アップルコンピュータ(株)は22日、東京・有明の国際展示場(東京ビッグサイト)で開催された“Macworld Conference & Expo/Tokyo 2002”において、米アップルコンピュータ社が発表した新製品に関する報道関係者向けのブリーフィングを行なった。
ブリーフィングでは、10GBのHDDを搭載した新『iPod(アイポッド)』と、1920×1200ドットで1670万色表示が可能な23インチ液晶ディスプレー『Apple Cinema HD Display(アップルシネマエイチディーディスプレイ)』という2つの新製品について、またMac OS X対応のBluetooth接続テクノロジーについての説明が行なわれた。
アドレス帳のデータもダウンロード可能になった新『iPod』
iPodについては、米アップルコンピュータ、ワールドワイドプロダクトマーケティングのプロダクトラインマネージャーであるスタン・イン(Stan Ng)氏が説明を行なった。
10GBのHDDを搭載した新iPod。従来モデルと、本体のカラーやサイズなどに変更はない |
新iPodは、10GBのHDDを搭載し、約2000曲、約135時間のMP3データが収録可能となった。本体サイズは幅61.8×奥行き19.9×高さ102mmで、重さは185g。FireWire(IEEE1394)によるMacintosh本体との接続や、充電方法などは従来モデルと同様で、同氏は「サイズや重量にも変更はなく、ポケットに入りやすいサイズ」であることを強調した。なお、5GBのHDDを搭載した従来モデルも継続して販売する。価格は、10GBモデルが6万2800円、5GBモデルが4万7800円となっている。
本体裏面のステンレススチール面に、レーザーで文字を刻めるようになった。また、裏面の下部には“10GB”の刻印がある |
新サービスとしては、オーダーメードで、本体裏面のステンレススチール面に、レーザーでユーザーの好きな文字を刻める“パーソナライズサービス”を開始した。1バイト文字で27文字、2バイト文字なら13文字までの文字列を、2行まで刻むことができる。料金は6000円で、同社のオンラインストア“アップルストア”での販売にのみ対応する。
アドレス帳をダウンロードし、閲覧できるようになった |
新機能としては、アドレス帳をダウンロードして閲覧できるようになったことと、曲の音質を調節できる“イコライザ”機能を搭載したことが挙げられる。アドレス帳機能では、米マイクロソフト社の『Microsoft Entourage』や、『Palm Desktop』、Mac OS Xの“Address Book”のアドレス帳を、iPodの“コンタクトフォルダ”にコピーして、iPod本体からアドレスを閲覧できる。それぞれのアドレスへのアクセスは、曲の選択と同様にして行なえる。イコライザ機能は、“Jazz”や“Latin”、“Lounge”など、音楽のジャンルごとにプリセットされた20種類の設定を利用して、曲の音質を変更できる。iPodと同期するデジタルオーディオプレーヤー『iTunes 2』で割り当てたイコライザーの設定を反映させることも可能で、同氏は「曲ごとにイコライザの調節を行なえるプレーヤーは、ほかにはない」と語った。これらの機能は、従来モデルの利用者でも、同社のウェブサイトから『iPod Software Update 1.1』をダウンロードすれば、利用できるようになる。
また同氏は、記者たちからの質問に対して、次のように応答した。
HDTVの解像度をカバーする『Apple Cinema HD Display』
次にApple Cinema HD Displayについて、イン氏と同じく、米アップルコンピュータ、ワールドワイドプロダクトマーケティングのプロダクトラインマネージャーであるスコット・ブロドリック(Scott Brodrick)氏が説明を行なった。
米アップルコンピュータ、ワールドワイド・プロダクトマーケティングのプロダクトライン・マネージャーであるスコット・ブロドリック氏 |
同製品は、最大解像度1920×1200ドットで、約1677万色の表示が可能な23インチTFT(薄膜トランジスタ)アクティブマトリックス方式の液晶ディスプレー。従来の22インチモデルに比べて、画素数が40%増加しており、ハイビジョン(HDTV)のコンテンツを、そのままの解像度で表示できるという。同氏は「映像編集ソフト『Final Cut Pro』などを用いての生産性が大幅に向上するだろう」と語っている。輝度は200cd/m2で、コントラスト比は350:1、視野角は上下左右160度となっている。映像信号およびUSB、電源は、ADC(Apple Display Connector)ケーブル1本で接続する。対応機種はPower Mac G4で、利用条件として、米エヌビディア社のグラフィックスカード『GeForce2 MX』『GeForce3』『GeForce4 MX』『GeForce4 Ti』、またはカナダのATIテクノロジーズ社のグラフィックスカード『Radeon 7500』を搭載している必要がある。本体サイズは幅61.4×奥行き最大28×高さ48.6mmで、重さは11.5kg。最大消費電力70W(連続使用時)。価格は44万9000円。4月の出荷を予定している。
Apple Cinema HD Displayの背面。アップルマークが、新iMacと同様に鏡面になり、ADCケーブルが白1色で統一されたほかは、外見に大きな変更はない |
同氏は、「HD Displayは、正確なカラーの表示を重要視するアプリケーションを扱う者にとって、仕事をする上での重要な基盤の1つとなるだろう。同じ大きさのCRTディスプレーに比べて大きさが3分の1、重さは4分の1、消費電力は3分の1。さらに、接続ケーブルは本体と1本にまとめられている。また、OS XはUNIXベースなので、科学技術系の研究所などにとっても、優れた環境を提供できる」と述べた。
CLIEとも通信可能、Mac OS X対応のBluetoothワイヤレス接続テクノロジー
最後に、MacintoshがBluetoothに対応したことについて、米アップルコンピュータ、コンシューマー/エデュケーションモバイルプロダクツのプロダクトマーケティングディレクターであるデイヴラッセル(Dave Russell)氏が説明した。
米アップルコンピュータ、コンシューマー/エデュケーションモバイルプロダクツの、プロダクトマーケティングディレクターであるデイヴ・ラッセル氏 |
同氏はまず、「アップルはこれまでにも、EthernetやUSB、IEEE802.11bなど、さまざまな規格のパイオニアとなり、普及の促進に貢献してきた。Bluetoothはその最新の例になるだろう」と述べた。具体的には同社は、USBポートに接続する、米D-Link Systems社製の『Bluetooth USBアダプタ』と、Mac OS X対応の『Bluetoothソフトウェア』を発表した。前者は、Bluetooth 1.1とUSB 1.1に対応するアダプターで、サイズは幅9.2×奥行き18.2×高さ45.2mm、重さは約81.6g。5月頃の出荷を予定しており、アップルストアのみでの販売となる。価格は6000円。また後者については、Bluetooth USBアダプタの出荷と同時期にテクノロジー・プレビュー版を同社ウェブサイトで配布する予定。利用には、Mac OS X 10.1.3が必要となる。
同社ブースで行なっていたBluetoothのデモンストレーション。Bluetoothは同時に複数の機器と接続が可能であるため、ダイヤルアップを行ないながら、PDAとシンクロナイズする、といったことも可能となる |
これらによって、同社はBluetoothの3つの利用形態をサポートする。1つはPalm OSベースのPDAとのシンクロナイズで、1つはBluetoothを搭載した携帯電話によるモバイルインターネットアクセス。そして最後の1つは、無線通信によるファイル交換となっている。
同氏は「Bluetoothは短距離間での機器の接続をサポートし、IEEE802.11bはアクセスポイントを利用したインターネット接続に用いる。両者は別々の用途で利用するため、共存できると考えている」と述べた。
また記者からの質問について、同氏は次のように述べた。
そして、ASCII24の「なぜこの時期にBluetoothに対応したのか?」という質問に対しては、同氏は「電話機やPDAに、Bluetooth対応機器が出始めている。しかし、Bluetoothデバイスは高価で、普及が遅れている。弊社は、これまでも低価格でさまざまな規格の製品を提供し、普及させてきた。Bluetoothデバイスも同様にして普及させていきたい。弊社がBluetoothに対応し、安価でアクセスしやすい環境を提供することにより、次第に対応周辺機器なども充実していくだろう」と答えた。
注目度が高く、常に人だかりができていた、同社のbluetoothブース |