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【INTERVIEW】α100の画質担当者に聞く、一眼レフの絵作り――開発者に聞く(前編)

2006年10月24日 17時00分更新

文● 聞き手/撮影 小林伸、構成 編集部

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カメラ事業の売却によって、コニカミノルタの技術者がソニーに合流したとき、絵作りに関する議論も綿密に行なわれた。両者の間で多く意見交換したのが“青の表現”だったと中山氏は回想する。

[中山] 本当は赤にこだわっていたんですが、これは意見交換する必要がないぐらい意見が一致していました。しかし、青はコニカミノルタのこだわりとソニーのこだわりが多少違うところがあったんですね。その共通エリアがすごく狭かった。そして話せば話すほど、われわれはフィルムの色つやの表現に慣れているんだと自覚させられたんです。知らない間に写真文化が染みついていたのだと。

デジタルカメラには、フィルムには出せない色があると中山氏は話す。

[中山] 例えば“空をシアンぽく表現する”というのは、フィルムでは難しいことなんです。フィルムではリバーサルでもネガフィルムでも若干赤味が強くなってしまう。過去に撮った写真を見てもらえば、空って意外に赤いんだなと思われるはずです。カメラメーカーの開発者は、そういうのに慣れっこになっているんです。いろいろなプロカメラマンにも評価してもらいましたが、“旧コニカミノルタの絵はいいねぇ、フィルムっぽいよ”と言われることが多かった。僕らは普通だと思ってやってるのに“フィルムっぽい、フィルムっぽい”って言われる。フィルムの色にあまりに慣れ切っていたため、それに気付かなかったんです。


高画素化によって、撮像素子がフィルムに近づく

エントリークラスの一眼レフカメラでも1000万画素機が主流になっていくなか、筆者が懸念しているのが撮像素子にレンズの性能が付いていかなくなるのではないかという点だ。高画素な撮像素子の性能を生かすためには、付属の標準レンズではすべて不十分に感じる面もあり、それ相応のレンズが必要になる。しかし、それには高価なレンズが必要になる。これは正しいあり方なのか疑問に思うのだ。

[中山] 高画素化によって、解像力の差が分かりやすくなったという面はあると思います。単焦点を絞ったときには、その恩恵をさらに実感できるようになります。しかし、これは“フィルムに近づいた”ということなんです。今までは撮像素子の解像度に限界があって、レンズの善し悪しが出にくかった。しかし、今度はその差がしっかりと表現できるようになったということだと思います。
αと同時発表されたレンズ群
α100と同時発表されたレンズ群。コニカミノルタから引き継いだGレンズに加え、カールツァイスレンズも加わっている

デジタル一眼レフカメラの撮像素子は、今後も向上し続けていくものと考えられる。もちろんカメラメーカーとしては「せっかくの一眼レフだからレンズにもこだわってほしい」という気持ちも持っている。

[中山] 撮像素子の解像度をレンズの性能が飽和するところまで上げる意味はあると思うんですよ。例えば、すごく切れる単焦点レンズがあったら、2000万画素ぐらいの画像を作ってその性能が最大限発揮できる絵を残しておきたい。いいレンズを付けたときにはその価値が出る、そういうのが明確になってくると思いますよ。

現状では、どんなに高性能なレンズであっても、100メガピクセルの撮像素子とか、そういう桁が違う話には、まず対応できないと思います。しかし、解像力という点では足りないのですが、これによってフィルムとレンズのような関係が鮮明になってくると思います。つまり、フィルムの側には十分な解像度があるんだけれどもレンズのほうがそれに追いついていない状況になる。そうなることで、初めて撮像素子がフィルムに近づくのです。


高級なものは素材として提供したい

中山氏は、サイズダウンやコストダウンのために、ソフトウェアの技術を使って、レンズの表現の限界を補うというアプローチを否定はしなかったが、現状では積極的に行なうことは考えていないと話した。「高級なものはなるべく素材として提供したい」という意識なのだという。

もうひとつ、ノイズリダクションに対する考え方に関しても聞いてみた。デジタルカメラでは、なぜかピクセル等倍で画質を評価する文化が根付いてしまっている。しかし、実際に写真を鑑賞するのは画面であればせいぜい200万画素クラスまで。プリントするにしても、極小のドットをわざわざルーペで確認するといった作業はしない。1000万画素のデータを等倍で評価する必要があるのかは疑問だ。一方で、暗部のざらつきなどに敏感に反応するユーザーの声を意識して、高解像度本来の奥行き感が感じられないほど、強めにノイズリダクションを掛けてしまっている製品もある。

[中山] 上手にノイズを消せるのであれば、私は消したいと思いますが、上手に消すことが今のところ難しいという面はあります。高感度に関しては、競争という面もありますから、高感度のノイズは少なければ少ないほどいいのでしょうが、意識的には実用的なトーンのチューニングに対する意識が高いですね。ノイズを極端につぶそうとか、残そうとかいう意識はどちらかというとありません。

高感度のノイズに関しては、ソニー/コニカミノルタそれぞれの出身の技術者の間でも、あまり大きな議論はなかったですね。可能な範囲で抑えたいという意向はありましたが、全体的な絵の美しさよりも優先したいとは考えなかった。むしろ実用的なトーンで、絵が汚くならないかどうかという部分を重視したかった。青の議論のように白熱したものにはならなかったです。
インタビューの後半では、商品企画と設計リーダーの方々のお話を中心に、強みとなる手ぶれ補正や、新機能のほこり対策など、α100の機能に迫っていきます。

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