鳥取大学の総合メディア基盤センターは、VMware ESX Serverとネットアップのストレージ装置「NetApp FASシリーズ」を組み合せた学内のシステム基盤を構築した。専用のストレージシステムの導入により、高いパフォーマンスと確実なデータ保護を実現したのがポイントだ。
メールシステムと学内ディレクトリ
VMwareで利用できるストレージ装置
鳥取市と米子市にキャンパスを構える鳥取大学は、地域学部、医学部、工学部、農学部という専門性の高い4つの学部、大学院から構成されている。教員や学生が用いる鳥取大学のITシステムの構築、運営を行なっているのが、総合メディア基盤センターである。
今回、総合メディア基盤センターが学内インフラの一部として導入したのが、メールサーバーと学生用のホームディレクトリ用の専用ストレージシステムだ。メールに関してはストレージを消費するIMAP4を採用し、7000ユーザー、1日6万通という規模に至っている。このため、「従来のメールシステムの機器が老朽化・陳腐化していたので、リプレースは大きな課題でした。また、別組織が担当していたメールシステムがわれわれの管轄に移ってきたこともあり、スプールもかなりの容量が必要でした」(国立大学法人 鳥取大学 総合メディア基盤センター 准教授 工学博士 本村真一氏)という状態で、大容量のNFSボリュームが必要だった。
一方、学生用のホームディレクトリは、演習端末で利用するデータを格納するためのファイルサーバーである。従来、これらのシステムはx86サーバーで運用されていたが、可用性とパフォーマンスの点で問題があったため、Active DirectoryをベースにしたCIFSストレージが必要となった。
さらに、同大学では2006年からVMware ESX Serverを用いて、すでに100台のサーバーを仮想サーバーに移行している。そのため、このVMware 環境での利用が前提という点も重要だった。
メールシステム用のNFS、学内ディレクトリ用のCIFS、そしてVMware環境で利用でき、さらにD2D(ディスク間)でのバックアップやスナップショットなどの機能要件を含めた仕様書を基に、同大学は2009年に入札を行なった。この結果、ストレージ装置として導入されたのが、ネットアップの「NetApp FASシリーズ」である。
NetApp FASシリーズは、多彩なデータ管理機能を持つData ONTAPという専用OSをベースにしたエンタープライズ向けNAS(Network Attached Storage)の始祖とも呼べる製品。現在では、NFSやCIFSだけでなく、iSCSIやFCPなど幅広いプロトコルに対応し、VMware環境との親和性も大きな売りとなっている。
もともと鳥取大学の総合メディア基盤センターでは、2006年に既存システムのストレージ容量が限界に達するという事態が発生したことがあり、その際にミッドレンジモデルの「NetApp FAS2020」を一部導入していた。こうした経緯があったため、NetApp FAS への全面導入に関しても不安はなかったようだ。「仮想マシン上で計測してみましたが、十分なパフォーマンスを得ることができました。あくまで憶測ですが、RAID-DPとキャッシュがうまく機能しているのだと思います」(本村氏)という。
2009年9月に、NTT西日本がサーバー・ストレージ関連のシステムを落札。最終的に2010年2月にシステムがカットオーバーとなり、新学期から運用がスタートしている。
2つのサイトで堅牢なデータ保護を実現
シンプロビジョニングもフル活用
鳥取大学のシステム構成は、下図のとおりだ。サイトは鳥取市内の湖山と米子の2 つのキャンパスにまたがっており、両者はギガビットイーサーネットで相互接続されている。湖山サイトには以前導入したNetApp FAS2020に加え、新たにアクティブ・アクティブ構成のFAS3140を追加。VMwareの仮想サーバー群はヒューレット・パッカードのブレードサーバーに格納しており、仮想マシンのデータや学生のホームディレクトリのデータをこれらのNetApp FAS2020、FAS3140に保存している。
メインストレージのスナップショットは、別途追加されたFAS 2050にバックアップされるとともに、データ同期も行なう。このFAS2050はFAS3140、FAS2020のバックアップ機としても動作しており、障害時にサービスを引き継げる。FAS2050では、さらにNDMP(Network Data Management Protocol)というプロトコルを経由し、信頼性の高い磁気テープへのバックアップも実施している。
ディスクの使い分けも行なわれており、メインサービスの領域には高いパフォーマンスのFC/SASのHDD、バックアップ領域には安価なSATA HDD が割り当てられているという。また、アプリケーションごとの領域は、Data ONTAPのシンプロビジョニング機能「FlexVol」を用いて、効率的に割り当てている。本村氏は「たとえば、本学で使っている認証用サーバーの場合、ふだん使っている際には10GB程度しか使わないのに、インストール時だけ500GBのディスク容量を要求するのです。こうした場合でも頭を悩ませることなく一時的にボリュームを増やせるので、非常に楽です」と、FlexVolの導入効果について評価している。
今回のNetApp FASの導入に際しては、VMwareによるサーバー仮想化とあわせて管理が容易になっているのが大きな導入効果だ。
また、「ブレードサーバーの導入やサーバーの仮想化、そしてNetApp FAS へのストレージ統合、局所冷却システムの導入などを実現したことで、全体で電気代も2 割くらいも減っています」(本村氏)とのことで、グリーンITの観点でも大きな進展を実現したようである。 現在は、Data ONTAPに標準搭載されているデータ重複排除機能を検証しており、重複の大きいメールサーバーのスプールや仮想サーバーのイメージファイルなどでのストレージ利用効率をより高めていく予定だ。
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