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トラウマを現実化しろ 宇川直宏かく語りき(前編)

2009年03月25日 19時30分更新

文● 広田稔/トレンド編集部 協力●谷分章優

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僕にしてみれば、これがオタクの部屋だった

宇川 で、この時代から、お茶の間から解放されたテレビが個人のものになってくると。その時期に、ビデオデッキも浸透していって、アーカイブを組み立てられるようになった。映像を所有できるようになった歴史です。

野村 それまでは所有できなかった。

宇川 はい。だからさっきの、カウラが出たウルトラマンAというのは、テレビの前に座って見るしかなかったわけですよ。同時体験として。でも、所有できるような時代にその後なって、映像を所有したい欲求って皆持ってたわけで、レコードを積み重ねていくかのようにビデオを積み重ねていって、アーカイブ化していくと。今ってそれも無いでしょ。YouTube以降。

野村 ない。

宇川 ないですよね。そのひとつの「昭和の映像史」だと思うんですよ、これは。磁気信号を所有して、電波を飛ばして……ごめんなさい、説明しますね、これ何やってるかといったら、昭和最後の日と平成最初の日──NHKの天皇崩御の映像を電波で飛ばして受信させてるんですよ。

 1日目は8時間の昭和の最後の日を電波で飛ばす、その次の日は平成最初の日の8時間を電波で飛ばすんですよ。平成、昭和、平成、昭和、平成、昭和って、1日ずつずらしていって、平成になったり昭和になったりするんですよ、ここのギャラリー空間は。それは何かと言ったら「元号を宙に浮かせる」と。

野村 つまり、行ったり来たりで。

宇川 そうです。電波で飛ばしてるんで、近所のUHFの13チャンネルで受信できるんですよ(笑)

野村 ラッドミュージシャンの近くで。

宇川 この一帯だけは、昭和になったり平成になったりしてるわけですよ。天皇崩御の映像をずっと見せられて。で、元号を宙に浮かせてるってコンセプトなんですけど。

 何故それをやってるかと言ったら、畳部屋と、昭和のあだ花として生まれた家電のラテカセ、ビデオデッキ、そこで昭和最後の日・平成最初の日という映像。これは昭和のアーカイブ史のピリオド、メモリアルな昭和を生きてきた自分のひとつの終着点だと思うんですよ。映像史の。所有史の、と言えば良いんですかね。

野村 所有するものの原点として怪獣だとか、ウルトラマンAだとか。

宇川 そういうことです。特撮があったと。ほとんど特撮とかホラーなんですよ、ここに展示されているのは。「ギニーピッグ」も入ってるんです。

野村 もう幻のギニーピッグ。

宇川 幻のギニーピッグも入っている。こういう作品だったりする。「オタクカルチャー」って言葉ってその後広まったんですけど、あれって宮崎勤の事件によって広がったんですよね。「オタク」って言葉は。その後、村上隆さんが発展させて、スーパーフラットとして世界に浸透させていきましたけど、これもね、オタクのある側面というか。

野村 僕にしてみれば、これがオタクの部屋だったですけどね。今、こういうのはフィジカルに見えなくなっちゃいましたよね。収集してても全部データで持てるから。

宇川 そうそう、フィジカルに見えなくなりましたよね。で、VHSのこういう部屋は存在しないと。にもかかわらず、作ってしまってインスタレーションにして回してるわけですよ。もう4回もやってて、これ。海外でも、たぶん今後やります。

野村 持ってくんですか?

宇川 はい。ある、日常の昭和史の風景そのものをインスタレーションとして封じ込めてしまったという作品ですね。

野村 そのインスピレーションの、空想と行為の産物がこういう風になっていると。

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