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米IBM、世界最小のコンピューター回路を試作――分子の作用を利用する“分子カスケード”手法を採用

2002年10月25日 23時51分更新

文● 編集部

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日本アイ・ビー・エム(株)は25日、米IBM社が現地時間の24日にIBMアルマデン研究所で世界最小の演算回路を試作したと発表した。これは、原子の表面で、個々の分子が行なうドミノ倒しに似た作用を利用した新技術“分子カスケード(molecule cascade)”を利用して、現在最先端の半導体チップに使用されている素子の約26万分の1に相当する大きさのデジタル論理素子を動作させることに成功したもの。エネルギー消費も半導体回路の10万分の1(1電子ボルト)ときわめて少ないという。

試作した演算回路は、銅の表面上に一酸化炭素分子のパターンを“準安定”の状態で形成し、1個の分子を動かすと、ドミノ倒しの最初の1個を倒すのと同じように、一連の分子がエネルギーの低い構成なろうとして“連鎖的(カスケード状)”に動き始める現象を利用しており、基本的なデジタル論理機能のORとANDの演算、データの格納と読み出し、それらの機能を接続して演算回路として機能させるための他“配線”が作成できることを実証したとしている。絶対零度から4~10度高い温度で作成し、動作を確認したという。なお、一酸化炭素分子を準安定の状態にするには、1格子ぶんだけ離して配置する。

論理の“1”と“0”は、分子の配列がカスケードしているかどうかで表現でき、AND/ORを始めとする論理演算機能は、2つのカスケードを交差させることで実行できることから、2つのカスケードの流れがお互いを横切る“クロスオーバー”と、1つのカスケードが複数の流れに分かれる“ファンアウト”の2つの分子配列を設計したという。

試作した3入力ソーター試作した3入力ソーター。X、Y、Zの3入力により、X・Y・Z、(X・Y)+(X・Z)+(Y・Z)、X+Y+Zの論理演算が行なわれる(・はOR、+はANDを表わす)

今回、試作に成功した最も複雑な回路は12×17nm(ナノメートル:10億分の1m)の3入力ソーター(分類機)。

初期状態 X入力にトリガー
X、Y、Zにトリガーがかかっていない初期状態左上のX入力にトリガーがかかると右下の“OR”[X+Y+Z]に伝わっていく
続いてY入力にトリガー 最後にZ入力にトリガー
続いて中央上のY入力にトリガーをかけると、中央下の“MAJORITY(多数決)”[(X・Y)+(X・Z)+(Y・Z)]に伝わっていく最後に右上のZ入力にトリガーをかけると、左下の“AND”(X・Y・Z)に伝わっていく
3ソーターの動作の様子

ただし、現時点では、分子カスケードは超高真空・低温走査トンネル顕微鏡(STM:scanning tunneling microscope)を使って、一度に1個の分子を動かすことで作られており、複雑なカスケードを組み立てるのに数時間かかるうえ、リセットのメカニズムがないため、分子カスケードは1回しか計算を実行できないという。

なお、IBM Researchのホームページでは動作のイメージをアニメーションで見ることができる。

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