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オリンパス、「2003年3月期、映像カンパニーはV字回復で営業利益100億円超に」──中期経営基本計画説明会で

2002年07月29日 21時16分更新

文● 編集部 佐々木千之

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オリンパス光学工業(株)は29日、東京証券取引所において記者説明会を開催し、2007年3月期までの中期経営基本計画の発表と、その概要について説明した。2007年3月期に、2002年3月期と比較して売り上げが1.8倍の8700億円、営業利益が2.8倍の1200億円を目指すという。

オリンパス光学工業(以下オリンパス)が発表した中期経営基本計画は、2002年4月に始まり2007年3月期までの5年間の経営戦略方針をまとめたもの。5月20日付けで発表した2002年3月期決算の際に示した新中長期計画“02経営経営基本計画”と同じだが、より詳しい説明となっている。

オリンパス代表取締役社長の菊川剛氏オリンパス代表取締役社長の菊川剛氏

説明会では、オリンパス代表取締役社長の菊川剛氏が計画全体について説明した。

映像、医療、産業の3事業でバランスの取れた経営に

菊川氏は最終的目標を、企業価値の最大化であるとして挙げ、成長性、収益性、ブランド力それぞれの向上、企業体質・財務体質で世界トップクラス企業になること、オリンパスの得意とする“オプト・デジタルテクノロジー”(※1)を基盤として“映像システムカンパニー”“医療システムカンパニー”“産業システムカンパニー”の3事業でグローバルメジャープレーヤーになることを目指すとした。

※1 光学技術、デジタル映像技術、微小加工技術を指している。

菊川氏が示した3年後、5年後の経営目標値
菊川氏が示した3年後、5年後の経営目標値

経営目標値として3年後の2005年3月期に売上7000億円、2007年3月期に8700億円(2002年3月期は5284億円)、営業利益では2005年3月期に850億円、2007年3月期に1200億円(同423億円)、という数字を示したが、菊川氏は「個人的には2007年3月期以前に売り上げ1兆円を目指したい。不可能ではないと考えている」と強気の姿勢を示した。また2002年3月期では5%にとどまっているROE(※2)を2007年3月期には4倍の「20%に引き上げたい」(菊川氏)としており、より利益の出る企業/財務体質にするという方針を強調した。

※2 ROE(Return of Equity):株主資本利益率。株主資本で税引き後利益を割った数字。株主が投下した資本を有効に活用しているかどうかという目安として使われる。

カンパニー別の売り上げ・営業利益目標値
カンパニー別の売り上げ・営業利益目標値

映像、医療、産業の3システムカンパニー別に見ると2002年3月期売り上げでは、映像システムカンパニーが2085億円、医療システムカンパニーが2550億円、産業システムカンパニーが558億円、営業利益では映像システムカンパニーが68億円の赤字、医療システムカンパニーが572億円の黒字、産業システムカンパニーが5億円の黒字となっており、医療システムカンパニーに強く依存している。これについて菊川氏は、「産業分野を伸ばし、映像、医療、産業事業の売り上げと利益のバランスを取りたい」として、医療システムカンパニーのコア事業である“内視鏡依存体質からの脱却”を図りたいという考えを示した。

菊川氏が挙げたカンパニー別戦略によると、映像システムカンパニーでは、銀塩フィルムカメラシェア25%(世界市場、以下同)、デジタルカメラシェア20%を死守するという。製造に関しては日本で設計し中国で生産するというサイクルを進める。デジタルカメラに関連しては、ただ製品を売るだけでなく、プリントなどの周辺事業を他社との連携も考えながら強化していくという。

また、デジタルカメラ事業はオリンパスの売り上げの30%を占めながら2002年3月期に100億円以上の赤字となったが、これについては「今期はほぼ確実に映像システムカンパニーとして100億円以上の黒字になる」(菊川氏)と、V字回復すると述べた。

医療システムカンパニーでは、世界シェア8割という内視鏡の強みを維持しながら、処置具(※3)、超音波機器、光学/レーザー顕微鏡、分析機において売り上げ・シェアの拡大を目指すという。また、今後有望な新規分野として遺伝子解析装置、受託解析サービスなどを中心としたゲノム医療分野を挙げ、2010年に売り上げ1000億円という中核事業にするとしている。

※3 内視鏡を使った手術に使用する外科手術用具。

産業システムカンパニーにおいては、半導体・LCD検査に利用する工業用顕微鏡、工業用内視鏡を成長事業と位置づけ、1000億円規模の事業に成長させるほか、有望分野として光スイッチ関連事業があるとしている。

このほか特に新事業としてオリンパスが大きな資本投下を予定するものでは、医療システムカンパニーにおけるゲノム医療とMEMS(※4)、ナノテクノロジーを挙げた。また、経営効率化を目指してSAPジャパン(株)のERP(Enterprise Resource Planning)システムを導入し、3年間でシステムを完成させるという。

※4 MEMS(Micro Electro Mechanical System):微細な電気・機械部品を集積化した超小型システム。

ブランド強化に5年間に200億円以上を投資する
ブランド強化に5年間に200億円以上を投資する

菊川氏はさらに、“ブランド力の強化”を重要な目標として挙げた。オリンパスはデジタルカメラ分野を中心に認知度が向上しつつあるが、さらに認知度とオリンパスブランドの価値を高めるため、5年間に200億円以上をブランド強化のために投資するという。これまでの製品を中心とした広告宣伝という形とは別に、各種メディアを使った展開を図る。この予算は「業績に少々の変調があっても削らない」としており、将来を見据えた重要なポイントと位置づけている。

「一眼レフは悲願。来春には出したい」

説明会後の質疑応答ではデジタル一眼レフカメラに関して、投入時期を確認する質問が出た。取締役常務執行役員映像システムカンパニー長の小宮弘氏は「デジタル一眼レフカメラは我々の悲願であり、来春には出したい。必ずしも一眼レフカメラが儲かるとは思っていないが、ビジネスとしてしっかり利益は出していきたい」と述べた。またデジタルカメラ事業の状況については「春以降に投入した新製品は好調で、日本でのマーケットシェアはだいぶ回復した。ただ、商品の魅力がパフォーマンスだけでは出せなくなっており、市場が成熟してきたと考えられる」としている。

取締役常務執行役員映像システムカンパニー長の小宮弘氏取締役常務執行役員映像システムカンパニー長の小宮弘氏

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