KDDI(株)代表取締役社長兼会長の小野寺 正氏は19日、“移動と固定の融合で拓く次世代モバイルブロードバンド時代”と題した講演を行なった。次世代通信インフラ構想の“ウルトラ3G”や第4世代移動通信システムとなる“IMT-Advanced”などについて語った。
KDDI(株)代表取締役社長兼会長の小野寺 正氏 |
次世代のモバイル環境について同氏は、まずインフラがしっかりと整備されている必要があり、それに結びつく形で端末、コンテンツ&アプリケーション、料金体系の進化が続くのが理想的であることを強調した。その上で、同社が現行採用している移動通信規格“EV-DO Rev.0”を、2006年度中に“Rev.A”にバージョンアップするとした。
“EV-DO Rev.0”と“EV-DO Rev.A”の比較図 |
同氏が注目するRev.Aの最大の特徴は、Rev.0では154kbpsだった上り(アップリンク)の速度が、Rev.Aでは1.8Mbpsにまで高速化されることだと言う。これにより、双方向のリアルタイム通信はもちろん、スペックが上昇し、それに伴って画像サイズが肥大化していくケータイカメラの画像などを送信するのが「もうちょっと手軽になる」とし、新たなサービスに展開することへの期待感を示した。
固定電話網のIP化は2007年に完了
“ウルトラ3G”の構想図 |
さらに次世代通信インフラ構想である“ウルトラ3G”については、パケットベースのコアネットワークを中心に、無線、有線、放送といった多様なインフラを統合する“固定移動統合網”を目指しているという。いわゆる“FMC”(Fixed Mobile Convergence)という考え方であるが、FMCを実現するにはまず回線のIP化が必要だとした。
固定電話のIP化移行スケジュール |
現在、同社は固定電話網のIP化に着手しており、2007年末までに完了するという。また、無線通信規格に“モバイルWiMAX(IEEE 802.16e)”を利用したウルトラ3Gの実証実験を2005年7月から開始。EV-DOとのハンドオーバーなどに成功している。
同氏は第4世代移動通信システムとなる“IMT-Advanced”について触れ、同時に多数の周波数を使用できる“SDMA(空間多重技術)”とデジタル変調方式である“マルチユーザーOFDM”の組み合わせになる可能性が高いことを示唆した。
そのほか、小野寺氏はワンセグ(携帯機器向け地上デジタル放送)についても言及。「(携帯電話機の)標準装備になってくる」とし、特に重要になるのは災害時だとした。大きな災害が発生した際にはユーザーが情報を集めようとしてメールや通話を行ない、トラフィックが集中する。このため規制をかけざるをえないという。しかしワンセグ放送で情報を確認できればトラフィックピークを落とせるという。