日本電気(株)と富士重工業(株)は14日、自動車用のマンガン系リチウムイオン組電池を共同で開発するため、合弁企業“NECラミリオンエナジー株式会社”を設立することで合意したと発表した。
記者発表会で握手するNEC取締役常務の戸坂馨氏(左)と富士重工取締役兼専務執行役員の五味秀茂氏 |
NECラミリオンテクノロジーは5月20日設立予定で、資本金は4億9000万円(出資比率はNECが51%、富士重工が49%)、川崎市に本社を置く。従業員はNECから12名、富士重工から9名がそれぞれ出向し、合計21名。
NECラミリオンテクノロジーのイメージ |
今回の合弁企業設立は、マンガン系リチウムイオン電池の技術を持つNECと、自動車用の組電池の実装ノウハウを持つ富士重工双方の思惑が一致したことによるもの。同日の記者発表会でNEC取締役常務の戸坂馨氏および富士重工取締役兼専務執行役員の五味秀茂氏は、マンガン系リチウムイオン組電池の将来性を強調した。
マンガン系リチウムイオン電池とニッケル水素電池との比較。すべての点において,ニッケル水素電池より優れていると両社では考えている |
NECによると、同社のマンガン系リチウムイオン電池は電極セルの正極に新しい組成のマンガンを、負極に新形状のカーボンを採用している。また、薄い電極を絶縁体をはさんで交互に積み上げていく積層構造になっている。そのため、現在市販されているハイブリッド車の搭載しているニッケル水素電池に比べて電気容量密度が高く、自己放電による損失も少ない。また小型軽量化が可能だという。その電池セルを直列に複数接続し、セル間の電圧のバランスを調節する制御回路を組み込めば組電池となる。
積層型ラミネート電池技術。電池セルが薄い板状のため、組電池の形状を自由に設計できる |
マンガン系リチウムイオン電池は、すでにPDAなどの携帯機器向けに製品化しており、自動車向けの開発が新会社の今後の課題となる。両氏とも、開発した技術は富士重工だけでなく、国内・国外すべての自動車メーカーに提供していきたいとしている。また、戸坂氏は3年以内に実用化の技術的なめどをつけたいと語った。もっとも、製品の量産については、さらに先になるという。
両社は将来の燃料電池車にも加速性能を確保し、またエネルギーを回生させるための2次電池としてマンガン系リチウムイオン組電池が必要だと考えている。ただし、米ゼネラル・モーターズ(General Motors:GM)社は燃料電池車に2次電池は不要だとしており,グループ企業である富士重工とGMの抱く燃料電池車の将来イメージは異なる。五味氏は、燃料電池の開発については、「GMにやってもらう」と語った