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日立造船と日立造船情報システムなど5社、高精度位置情報ビジネスで新会社を設立

2002年04月19日 18時04分更新

文● 編集部

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日立造船(株)と日立造船情報システム(株)は17日、(株)エヌ・ティ・ティ エムイー、三井物産(株)、アジア航測(株)とビジネスアライアンスを組み、GPSの補正データの配信を目的とする新会社“日本ジー・ピー・エス・データサービス株式会社”を、25日付で設立すると発表した。

今回の発表に先立って、日立造船と日立造船情報システムの2社は、GPS高精度位置情報事業を目的とした新会社“日本ジー・ピー・エス・ソリューションズ株式会社”を、3月25日付で設立している。同社らは今後、この新会社2社を中心に、高精度位置情報ビジネスに本格的に参入していくという。

日立造船専務取締役の永井洋生氏
日立造船専務取締役の永井洋生氏

17日に行なわれた発表会では、はじめに日立造船専務取締役の永井洋生氏が、今回のビジネスアライアンスの背景について説明した。同氏は「1995年から始まった国土空間基盤整備事業は、e-Japan計画へと受け継がれ、官民の重要課題となっている。本年度には、位置情報事業のインフラとして期待される、電子基準点を利用した高精度かつリアルタイムな測位が、国土交通省国土地理院のシステム整備によって可能になる。こうした背景から、位置情報関連事業に、大きなビジネスチャンスが生まれることが予想される。日立造船グループではこれまで、日立造船が“GPS移動体関連ビジネス”を、日立造船情報システムが“高精度GPSビジネス”を展開してきた。今後は、戦略指向分野として、高精度位置情報ビジネスの拡大を考えている。これを実現するにあたって、我々が持っている技術のほかに、高度な通信ネットワークの構築や、広域行政化にともなうビジネスモデルの作成、および高度な測量・測位技術とGIS(※1)技術が必要となってくる。これらの要件を満たすため、NTT-ME、三井物産、アジア航測の3社とビジネスアライアンスを組むに至った」と述べた。

※ GIS (Geographic Information System:位置情報システム):GISとは、情報と地図を重ね合わせることにより、空間や位置に結びついた情報を得るためのシステム。企業のエリアマーケティングや店舗計画のほか、官公庁や自治体の地域管理・解析などに用いられる。

左から日本GPSデータサービス代表取締役社長の安部俊、日本GPSソリューションズ代表取締役社長の佐伯勝敏氏
左から日本GPSデータサービス代表取締役社長の安部俊、日本GPSソリューションズ代表取締役社長の佐伯勝敏氏

次に、高精度位置情報事業の構想について、日本GPSソリューションズの代表取締役に就任した、佐伯勝敏氏が説明を行なった。同氏は「国土地理院は、地殻変動監視システムとして、1992年から国内の各地に電子基準点を設置している。当初の目的は地震を予知することだったが、その後、この電子基準点からGPSの補正データが収集できるということが分かった。電子基準点のリアルタイムデータは、5月から民間に解放される。こういった背景と、高精度位置情報に対する需要の増加などの動きに対応すべく、日本GPSデータサービスと日本GPSソリューションズが設立され、連携して事業を立ち上げる」と述べた。

日本GPSデータサービスは“電子基準点データ配信事業”を行なう。これは、国土地理院が提供する電子基準点のリアルタイムデータを、日本GPSデータサービスが運営する“GPSデータセンター”が受信し、VRS(仮想基準点)システムを用いて、RTK-GPS(※2)用の補正データや、D-GPS用の補正データに加工した後、携帯電話などの通信装置を通じて配信するというもの。インターネットを通じて、後処理用のGPSデータの提供も行なう。これらの補正データによって、高精度な測位をリアルタイムで行なえるようになる。サービスの対象となるのは、GPSメーカー各社が販売する、GPS受信機のユーザーなど。なお、日本GPSソリューションズが開発した、RTK処理用ASPに対してもデータの配信を行なう。

※2 RTK-GPS (RealTime Kinematic-GPS)別名リアルタイム測位システム。GPS衛星からの電波と、電子基準点(あるいは他のGPS観測点)からの位置補正情報(位相データ)などを受信して、リアルタイムでの測位を行なえるGPS技術。測地誤差が2~3cm以内と、高精度なのが特徴。

料金は、定額制のデータ配信サービス“RTK-GPS/DGPSリアルタイムデータ配信”が、月額3万円の予定。また、従量制のリアルタイムデータ配信サービス“データダウンロードサービス”が、1ファイル(1基準点1時間あたりのデータ)ごとの課金(料金は未定)となっている。6月1日からテスト運用を開始し、7月1日から正式にサービスを開始する。今年度の対象サービス地域としては、国土地理院がリアルタイム化を済ませた、200点の電子基準点に対応するとしている。2003年以降は、国土地理院の計画に合わせて、これを全国に展開するという。

日本GPSソリューションズは、“SI提案/高精度RTK-GPSシステム販売事業”を行ない、これまで日立造船と日立造船情報システムの両社が行なってきた、官公庁・大学・研究機関向けGPS事業、ゴルフカート用GPS、GPSを利用した移動体管理システムなど、特定用途向けのシステム事業を継続する。併せて、日本GPSデータサービスからの電子位置情報の配信を受け、同社が開発した、サーバー型次世代RTK-GPSシステム『NetSurv』(受信機)と『SurvStation』(サーバーシステム)の販売も行なう。このシステムをベースに、SI事業やASP事業も行なうとしている。これにより、測量業界だけでなく、地方自治体での共通空間データ獲得・更新、土木・建設分野での測量・大型構造物変形監視、地積調査、地滑りなどの防災監視、車載用GPS、環境調査などでのGIS連携システムなど、多くの分野での利用が見込めるという。

高精度サーバー型RTK用GPS受信機『NetSurv1000』
高精度サーバー型RTK用GPS受信機『NetSurv1000』

サーバー型RTK-GPSシステムのラインアップは、高精度サーバー型RTK用GPS受信機『NetSurv1000』が148万円。業務向け測量・測位タイプ『NetSurv2000』が128万円。なおNetSurv2000は、10月頃の提供となる予定。同社では、サーバーのみが必要、クライアントのみで利用したい、といった要望に応じる顧客別SIサービスを用意しているほか、ASPによるサービスの提供も行なうとしている。

日立造船情報システム常務取締役の石塚敬氏
日立造船情報システム常務取締役の石塚敬氏

最後に、今回のビジネスアライアンスについて、各社からのコメントが述べられた。日立造船情報システム常務取締役の石塚敬氏は「我々は、従来はCADなどのシステムの開発を販売をメインに20年来やってきており、3Dデータのハンドリングの実績と経験を持っている。高精度GPSに対するニーズが出てくることを期待している。我々も一緒になって、新しいストーリーに参加していきたい」と述べた。

NTT-ME第3マーケティング本部長の湯沢洋逸氏
NTT-ME第3マーケティング本部長の湯沢洋逸氏

NTT-ME第3マーケティング本部長の湯沢洋逸氏は「我々には日本全土をカバーする、フルデジタルのベクターデータの地図を市場に提供している。高精度位置情報のインフラも整いつつある。これを大きく発展させていきたいと思っているし、パートナーの一員として頑張らせていただきたい」と述べた。

左から
左から、アジア航測執行役員、ITソリューション事業営業部長の森一夫氏、三井物産宇宙航空部航空、産業営業部空間情報事業チームチーフコーディネーターの森井基夫氏、

三井物産宇宙航空部航空産業営業部、空間情報事業チームチーフコーディネーターの森井基夫氏は「我々三井物産が、社長と一緒に掲げているスローガンが“総合力商社”。商社として、各分野において商社はいろいろ付き合いがある。その接点を利用して、新しいアプリケーションなどを展開していきたい」と述べた。

そして、アジア航測執行役員、ITソリューション事業営業部長の森一夫氏は「アジア航測は、航空測量、情報の調査、環境や地質の調査などをはじめとして、橋や道路の設計といった、総合コンサルタントまで行なってきた。このアライアンスに期待しているのは2つ。1つは、従来も行なっている計測の技術の効率化や、精度のアップ。技術を活用して、皆様に喜ばれる商品の提供をしたい。もう一つは、現代における位置情報の重要性。災害が起きた場合には、現場から地理情報システムをGISの中に取り入れて解析を行なっている。バリアフリーなどのことも考えれば、今まで以上に高精度な位置情報が求められている。そういう中で、新しいビジネスモデルを組み立てることに参加させていただく。今回の参加企業と一緒になってやっていきたいと思っている」

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