6月17日、EMCはプライベートイベント「EMC Forum 2010」を開催した。キーメッセージとして掲げられたのは「The Journey to the Private Cloud starts now(プライベートクラウドへの旅が今始まる)」で、EMCはプライベートクラウド実現のためのソリューションベンダーになる、という立場が鮮明に打ち出された。
クラウドの大波への対応は?
まず開会の挨拶に登壇したEMCジャパンの代表取締役社長 諸星俊男氏は、「クラウド」という語の定義がいまだ明確ではないことに触れつつ、「クラウドという名前が将来残っていくかはわからないが、クラウドのコンセプトは将来のITに引き継がれていく重要な要素となっていく」と語り、単なる業界の流行に乗るわけではなく、実質的な重要な変革が進行しつつあるのだという認識を示した。
そして、その中でEMCが「将来のITがクラウド化していく中でどういう技術が必要なのか。EMCはそれをどう支援していけるか」を伝えることが今回の中心的なテーマであるとした。
続いて登壇した米EMCの副会長のウィリアム・J・チューバー・ジュニア氏は、「The Private Cloud」というタイトルで基調講演を行なった。
同氏はまず、これまでのITの歴史の中で、「メインフレームの出現」「ミニコンの登場」「PC/マイクロプロセッサの台頭」「分散コンピューティング」など、さまざまな「技術の波」が起こったが、「クラウドコンピューティング」はこれまでになかった規模の「最大の波」だとした。さらに「プライベートクラウド」を「社内と社外のリソースにまたがった、完全に仮想化された、次世代のインフラ」と定義した上で、なぜいまなのか?という時代背景の説明に移った。
ITをクラウド化する必要性の理由には、「多くのCIOが仮想化やクラウドに目を向け始めているタイミングであること」「今日のITインフラが過度に複雑化しており、非効率で柔軟性がなく、高コストであること」「情報の爆発的増加が見込まれること」の3点があるという。
同氏は、2008~2009年の大型不況の中で、「住宅価格」「雇用」「資産」「企業収益」「IT予算」といったさまざまな経済指標が一様に減少/低下を示している一方で、唯一情報量だけが62%増という値を記録しており、経済状況にかかわらず情報量が増大し続けていると指摘。
デジタル情報の量を量る単位として新たに「ゼタバイト」が使われる段階になっていることを紹介した同氏は、調査会社によるデータとして、「2009年のデジタルデータの総量は0.8ゼタバイト(ZB)だったが、2020年には44倍の35.2ゼタバイトに増加すると予測されている」とした。なお、2010年の情報量は1.2ゼタバイトだと見積もられているそうだが、これを記憶容量16GBのiPadに格納するなら、750億台が必要になる計算だという。
さらに同氏は、この爆発的な情報量のうちの70%が個人によって生成され、85%は企業によって保存/管理されることになる、との予測を示した。そして、この膨大な情報量を企業はどこに置けばよいのか?という問いに対して「クラウドの中に入れる」という答えを挙げた。
同氏はまた、
- 互換性のない複数のアーキテクチャの組み合わせとして構成されているものの、実証されており、制御可能で信頼性とセキュリティが高いインフラとしての既存のデータセンター
- 一様なx86アーキテクチャで構成される、動的でコスト効率が高く、オンデマンド/柔軟という特質をもつクラウド環境
を対比。その上で、この両者の「いいとこ取り」ができるのがプライベートクラウドとし、EMCのミッションが「The Journey to The Private Cloud(プライベートクラウドへお客様をご案内すること)」だとした。
続いて、「プライベートクラウドへの旅」を、「IT部門での導入」「ビジネス/アプリケーションへの導入」「IT-as-a-Service」の3段階に分けた。段階を経るごとに仮想化のレベルが向上していき、最終段階では95%にも達するという。得られるメリットも段階的で、第1段階であるIT部門での導入では「コスト削減」が、第2段階のビジネスアプリケーションへの導入では「サービス品質の向上」が、第3段階のIT-as-a-Serviceでは「俊敏性の向上」が、それぞれ達成できるという。同氏は、EMC自体もまだ「旅の途中」であり、おおむね第2段階にあるとした上で、現時点での成果として大幅なコスト削減などが達成されていることを紹介した。
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