる今年は、「はやぶさ」の技術的成果に関するセッションが多く、運用体制やそのソフトウェア技術、軌道制御、蓄電池などのコンポーネント技術や地球再突入時の観測、広報・教育活動とその効果に関する発表などが行なわれた。

 川口教授にとってはいわばホームでの講演といえるもので、「今日も同じ話になりますが、それはご容赦いただいて、次あれが来るだろうと思っても口には出さないように」と冗談も交えながら講演は進んだ。

宇宙科学連合講演会は、一日数十の講演が立て続けに行なわれる「玄人向け」の一大イベントだ

成功の秘訣は「技術と根性」

 再突入にあたって「はやぶさ」本体が燃え尽きたことについては「7年間にわたって育ててきた子供のようなもの。簡単には割り切れませんが、カプセルを地球に帰すのが最終的なゴールだと、スタッフみな気持ちを切り替えた」

 また、カプセル回収時には、「帰還日の夜には目視でカプセル確認できたのは信じられないこと。夢にも思っていなかった、一週間から10日、みんなで歩こうと思っていた。私もオーストラリアに行こうと思っていたのに、あまりにも早くに発見されたので『おまえは来なくていい』と言われ、結局行けなくなってしまったのが心残り」

 そして対面したカプセルについては、「50億年の太陽系の歴史の化石、手掛かりが入った玉手箱。酸化する要因はないので当然とはいえ、あまりにもきれいなので7年間の飛行がまるで一夜のように感じられた」と、プロジェクトリーダーならではの実感のこもった言葉に聴衆は耳を傾けた。

 最後に川口教授は、「科学技術の前進やイノベーションには、ハイリスクな投資が不可避であり、成果を出すには長時間を要する。近視眼的な政策ではいけない」と語り、「『技術より根性』ということも述べたが、考えもなしにがんばればいいということではない。技術あっての根性。しかし意地と忍耐というのは非常に重要で、それあってこそ科学技術の成果が出る」として、成果を出すための精神力を強調した。

 さらに、「はやぶさは幸運に助けられて帰ってきたが、運だけに頼ってはだめ。それを実力に変えて定着させないと。『はやぶさ2』は技術の定着も目的としている」と継続することの重要性を説き、「高い塔を建ててみないと新しい水平線は見えてこない。できるだけ背伸びをして今見えている水平線の向こう、新たな水平線を見る努力を続けてほしい」と、若手の研究者を鼓舞して講演を終えた。

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