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【2007 CES Vol.17】セイコーエプソン、開口率を大幅に向上させたプロジェクター用液晶パネル“HTPS”を披露

2007年01月12日 12時29分更新

文● 編集部 小西利明

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開口率を従来比20%も向上した、エプソンの新液晶パネルを採用する松下電器産業のリアプロ試作機。NTSC比110%を超える色再現性が魅力
開口率を従来比20%も向上した、エプソンの新液晶パネルを採用する松下電器産業のリアプロ試作機。NTSC比110%を超える色再現性が魅力

セイコーエプソン(株)は“2007 International CES”にはブースを出展していないが、会場に隣接するホテルにて3LCD方式(※1)液晶プロジェクター用の液晶パネル“HTPS”(High Temperature Poly-Silicon)についての説明会を開催している。今回は2006年12月に発表された、開口率を大幅に向上した高温ポリシリコンTFT液晶パネル『L3D07U-81G00』について話を聞いた。

※1 3枚の液晶パネルを使い、R/G/Bの光の3原色それぞれに分解した映像を表示、プリズム上で合成してレンズで投影するプロジェクターの表示方式。

『L3D07U-81G00』(右から2番目)。左隣はC2FINE技術を使用する0.7インチ・フルHD液晶パネル
『L3D07U-81G00』(右から2番目)。左隣はC2FINE技術を使用する0.7インチ・フルHD液晶パネル

12月に発表された新パネルは、有機系素材の配向膜(※2)を使用しながら、0.7インチサイズ・フルHD解像度(画素ピッチ8.5μm)の液晶パネルで、開口率55%を実現している。プロジェクター用の液晶パネルの場合、画素密度の高密度化はパネルの開口率を下げる傾向にある。開口率とは、液晶パネルの光を通す部分と遮る部分の1画素あたりの比率だが、光を遮る配線やトランジスターのサイズを小さくするには、高度な微細加工技術が必要となる。

※2 液晶分子を整列させるための膜

開口率の低い液晶パネルで十分な明るさを実現するには、強力なランプが必要となり、発熱量や消費電力の増大を招く。同社の従来の有機配向膜使用液晶パネル(D5と呼ばれる)では、0.9インチ・フルHD解像度で開口率は51%であった。それが新パネルでは0.7インチサイズに縮小されながら、開口率55%を確保している。同じサイズのパネルであれば、開口率は従来比で20%も向上できるという。開口率の高い液晶パネルであれば、同じランプでもより明るい画面が作れるし、同じ輝度であればランプの消費電力を減らすことも可能だ。

エプソンのプロジェクター用液晶パネルと駆動回路技術のロードマップ。上から3番目の黄色いバーが今回の新パネル 従来型液晶パネル(左)と、今回の新パネルの仕様の違い。高密度化と高開口率を同時に実現した
エプソンのプロジェクター用液晶パネルと駆動回路技術のロードマップ。上から3番目の黄色いバーが今回の新パネル従来型液晶パネル(左)と、今回の新パネルの仕様の違い。高密度化と高開口率を同時に実現した

同社のプロジェクター用液晶パネルには、無機配向膜技術“クリスタルクリアファイン”(C2FINE)を使用する液晶パネルもある。こちらは高コントラスト比(1500対1)による高画質が特徴であるが、現時点ではまだコストが高いという問題点を抱えるため、採用事例は製品価格の高い、画質重視のフロントプロジェクターに限定されている。今回の新パネルは有機配向膜を使用しつつ高開口率を実現することで、比較的低価格でも高輝度のプロジェクター製品の開発が可能となる。ちなみに駆動回路などには、C2FINEと同じ“D6”と呼ばれる回路を使用して、高画質化に貢献している。

新パネルを3枚使用した、3LCD方式プロジェクターの光学エンジンサンプル
新パネルを3枚使用した、3LCD方式プロジェクターの光学エンジンサンプル

新パネルを使用した製品事例としては、CES会場で松下電器産業の米国法人が、56インチ・フルHDのプロジェクションTV試作機を出展していた。液晶パネル自体は、現在サンプル出荷の段階で、2007年3月頃には量産出荷を開始する予定とのこと。また量産出荷時には採用製品の価値を高めるために、新しいブランド名が冠される予定であるという。

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