(株)ゼットエムピーは11日、東京・麹町の(株)グロービス内教室にプレス関係者を集め、同社のエンジニア教育向けロボット“ZMP e-nuvo(イーヌーボ)シリーズ”を拡充して、大学・企業の工学教育に本格参入することを発表した。発表会には代表取締役社長の谷口 恒氏、技術戦略室室長の坂井亮介氏らが出席し、新製品投入の狙いを説明した。
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代表取締役社長の谷口 恒氏 | 技術戦略室室長の坂井亮介氏 |
アーム型ロボットや2輪ロボットなど
教育向けロボットのラインナップを拡充
今回発表された4製品と価格、発売時期は以下の通り。
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『e-nuvo WALK』。左は外装付きのもの |
- e-nuvo BASIC(旧:やってみましょうキット)
- モーター制御学習キット
2万9400円/2006年9月改定予定(やってみましょうキットは継続販売) - e-nuvo ARM
- アーム型ロボット教材
5万6700円/2007年春発売予定 - e-nuvo WHEEL
- 倒立振子・二輪ロボット教材
29万4000円(外装付き)/2006年9月発売予定 - e-nuvo WALK
- 二足歩行ロボット教材(旧:e-nuvo ver.2.5)
12軸(12個モーター)の複雑な制御が学べる
68万400円/発売中
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学習範囲に応じてラインナップを拡充した新“e-nuvoシリーズ” | 工学教育の現状と産業界のニーズ |
2足歩行ロボットでは“おもちゃっぽい?”
同社では2年前から、12軸(12個のモーター)を制御する二足歩行ロボットと300ページに渡る教材をセットにした教育向けロボットキット『e-nuvo ver.2.5』、および電子回路やモーター制御の基礎を学べる学習用電子キット『やってみましょうキット』を販売しており、e-nuvoは大学や企業などに累計300セット以上を販売してきた実績があるという。
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始めは倒れた状態から…… | パソコンから“起き上がる”指令を受けると、自分でむくりと立ち上がる |
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ゆっくり足を上げて…… | ボールを蹴り出すイメージで、足を振るe-nuvo WALK |
しかし、導入先の声として、「いきなり12軸の自立型ロボットを学ぶのはハードルが高い」「300ページの教本では、(短期間で修了させたい)企業の研修に使いにくい。1日、2日程度で完結するような教材が欲しい」「二足歩行ロボットだと稟議書を回しても『おもちゃじゃないのか?』とスムーズに通りにくい」などの意見があったことから、教材を一新するとともに、倒立振子・二輪ロボットおよびアーム型ロボットの新規ロボットキットを開発して、ラインナップを拡充したという。
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今回展示はされなかったが既存のキットに加えて、ルネサス テクノロジーのマイコンキットも教材に加わった『e-nuvo BASIC』 |
e-nuvo BASICはプラグで接続する基本的な電子基板のほかに、オプションでCPU回路やモーターの制御、さらに(株)ルネサス テクノロジが開発した組み込み向け16bitCPU“M16C/29”搭載のマイコンキット『Starter Kit for M16C/29』を用意し、自動車やFA(工場の製造ライン制御)機器などに即したマイコンの学習、部品試作、ソフトウェア開発が学べる。
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ルネサス テクノロジーのマイコンキット『Starter Kit for M16C/29』 |
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工場の製造ラインなどで広く用いられるアーム型ロボットを模した『e-nuvo ARM』 |
e-nuvo ARMは、2軸アームを使ったペンプロッタータイプのアーム型ロボットを開発・制御するキット。線形代数を基礎とした運動学や、連続した動作を実現するための補間など数学を応用した制御ソフトウェア開発、および実践的な3D CADを活用した部品設計・強度解析カリキュラムも用意されている。
倒立振子・二輪ロボットを用いたe-nuvo WHEELは、重心の変化を自律的に制御して左右2輪でも倒れないようにバランスを取るロボットの運動方程式、およびその制御方法を学べるキット。ロボット工学だけでなく現在の開発者全般に求められる“現代制御理論”(多入力多出力の制御系で、状態変化を常にフィードバックしながら制御を行なう)を学ぶことができる。また、企業の開発部門で使われる米The MathWorks社(国内販売元:サイバネットシステム(株))の評価/検証システム『MATLAB/Simulink』を使った力学シミュレーションのカリキュラムも含まれる。
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e-nuvo WHEEL | 回路基板やギアのアップ | |
倒立振子・二輪ロボットの『e-nuvo WHEEL』 |
上記の3つの基本制御、運動解析、機械設計などを学んだ上で、最終課程としてe-nuvo WALKや、その発展系であるヒューマノイドロボット『nuvo(ヌーボ)』の制御・モデリングや動作プログラミングに挑戦してほしい、と谷口氏は締めくくった。なお、教材の監修は芝浦工業大学の水川 真教授、現代制御理論のカリキュラム監修には足立修一氏が当たっている。
同社では今後もコンテンツ(教育カリキュラム)の強化を図り、「ものづくりの楽しさ、実機を制御して動かす感動を通じて、工学の基礎と産業界に必要とされる実践的な技術を体得してほしい」(谷口氏)と語り、同製品の販売やロボット関連のコンテストを通じて、企業が求めている工業系エンジニアの育成に注力することを宣言した。
