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【ゲーム会社営業マン・細腕奮闘記:最終回】ゲームメーカー営業の神髄とは?!

2002年07月04日 22時53分更新

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S○Eの画期的なシステムに翻弄される僕たち

 プレ○ステーションが発売されるまで、ゲームソフトは他のさまざまな商品と同様、各メーカーの営業担当者が問屋に対して直接営業を行い、価格や数量の交渉をすることで販売を成り立たせていた。その当時、営業力は会社にとって売上を直接左右する非常に重要な要素だったのだ。しかしS○Eはそのシステムを破壊し、僕ら営業マンの営業先であった『問屋』の役割を、自分たちが担うと言い放ったのである。

 つまり、各メーカーは、S○Eの営業担当者に営業から受注、製品の出荷、果ては在庫管理まで、すべて任せることが可能になってしまった。しかも、これまでメーカー営業の手腕の見せ所であった「卸値交渉」も、基本的に一律化。こうなってくると一見、もう各メーカーに営業は必要なくなりそうだ。メーカーが何もしなくても、ソフトは販売店が勝手にS○Eから仕入れて、ユーザーの手に渡ってしまうのだから。

 しかし、そう簡単に営業部門が“用なし”になるわけではない。何故ならS○Eは自社ハード向けの全タイトル、膨大な数のソフトを販売店に売らなければならないからだ。さて、ここでプチクエスチョン。そんな状況で、中小の弱小メーカーが作った“微妙”なタイトルを、彼らが総力をあげて営業してくれるだろうか? …答えはもちろん「NO」だ。

 結局、各メーカーは自分たちの力で営業活動を行う必要が出てくる。しかし、ここでちょっと不思議な事態が生じるのだ。

イメージ画像
店頭にならぶゲームタイトル。※写真はイメージです。実在するショップやメーカーとは関係ありません

 販売店はあくまでも問屋であるS○Eからソフトを購入することになっているから、メーカーから直接購入することはできない(一部の例外はあるけど)。逆に言えば、僕達メーカーの営業は、ソフトを直接販売することができない。僕達にできることはソフトを紹介して、「今回はおもしろいっスよ! 売れるっスよ!!」とセールストーク(または嘘八百)を並べたうえで、最終的には「そんなわけでS○Eさんから5000本くらい買ってくださいねぇ~!」と念を押すしかないのである。さまざまな販促キャンペーンを組んだり、販促グッズをたくさん渡したり、どんなに努力をしても、肝心要の受注部分については、「だからS○Eさんから1万本買ってくださいね!」なのである。非常に中途半端である。“営業マン”とは言いつつも、価格の交渉をしたことがなければ、受注を直接受けたこともない、ただの“ゲームソフト紹介人”なのである。

 こんな頼りない存在のために、高い経費をかけて営業マンをたくさん雇う会社はそうそうない。でも、出すソフトすべてに死ぬほど自信があるというのでなければ、まったくいないのもちょっと不安……。そのため、何とも中途半端な人数の営業部隊が、S○Eの問屋宣言以後、次々と生まれていった。

 そして全国に広がるゲーム販売店に“一応”営業をかけるため、僕たち営業マンは日々全国を飛び回るのだった。営業マンの出張が多くなるのはこういう理由だ。



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