プログラマブルGPUに対応
高度な画像処理が高速に
新機能は表だって見えるものだけではない。Tigerは、新たに画像処理エンジンの「Core Image」、動画処理エンジンの「Core Video」を搭載した。これらは静止画/動画を利用するMacの仕様上最適な方法で処理してくれる。マルチCPU構成やベロシティーエンジン(SIMD)機構の有無を識別し、活用してくれる。両基盤がその真価をフルに発揮するのは、MacがハイエンドのプログラマブルGPUを搭載していた場合で、ぼかしや合成、ひずみなど、標準搭載した100種類以上の画像エフェクトをリアルタイムで施すことができる。
昨年の同社開発者会議では、1人の開発者が2~3日でつくったというサンプルアプリのデモが行われた。そこでは写真レタッチソフトで十数秒は待たされる処理を、瞬時にかけてみせた。Photoshopなどのレタッチソフトは、すべてをCPUに処理させているが、Core Imageは画像処理に強いGPUに任せている。これにより、速く優れた画像処理効果を得る一方で、CPU負荷の軽減も達成している。残念なのはTigerに、このCore Image、Core Videoを活用したアプリケーションが付属しないことだ。おそらくそうしたソフトをつけることで、動作条件として「プログラマブルGPU搭載機」と書かねばならず間口が狭まるのがいやだったのだろう。
画面6 チャットソフトのiChat AVでは、H.264による高画質化と最大4人でのビデオチャット(そして最大11人での音声チャット)が売りとなっている。接続時に一番、速いマシンを見つけ出し、そのマシンを勝手にサーバーにしている。さらに音声レベルメーターがついていて、発言者がわかりやすい。 |
OSのベースは
真性64bit
最後にOSの基盤部分についても少し触れよう。ベースは64bitのUNIX OSだ。64bit OSというと、同じ頃、発売された「Windows XP Professional x64 Edition」(以下、x64)が思い当たるが、両者では対応するメモリー容量などに違いがある。Tigerは物理メモリは理論上4TB(テラバイト)、仮想メモリは(1プロセスあたり)16EB(エグザバイト)以上をサポートする。対するx64は物理メモリ128GB、仮想メモリ16TBだ。
この仕様の違いはMacのCPU、PowerPCが32bit時代から64bit仕様を意識して設計されていたこと、それだけにPowerPC G5が真の64bit設計であること、の影響が大きい。このおかげで、Tigerでは32bit/64bitどちらのPowerPCでもネイティブ動作する。
64bitデータの内部での扱いについては、HP-UXやSolarisなど他の64bit UNIX系OSと同様にLP64 Data Modelを採用している。対するx64は32bitアプリの移行を意識したLLP64(P64)を採用している。また、グリッドコンピューティングのクライアント機能があらかじめ組み込まれているのにも要注目だ。
革新的なコンシューマ機能を惜しげもなく搭載しながら、プログラマブルGPUの活用などの最新トレンドも先取り、しかも基盤は今日のハードウェア仕様を凌駕した64bit仕様――TigerはiPodとMac mini人気で火がついたアップルの強気を感じさせるOSだ。
Mac OS X v10.4 “Tiger”の主なスペック | |
製品名 | Mac OS X v10.4 “Tiger” |
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動作環境 | Macintoshコンピュータ(FireWire搭載機) |
CPU | PowerPC G5/G4/G3 |
メモリ | 256MB以上 |