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【SAPPHIRE '04 Vol.4】「我々が提供するのはテクニカルプラットフォームではなくビジネスプラットフォームだ」

2004年06月20日 03時05分更新

文● 編集部 小板謙次

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ヘニング・カガーマン(Henning Kagermann)氏
独SAP社会長兼CEOのヘニング・カガーマン(Henning Kagermann)氏

「今はコストカットとともに、持続可能な成長・改善を実現する重要なターニングポイントにきている。プロダクト、プロセスの改善が重要だし、イノベーションを通じた成長がますます必要になってきている」
17日、SAPジャパン(株)代表取締役社長の藤井清孝氏に続いて基調講演を行なった独SAP社会長兼CEOのヘニング・カガーマン(Henning Kagermann)氏は切りだした。同社は毎年10%をR&Dに投資し、研究開発員も11%増員している。これにより、ワールドワイドで54%のシェアを誇っている。氏が示した資料によると、他社のマーケットシェアは下がってきているが、SAPのシェアは12%アップしているという。



SAPは54%のシェアを獲得している

■市場もSAPもジレンマを抱えていた

ヘニング・カガーマン(Henning Kagermann)氏
顧客の声
「顧客の声は驚くべきものだった。既存の客は必要であれば新しいものを欲しいがコンパチビリティーがなくなっては困るといい、新規の客はスターティングポイントとして最高のテクノロジーが欲しいという。共通しているのは、自分たちのペースで開発を行ないたい、特定の企業に囲いこまれたくない、ということだ」

にもかかわらず冒頭のように述べるのは、市場もSAP自身もジレンマをかかえているからだ。「(市場には)本当に日本の景気回復は順調に進んでいくのかわからないという声がある。投資能力にも限界があり、IT部門、とりわけCIOはコスト削減へのプレッシャーをかかえている。そして(投資をしたとしても)果たしてインフラが柔軟性をもたらしてくれるだろうか?という不安をもっている」とユーザーサイドの状況を説明。一方でSAPについては「我々は世界最大級のメーカーだが、新規の顧客は15%にすぎない。既存の客は必要であれば新しいものを欲しいがコンパチビリティーがなくなっては困る、簡単なアップグレードがなくては困ると言い、新規の客はスターティングポイントとして最高のテクノロジーが欲しいという。共通しているのは、自分たちのペースで開発を行ないたい、特定の企業に囲いこまれたくない、柔軟性・オープン性が必要だということだ」と説明した。

このジレンマを解決するためにスタートしたのがエンタープライズサービスアーキテクチャーであり、プラットフォームであるNetWeaverだ。氏がさかんにアピールするのは、オープンであること、柔軟性があるということの2点だ。この柔軟性はこれまでの資産を保護しながら、新しいアーキテクチャーを導入していくことが可能であるということでもある。氏は200社を対象とした調査のなかでベストプラクティスとして米グッドイヤー社の例を挙げ20%のTCOを削減しているとした。また、オーストリアのT-System社はハードウェアとのグリッドコンピューティングを活用することで25%削減しているとした。



SAPが顧客に約束している3点は、価値実現までのスピードを上げること、改革にかかる時間を短縮すること、そしてTCOの行き詰まりを打破すること
SAPが顧客に約束している3点は、価値実現までのスピードを上げること、改革にかかる時間を短縮すること、そしてTCOの行き詰まりを打破すること

■ウェブサービスをエンタープライズレベルに引き上げる

「2年半前にはウェブサービスが次のトレンドになるのかどうかという議論があったが、現在ではそれが標準になった。我々は新しいエンドトゥーエンドのビジネスプロセス、人を中心としたソリューションを提供していきたい」と氏は話すが、そのために必要なのがオープンなソフトウェアと、ウェブサービスを技術レベルからエンタープライズレベルに引き上げていくことだ。つまり、カスタマーオーダーのキャンセルを例に考えてみると、技術的にはレコードを削除するだけのことだが、ビジネスシーンでシステムがそれを自動的にチェックしたのか、在庫がないということですでに製造をはじめていたら場合には、すべてのステップが解除できたのか、さらにこういったことをすべて人々が理解できたのかということを考えなければいけなくなる。したがってサービスを合理的なアプリケーションにまとめていかなければならない。

エンタープライズサービスはビジネスの視点から重要な意味を持つ
エンタープライズサービスはビジネスの視点から重要な意味を持つ
mySAP Business Suite、SAP xAppsはNetWeaverの上で動作する
mySAP Business Suite、SAP xAppsはNetWeaverの上で動作する

このために、SAPのソリューションは3つの階層に進化していくことになる。氏が示したのは統合ERP『mySAP Business Suite』と複合アプリケーション『SAP xApps』、そしてプラットフォーム『NetWeaver』の関連図だ。ここでは多くのソフトウェアがコンポーネント化されてサービスされ、そのコンポーネントは追加したり再利用したりすることも可能。ステップバイステップで新しいコンポーネントを実装することもできる。エンタープライズサービスレポジトリーの階層にはNetWeaveがあり、パートナーでも顧客でも誰もがアクセスでき、サービスを統合して活用していくことができるようになる。xAppsはさまざまなシステムにあるデータをとってきて集約し分析したりレポートをみたりするもので、NetWeaverをベースにしている。またxAppsはパートナーが一緒になって開発することができる。米キンバリー・クラーク社はSAPと一緒にxAppsを作り上げたという。



『SAP R/3』と『mySAP ERP』

また、同社が『SAP R/3』の後継という『mySAP ERP』についても触れられた。mySAP ERPはNetWeaverをベースとしている。「R/3は成功だった。顧客は満足しているので今更R/3を置き換えたいとは思っていないだろう。しかもR/3を置き換えるには時間がかかる。そこでNetWeaverの統合の機能だけを使い、SAP SCM/CRMへと拡張していく。R/3をmySAP ERPに統合することもできる」。これによって従来の資産を保護しながらコストを削減し、統合を図ることができる。



ロードマップ

氏は大まかなロードマップについて紹介し、来年には独自のソフトを使いたい、ソフトを改善したい、ビジネスプロセスを改善したいということが柔軟にできる規格を目指すとした。そして2006年にはこのエンタープライズレポジトリーを実際に使えるようにしていき、2007年にはすべてのソリューションがエンタープライズサービスアーキテクチャーに準拠すると話した。



■SAPと非SAPアプリケーション間で情報を統合する

米コルゲート社という製造メーカーとそのリテーラーである米Target社との事例

氏は講演の終盤に、米コルゲート社という製造メーカーとそのリテーラーである米ターゲット(Target)社との事例を紹介し、プラットフォープの柔軟性についてアピールした。米コルゲートはSAPのシステムを導入していたが、米Targetは導入していなかった。にもかかわらず、NetWeaverというプラットフォームを通じてプランニングデータのやりとりをすることができているというもので、カスタマーポータルを通じてプランニング、予測、補充がきちんとミックスアンドマッチでなされていた。「オープンなプラットフォームの上に構築されているからこそ、SAPと非SAPをエンドトゥーエンドで統合することができ、パッケージソフトとカスタムビルドのソフトを統合することができる。私どものプラットフォームの上でそれが実現できるのだ」と結論づけた。



ビジネスプラットフォーム

また、氏はテクニカルプラットフォームを提供するのではなく、ビジネスプラットフォームを提供していくことを強調した。「完全なビジネスシナリオを提供すること、エンドトゥーエンドのビジネスプロセスをエンタープライズ全体にまたがって提供するということ。そして、人が実際に仕事をしているワークプレイスにおいて、すべての情報トランザクション、コラボレーション、必要なツールをつかってサポートしていくことが目標だ」と話した。



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