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他社より1610円も安価

データ通信も安いウィルコムを訴求したい

2009年08月14日 16時53分更新

文● ASCII.jp

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 かつては「データ通信に特化したキャリア」、その後「W-ZERO3」でスマートフォンのブームをつくり、現在では若年層向けの音声端末で一定の地位を得ている。ウィルコムに対するイメージには、いろいろと変遷がある。

編集部ではウィルコム サービス計画部 部長の満尾 雄二氏(右)と同コンテンツ企画グループリーダー課長補佐の生田 浩史氏(左)にお話を伺う機会を得た。

 最近のユーザーがウィルコムに抱くイメージを象徴しているのが、「コム友」「コムる」といった言葉。“コム”はもちろん“ウィルコム”を指す。定額で何時間も話せる、ウィルコム仲間をコム友、そんなウィルコムのPHSで話す行為をコムると呼ぶのだ。

 実際、中高生や大学生などではウィルコムが選ばれるケースが増えている。彼らは恋人同士、あるいはサークルや部活動の仲間同士の連絡用に2台目、3台目の端末としてウィルコムの端末を持っているのだ。


「パケット通信の安さ」を広めたい

 さて、このように音声通話に関心が集まっているウィルコム。2月に始まった「新ウィルコム定額プラン」に契約すると、月額2900円で、ウィルコム同士の通話が24時間追加料金なしになる。同一キャリア同士の定額プランは、他キャリアでも存在するが、時間帯の指定がなく「24時間」という点は大きなメリットである。

 このように「音声が安い」ウィルコム。しかしながら、ウィルコムは「パケット料金も安い」という点はあまり知られていない。今年2月から始まった「新ウィルコム定額プラン」には、音声通話定額だけでなく、パケット定額も含まれている。しかも、他キャリアの定額制(あるいは二段階定額制)のデータ通信プランとは異なり、別途契約が必要ない。

 新ウィルコム定額プランに入っていれば、最大月額2800円(1パケット0.084円)のパケット定額通信が可能。まったく使わなかった月は、追加料金も発生しない。

 これは携帯電話3キャリアのパケット定額プランと比べてかなりお得である。

 代表的な競合としては、NTTドコモの「パケ・ホーダイダブル」、auの「ダブル定額スーパーライト」、ソフトバンクの「パケットし放題S」などがある。いずれも基本料金は月額390円、モバイルサイト利用時は上限4410円と横並びになっている。

 ただし、フルブラウザー利用時やパソコンのモデムとして利用するといった、より多くの通信が必要になる利用方法では別料金だ。ウィルコムはこの2つの料金も定額で、メール使用時の基本料金も不要だ(3キャリアは各315円)。

 もちろん3G回線に比べて、PHS回線は速度的に不利な面がある。とはいえ、いずれもベストエフォート型のサービスなので、理論値と実測値が多少乖離する面がある。7.2MbpsのHSDPA通信でも、その速度が実際に出るわけではない。PHSの理論値は1Mbpsにも満たないが、一方で比較的公称値に近い数字が出るともいわれている。

 これらをトータルに考えると、音声とメールをメインに考え、場合によってデータ通信も併用したいというユーザーにとって、PHSは少なくともウィルコムは料金面でのメリットを持っている。何はともあれ通信速度ではなく、安価でつながることが重要という点を考えているなら、ウィルコムは面白い選択肢と言える。


もっとコンテンツを使ってほしい

 だからデータ通信の安さにも、もっと注目してほしい。そうウィルコムは考えているようだ。先月末(7月29日)、ウィルコムは公式サイトのリニューアルとコンテンツサービス事業を拡充させると発表した。そこにも「パケット通信料」の安さを浸透させたいという想いがこめられている。

 今回の施策では、無料で利用できるコンテンツポータル「とりほ~だい★らんど」を開設し、「とことんぷよぷよ」「悪魔城ドラキュラ」といった人気ゲームを月替りで配信したり、一部ではなく全話が読めるコミックス「ジェネラルルージュの凱旋」「蟹工船」、デコラティブメール素材など多数を用意している。

 これ以外にも京セラ製端末で利用できる着信ボイスを提供。「WX340K」や「BAUM」など動画対応機種も増えてきたため、Flash Lite動画(W+Video)を充実していく考えだ。

 編集部ではウィルコム サービス計画部 部長の満尾 雄二氏と同コンテンツ企画グループリーダー課長補佐の生田 浩史氏にお話を伺う機会を得た。

WX340Kでは、コンテンツサイトの公式サイトに簡単にアクセスできるメニューを用意している

 両氏によると、最近発売された京セラ製端末「WX340K」では、コンテンツプロバイダーやサービス提供会社のサービスへの導線強化を考え、メニュー内のアクセスしやすい位置に、GoogleやYahoo!、mixiといったポータル系サイト、EdyやQuickPayなど電子マネー関係のサイトへの誘導アイコンを設けた。これにより、これら公式サイトへの誘導数が2月から6月までの4ヵ月間で約123%増加したという。

 「ここまで差が出るとは思っていませんでした」(ウィルコム、以下同)

 ウィルコムはこれまでもキャンペーンなどで定期的に無料コンテンツの提供を実施してきたが、今までは電子書籍と着メロの配信が中心だった。動画や着うたといったリッチ系コンテンツ提供に弱い部分があるのは否めなかった。しかしながら、動画配信に関しては、WX340KやBAUMといった機種が登場したこともあり対応を強化。少しずつコンテンツ分野の充実を図っていく予定だ。

 「人気ゲームを10本程度、体験版ではなく製品版に近い形で提供していきたいと思います。またコミックスに関しては、1話だけ、あるいは1冊のうち一部だけというケースが多いと思うのですが、全話が読める形にしたいです。動画に関しては2分程度の長さのものを中心にFLV形式(Flash Lite 3.1対応)で、お笑い(サンドウィッチマンなど)やミュージックビデオなどを提供していきます」

コンテンツの拡充は、データ通信の安さを訴求するためにも重要だという

 またリッチコンテンツの提供だけではなく、コミュニティーの要素を持ったコンテンツに関しても積極的に取り組んでいく計画だ。

 「ウィルコムの端末はサークル仲間同士のコミュニケーション用にもう1台持って5~6人で使われているケースが多いんです。そこで、データ通信やコンテンツのほうでも『もっとつながろうよ』という部分を訴求していきたいと考えています。まだ、具体的にお話できる段階ではないのですが、近くそういった要素を絡めた大きな発表も予定しています。こちらにも注目していただければと思います」

 ケータイ向けのコンテンツ市場では、2008年電子書籍が大きく伸びた。総務省の調査では、395億円(前年比79%増(+174億円)。着うた、着メロ、モバイルゲームに続く、4番目の勢力となっている。また、電子書籍の市場規模は460億円超で、うち85~6%が携帯電話向けという調査結果もある。コミックスを中心に、24時間好きな時間に書店に足を運ばずに読める点が受けている。

 また、EC市場の伸びも顕著だ。総務省の調査では2008年の実績で、モバイルコマース分野で物販は3770億円(前年比15%増、+478億円)の実績だ。証券取引などを行なうトランザクション系、チケット販売などのサービス系も同様に増えており、同分野は8689億円の市場規模となっている。

 「携帯電話やPHSは移動時間に使うものというイメージが強いかもしれないですが、電子書籍のダウンロードは深夜にピークが来ます。実際には家で夜にリラックスして使うユーザーも多いのでしょう。モノを買うのもコンテンツを見るのもケータイと言う人は多い。究極的には、家に帰ってテレビのスイッチを入れるような感覚で使ってもらえることを目指していきたいですね」

 このようにエンターテイメントの重要なインフラとなりつつあるモバイル通信。ウィルコムは通信料の安さ、手軽さを武器にこの分野にも積極的に取り組んでいくという。秋以降展開されると言う新コンテンツにも期待しつつ、その動向を追っていきたい。

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