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米ナゾミ、Javaアプリを数10倍に高速化する携帯電話向けアクセラレーターチップを発表

2002年01月28日 22時26分更新

文● 編集部 佐々木千之

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米ナゾミ・コミュニケーションズ(Nazomi Communications)社は28日、都内で記者発表会を開催し、Javaアプリケーションの動作速度を15~60倍に高速化する携帯電話向けJavaアクセラレーターチップ『JA108』を発表した。現在サンプル出荷中で、1万個以上購入した場合の単価は5.59ドル(約750円)。量産開始は2002年第1四半期の予定。

米ナゾミ・コミュニケーションズ社のJavaアクセラレーターチップ『JA108』
米ナゾミ・コミュニケーションズ社のJavaアクセラレーターチップ『JA108』

米ナゾミ・コミュニケーションズは、米サン・マイクロシステムズ社のJavaプロセッサーチームにいた2人が'98年9月に設立した企業。Javaプラットフォームなど汎用のランタイムプラットフォーム上で動作するアプリケーションのパフォーマンスを向上するアクセラレーター技術を持つ。日本国内においてはインキュベーションとコンサルティングを手がける(株)アイシスがナゾミ日本支社としてマーケティング活動を行なっている。ナゾミは現在、システムチップなどに組み込んでJavaアプリケーションを高速化するシリコンIP(Intellectual Property)『JSTAR(ジェイスター)』、およびJavaを使うスマートカード用のシリコンIP『JSMART(ジェイスマート)』を提供している。

発表会では、米ナゾミの創設者で副社長兼COO(最高執行責任者)を務めるジェイ・カムダール(Jay Kamdar)氏がJA108の特徴について説明した。

米ナゾミ・コミュニケーションズ副社長兼COOのジェイ・カムダール氏
米ナゾミ・コミュニケーションズ副社長兼COOのジェイ・カムダール氏

カムダール氏によるとJA108の特徴は、単独で動作するチップで、インターフェースとして16bitのSRAM/フラッシュインターフェース(※1)を採用しているのでプロセッサーの種類を問わず、メモリーバスに組み込める。そのため、携帯電話やPDAの開発に際しては、ほとんど設計の変更なしにJA108を搭載できるとしている。JA108は現在0.13μmプロセスで製造しており、チップのサイズは10×10mmおよび7×7mmの2種類で、128ボールのμBGAパッケージで提供する。

※1 既存の携帯電話システムのほとんどが16bitのSRAM/フラッシュインターフェースを備えているという。

JA108は、Java仮想マシンのうちで最も時間のかかる処理である“Byte code interpreter loop”の部分をハードウェアによって実行することで、Javaコードのパフォーマンスを向上する仕組み。Java仮想マシンの処理フローに変更を加え、本来のByte code interpreter loopに回すJavaバイトコードをJA108に引き渡す。JA108では全部で202あるJavaバイトコードのうち169のコードをチップ内で直接実行して、結果をJava仮想マシンに戻す。JA108で実行できない残りのコードについては、Java仮想マシンに戻してソフトウェアベースで実行させるという。

JA108の構造概要
JA108の構造概要

JA108は米ナゾミにとって初のシリコンチップ製品。Javaアプリケーションの実行速度がどの程度高速化されるかについては、設計段階では15~60倍(ソフトウェアベースのJava仮想マシン比。以下同)、Javaベースのマルチメディアアプリケーションで4~6倍と見ていたが、サンプルチップで試した範囲ではベンチマークテストの内容によっては200倍も高速化できたとしている。

JA108はJava仮想マシンのByte code interpreter loopの部分を置き換え、高速化する
JA108はJava仮想マシンのByte code interpreter loopの部分を置き換え、高速化する

また、JA108ではJavaバイトコードが送られてこない(処理を行なわない)時にはスリープモードに入るなど、細かい電源管理を行なっている。JA108をシステムに実装する際に、JA108以外のハードウェアの追加や、システムクロックの高速化、メモリーの追加といった必要がないため(※2)、消費電力の点でも、コストの点でも優れているとしている。そのほか、プロセッサー、OS、Java仮想マシン、およびハードウェア設計に制約を与えない点や、Javaアプリケーション側では修正の必要がないため、迅速なシステムの開発が可能という。

※2 パソコンのJava高速化の方法として利用されているJIT(Just-In-Time)コンパイラーは、大きなメモリーを必要とするため携帯電話など、ハードウェアリソースが限られたシステムには向かないという。

JA108の電源管理機能
JA108の電源管理機能。トータルの電源消費は、ソフトウェアで実行する場合と変わらないという

同社はこれまで、Javaアプリケーションの実行性能を向上するシリコンIPであるJSTARを2年前から提供してきており、名前は明かせないが日本企業でも採用が決まって、JSTAR搭載製品が登場の予定という。しかし、シリコンIPでは、メーカーがチップ化してハードウェアに搭載するまでには、組み合わせるためのプロセッサーを選定してそのライセンス料を払い、チップをテストするなど、時間やコストがかかるため、端末メーカーが開発しているシステムに容易に組み込め、開発期間を短縮できるJA108を開発したという。JA108はJava高速化チップの第1弾であり、今後もさまざまな製品を投入する計画としている。

発表会では、JA108を有効にしたシステムと、無効にしたシステムで比較デモが行なわれた。画像が見づらいが、手前にあるディスプレーパネルでグラフィックスアプリケーションが動いている。目測だが、5~10倍高速化されていた
発表会では、JA108を有効にしたシステムと、無効にしたシステムで比較デモが行なわれた。画像が見づらいが、手前にあるディスプレーパネルでグラフィックスアプリケーションが動いている。目測だが、5~10倍高速化されていた

JA108の販売は、販売代理店であるユニダックス(株)ダイヤセミコン事業部と(株)マクニカ テクスターカンパニーの2社を通じて行なう。マクニカのテクスターカンパニー、プレジデントの北尚一氏は「ここ1、2年以内に国内の大きな客が付くと考えている」と述べ、期待の大きさをうかがわせた。

評価システムのSRAMソケット部のアップ。SRAMとともにJA108(SRAMボード中央のチップ)が搭載されている
評価システムのSRAMソケット部のアップ。SRAMとともにJA108(SRAMボード中央のチップ)が搭載されている

ハードウェアでJavaコードを実行して、Javaアプリケーションを高速化するものとしては、英アーム社が自社のプロセッサーコア“ARM”にJavaコードの95%をネイティブで実行できるという“Jazelle(ジャゼール)”技術を発表しているが、これとの比較についてカムダール氏は「JazelleはJSTARのコピーとも言えるもの。また、Jazelleが搭載されたチップはまだ市場に出ていないが、我々のJSTARはすでにARM7やARM9向けとして提供中だ」とし、さらに「JA108はJSTARをもとにしているが、チューニングを進めておりさらによいパフォーマンスが期待できる」とアピールしていた。

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