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「Windows XPのリモートアシスタンスが普及すれば、我々の市場も広がる」――米モーティブコミュニケーションズ、日本市場に参入

2001年10月29日 21時18分更新

文● 編集部 中西祥智

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ウェブ上のサポートシステムの開発・販売を行なう米モーティブコミュニケーションズ(Motive Communications)社は29日、都内で記者懇談会を開催して、日本市場へ本格的に参入すると発表した。同社は、日本法人であるモーティブコミュニケーションズ(株)を7月に設立している。

中央がマイク・メイプルズ副社長
左が日本法人の代表取締役である田中義則氏、中央がマイク・メイプルズ副社長兼共同創立者、右端がジョン・V.・キニーアジアパシフィック担当副社長

モーティブコミュニケーションズは、ウェブ上でのサポートシステムを提供する。たとえば、パソコン本体のサポートの場合、サポートツールをプレインストールした状態で出荷する。問題発生時にユーザーがサポートツールをオンラインで実行した場合、ユーザー環境を自動的に診断して診断情報をサポートセンターに送信し、サポートセンター側からのリモート修復が行なえる。リモート修復は、JavaもしくはJavaScriptベースの修復ツールをユーザーの承認で実行する。また、オフライン時の自動修復も可能という。FAQの参照や、サポート技術者とのチャットも行なえる。

システムの診断結果
システムの診断結果。修復ボタンをクリックすると、自動的に問題となる箇所を修復する
サポート技術者とのチャット
サポート技術者とのチャット

米モーティブコミュニケーションズの共同創立者で副社長(製品開発担当)のマイク・メイプルズ(Mike Maples)氏によると、エンドユーザーは従来、技術的なサポートを受ける際に「どんな環境でどのようなソフトを使用し、そのバージョンがいくつ」といったことを電話でいちいち説明しなければならなかったが、インターネットによって、それらが変化しつつあるという。

マイク・メイプルズ副社長兼共同創立者
マイク・メイプルズ副社長兼共同創立者

しかし、インターネットを介したサポートも、企業は予算や人員の制約から簡単には拡充できず(※1)、提供しているサービスをエンドユーザーのニーズが上回る“Service Delivery Gap(サービス提供のギャップ)”が発生している。そのギャップが、同社のビジネスチャンスとなる。

※1 それでも、企業はサポート年間約900億ドル(10兆9800億円)を費やしているという。また、企業はそのサポートの不備のために、今後5年間で1730億ドル(21兆1060億円)もの収益を失うという。

“Service Delivery Gap”
“Service Delivery Gap”このギャップが、モーティブコミュニケーションのビジネスチャンスになる

同社のシステムの特徴は、サポートする各製品に“ビルトイン”することだという。従来のサポートシステムでは、問題が発生したサポート対象のハードやソフトとは別に、メールを送ったり、電話をしたりする必要があった。しかし、同社のシステムはハードやソフトに組み込んであり、いわば製品と一体化しているため、その場で診断やサポートを受けることが可能になる。

メイプルズ副社長は、「“あればいいな”という程度のビタミン剤ではなく、本当に必要とされる鎮痛剤を提供する」と語った。そして、「良いサービスは必ずしも高コストではない」とし、安価で効率の良い、そして個別にきめ細やかなサービスが、同社のシステムで提供できると力説した。

また、日本法人の代表取締役である田中義則氏によると、同社は日本国内でパソコン関連、ISP、そして企業の従業員向けサービスの3つの分野と、今後進出する予定の金融関係の、4つの分野にフォーカスしてシステムを提供していくという。それらのサポートを利用するユーザー数は、約1400万人に上ると同社では予測している。

田中義則代表取締役
田中義則代表取締役

日本法人の従業員は現在4名だが、2002年春ごろには15名に増強し、販売・開発体制を強化するという。また、富士通(株)は11月1日より、同社のサポートシステムを導入して、オンラインマニュアルや自己診断ツールを組み合わせた統合サポート、“富士通サービスアシスタント”の提供を開始する。

なお、10月25日に米マイクロソフト社が発売したWindows XPは、インターネットを介したサポートを提供する“リモートアシスタンス(Remote Assistance)”機能を標準で搭載している。競合するのは大企業の内製システムで、コンペティター(競合他社)はいないとする同社だが、リモートアシスタンスについても「普及すれば我々の市場も広がる(メイプルズ副社長)」と、歓迎はしないまでも敵視はしていない。

メイプルズ副社長は、米ネットスケープ社とマイクロソフトの、いわゆる“ブラウザー戦争”を引き合いに出し、「OSに組み込まれている機能と、まともに競争することは賢明ではない」、「マイクロソフトと競うのではなく、マイクロソフトの製品を支援する」としている。同社は今後、リモートアシスタンス機能のバックエンドのインフラを提供し、また、サポート機能をよりスマートに使いたいという企業には、同社の製品を販売するという。

もっとも、メイプルズ副社長は「マイクロソフトに、製品をOEM供給することは考えているのか?」という記者からの質問には「それも悪くはないが、今のところ、そのような話はない」と答えた(※2)。

※2 ちなみに、メイプルズ副社長の父親は米マイクロソフトの元副社長。

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