ビデオやアニメの作成に欠かせないビジュアル編集ツール「Adobe After Effects」が7カ月ぶりにバージョンアップした。+0.5のマイナーバージョンアップだが、3Dサポートの強化やビジュアルプラグインの追加など、クオリティを向上させる数多くの強化ポイントがある。
After Effectsとは?
アドビシステムズの「Adobe After Effects」は、ビデオクリップにブラー(揺らぎ)やレンズフレア(太陽光のギラつき)などの各種映像効果を与える「ビジュアルエフェクトツール」、イメージクリップやテキストに動きを付けてアニメーションの作成を行う「モーショングラフィックスツール」、さらには複数ビデオクリップもしくはイメージクリップの合成を行う「コンポジットツール」という3つの機能を持つ映像制作のためのソフトウェアだ。趣味で映像を扱うハイアマチュアからプロのクリエイターまで幅広い層をターゲットとするツールで、アドビでは上記の機能をまとめた「スタンダード版」と、これにモーションコントロールやビジュアルエフェクトに関する強力なプラグインを追加した「プロ版」の2パッケージを展開している。
2001年6月に登場した前バージョン(5.0)において、2Dグラフィックスイメージを3D空間に配置することで奥行き感のある立体的な画像に表現する「3Dサポート」、レイヤーに主従関係を付加する「ペアレントコントロール」、JavaScriptを使って透明度や大きさといったオブジェクトの属性を複数レイヤー間で関連付けできる「エクスプレッション」など、数多くの新機能を導入、大幅な機能強化を図ったことは記憶に新しいが、今回登場したAfter Effects 5.5はそのマイナーアップグレードということになる。After Effects 5.5では5.0の新機能である3D表現やエクスプレッションといった各機能の強化をはじめ、ビジュアルプラグインの追加、マスクの強化、パレットの新設、入出力フォーマットの拡張、さらにはPentium 4(SSE2)対応によるパフォーマンスの向上など、数多くの部分で機能強化や新機能の追加が行われている。ここでは、その中から代表的なものに注目してみよう。
大幅に強化された表現力
今回のバージョンアップで特に目立つのが、「3Dサポートの強化」と「ビジュアルエフェクトプラグインの追加」による表現力の強化だろう。
3D関連では、配置したオブジェクトの質感を調整するマテリアルオプションに「透過率」「金属」という属性が新たに追加された。透過率とは、オブジェクトに対して光源からの光をどれくらい透過させるか、その度合いを示すもので、100~0%で指定する。透過率を上げると透明なガラスのように、光はオブジェクトを抜けて先へと伸びる。と同時に、オブジェクトを透過した光はオブジェクトに設定したカラーの影響を受ける。例えば、白色光を放つライトの前に赤い平面オブジェクトを置き、透過率を高く設定すると、そのオブジェクトの先に透過した赤い光が伸びる。単色だけでなく、グラデーションカラーやステンドグラスのような複雑な色彩でも、それに応じた透過光として表現される。これを使えば、簡単なカラーフィルタの効果も与えられるというワケだ。
図1 マテリアルオプション-「ライトの透過」により、オブジェクトの影に色をつけられるようになった(左)。この状態は透過率が100%なので(タイムライン参照)、前面にある赤いオブジェクトの色がそのまま後ろの白いオブジェクトに落ちている。透過率を50%にした場合(中央)、透過率を0%にした場合(右)ではそれぞれ印象がかなり異なる。 |
図2 上はマテリアルオプション-「金属」を100%に設定したオブジェクト。下は基本設定は同じまま、金属の値を0%に設定したオブジェクトだ。ハイライトの処理の違いにご注目いただきたい。 |
図3 ライトを調整レイヤーとして使用したサンプル。この例ではライトレイヤーをレイヤー2とレイヤー3の間に配置しているため、ライトによる照明効果はレイヤー3(ワークスペース左下にあるオブジェクト)にのみ働いている。 |
図4 エフェクト「稲妻(高度)」では表現力が豊かになり、一般的な雷以外にもさまざまなものを描けるようになった。 |
図5 エフェクト「4色カラーグラデーション」では、文字どおり4色のカラーによるグラデーションを作成可能だ。 |
図6 エフェクト「セルパターン」では、バブルや結晶といったパターンのアニメーションを作成できる。左の画面は、バブル右はプレートをパターンに採用したもの。 |
図7 エフェクト「ラフエッジ」。オブジェクトのエッジを崩したり、錆付いたような効果を与えたいときに重宝するだろう。 |