Intelチップセットの歴史 その2
チップセットの構造が大きく変わったIntel 810世代
2009年11月23日 12時00分更新
新世代の第1弾はIntel 810+ICH
RDRAM対応のIntel 820は前代未聞の失敗
Intel 810(Intelウェブサイトより引用)
長い前置きが終わったところで、今回はPentium III世代のチップセットを解説しよう。1999年4月にリリースされた最初のシリーズが、「Intel 810」である。ただし、これはメインストリームというよりも、ややバリュー寄りの位置づけの製品である。というのもIntel 810はAGPバスを利用できず、グラフィックはGMCHの内蔵機能だけしか使えなかったからだ。
組み合わせるICH製品は初代の「ICH」で、のちにICHからいくつか機能を省いた(PCIスロットを6→4に減らし、Ultra ATA/66対応をUltra ATA/33に変更、さらにAlart on LANの機能を削減)「ICH0」という低価格向けバリエーションも登場するが、本質的には同一である。このIntel 810に133MHz FSBのサポートを追加したのが「Intel 810E」。さらに2000年6月には、新しい「ICH2」に対応した「Intel 810E2」が登場する。
その一方で、メインストリーム向けとしては「Intel 820」という製品が1999年11月に出るが、こちらはすこぶる評判が悪かった。最大の問題はメモリーに高価格のDirect RDRAMを採用したことであるが、当初の評判とは裏腹に、PC100 SDRAMのみに対応したIntel 440BXより性能が劣るという有様だった。とりあえず、価格面でのディスアドバンテージを少しでも埋めるべく、「MTH」(Memory Translator Hub)という外部チップを経由してSDRAMを使えるようにしたものの、高負荷時にIntel 820のMCHがリセットするというバグが発覚。結局出荷後にMTH搭載製品は全品リコールという騒ぎになってしまった(関連リンク)。
しまいには、Intel 820搭載マザーボードにRIMM(RDRAMモジュール)を付属させて販売するという、前代未聞の状況に陥ることになる。2000年6月にはICH2に対応した「Intel 820E」もリリースされるが、根本的な問題は何も解決していない。結局、同じ6月に登場した「Intel 815」シリーズが優勢を占め、Intel 820ファミリーは静かに消えてゆく。
消えなかった製品もある。それはPentium II/III/Xeonをサポートする「Intel 840」である。Xeon向けとあって、MCHからはHub Linkが2本出ており、片方にICH、もう片方に「82806AA PCI 64 Hub」(P64H)をつないで66MHz PCIバスに対応できた。
メモリーバスは2チャンネルで、各々2枚のRIMMを接続できるが、ここに「MRH-R」(Memory Repeater Hub)を組み合わせると、各々4枚(システム全体で8枚)のRIMMを装着できるなど、それなりに重装備の構成が可能であった。Intel 820で見られた問題もなく、安定して利用され続けた。結局このIntel 840に関しては、Pentium III/Xeonの最後まで、特に製品アップデートもなく販売されることになる。
メインストリームではIntel 810Eの後継として、Intel 815が登場する。こちらはPC133 SDRAMをサポートし、AGP 4Xのサポートも追加されるなど、やっと440BXの後継製品が出た形になる。
このIntel 815に、SMP(デュアルプロセッサー)のサポートを追加したのが「Intel 815E」。Intel 815の内蔵グラフィックを無効化した低コスト向けが「Intel 815EP」。さらに、815EPに接続するICHをICH0に変更して、より低価格化したのが「Intel 815P」である。また、Intel 815からAGP 4xのサポートを取り去ったのが「Intel 815G」で、これをICH0と組み合わせることでさらに低価格化したのが「Intel 815EG」となる。
基本構成はほとんど同じながら、細かにバリエーションを変えることで別製品とする、という展開はこれまでもあった。しかし当時は、VIA/ALi/SiSといったチップセットベンダーが、(インテルがRDRAMでけつまづいている隙に)SDRAMをベースとした製品を数多く展開する形でシェアを奪い始めていたので、対抗上どうしても品種を増やす必要があったということだろう。
モバイル向けにはこのあとに、「Intel 830M」ファミリーが登場するが、デスクトップやサーバー向けのPentium III対応チップセットはこれで打ち止め。この後インテルはPentium 4向け製品の展開に全力を注ぐことになる。
今回のまとめ
・「North Bridge+South Bridge」というチップセットの構造は、1999年登場の「Intel 810」で大きく変わった。
・その背景には、旧式なISAバスの廃止とNorth~South間インターフェースの負荷増大があった。
・1999年後半には、メインストリーム以上の市場を対象とした「Intel 820」が登場する。しかし、対応メモリーのRDRAMにまつわる問題が続発。主流になりきれずに終わる。
・Intel 820の失敗により、メインストリームからローエンドにかけては、Intel 810~Intel 815シリーズが使われた。特にIntel 815シリーズは、細かな派生品が多数存在する。
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