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【特別対談】二大企業の重鎮が語る、アップルへの提言――第2回「ユーザーを幸せにするMac互換機とは」

2006年04月11日 22時07分更新

文● 林 信行、編集部

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アップル体験 vs 製品バリエーション

――今までの話をまとめると、古川さんは、アップル1社でハードからOS、アプリケーションまで作ってこそアップル製品の満足度があるという考え、これに対して西岡さんはハードの製造は他社に任せるべき、というものですね。


【古川】 Macだけに限らず、例えばiPodにしても、iTunesと“iTunes Music Store”、iPodといった連携をアップルが1社で手掛けたからこそ、あそこまでシームレスなものが出来上がった。


【西岡】 確かにiPodについてはアップルがすべてやることに意味があるように思えます。古川さんが言うように、iPodは単なるモバイルオーディオ機器以上の、もっと深い、“on the way”だけではない車や家、あらゆるライフスタイルへの提案ですよね。それは認めます。その点は議論しませんが、パソコンは今後どうなるのですか?

パソコンに対する発想の変換(パラダイムシフト)を、アップルはこのところ提案できていないように思います。iPodが売れに売れているから、パソコンの革命は忘れているのでしょうか。

パソコンはソフトが重要だけど、ライフスタイルを変えるためにはハードも重要な要素のはず。そのハードの開発体制は決して強力じゃない。Macについては有象無象の互換機メーカーではなく、アップルと共にライフスタイルを提案できる複数のメーカーが開発に加わるということに、大きな意味があると思えてなりません。


【古川】 私には今日あるようなパソコンのメーカーや流通業者が、Macを扱っている姿というのはなかなか想像できないんですよ。あるとしたらタグホイヤーとかルイ・ヴィトンとか、ベネトン、B&Oといったライフスタイルを提案している企業が自社ブランドのMacを扱うといったかたちでしょうか。

今、iPodもMacも再び白と黒(銀)の2色に戻ってしまってバリエーションが少ないから、それを補う意味も込めて、こうしたブランドのMacが出てくるのはアリかも。


【西岡】 そう、そういう発想ですね。ルイ・ヴィトン、アウディなんか面白いんじゃないですか? 確かに、いまWintel系のPCを生産・販売している互換機メーカーがいまさら加わっても、よく似たマシンをゾロゾロ出すだけでしょうから。この点は古川さんに賛成ですね。


――西岡さんは互換機戦略で、製品バリエーションが豊かになるという考えのようですね。前回の互換機戦略ではそれほどバリエーションが出ず結局、お互いのシェアを食い合ってしまいました。


【西岡】 昔、アップルがパイオニア(株)などに互換機の開発を許可した頃とは状況は違っているんですね。ただ、前にもっと徹底的に互換機戦略を進めていたら今のビル・ゲイツはいなかったかもしれない。

当時のやり方は中途半端だった。互換機を許しても、本家のメインボードの使用を強制*1したのでは、ライセンシーが超小型化、薄型軽量化などの特徴を発揮できませんからね。だから、魅力あるバリエーションが生まれずに失敗に終わったんです。


【古川】 日本の家電メーカーがMacを扱うシナリオとして、もしかしたらあるかなと思うのは家電版Mac mini。アップルはそのうち、絶対にMac miniを別のやり方で売り出すと思うんですが、それに合わせて家電メーカーの側から、Mac miniに似合うプラズマテレビに合わせて、「一緒に売らせてください」とか持ちかけられたら、出る可能性はありますね。



*1 メインボードの使用
アップルのMac互換機政策は、ロジックボードとMac OSをライセンスするというビジネスモデルで成り立っていた。そこから米モトローラ社経由の2次ライセンスモデルに移行し、最終的には“CHRP”という標準仕様のパソコンなら、どれでもMac OSが動くようにする予定だった。

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