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ADSLの回線品質を維持せよ!!――TTC、“スペクトル管理標準”を発表

2001年09月04日 21時14分更新

文● 編集部 中西祥智

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(社)電信電話技術委員会(TTC)(※1)は4日、記者説明会を開催し、xDSLサービスを行なう事業者の守るべきルール“スペクトル管理標準”を発表した。

※1 電信電話技術委員会は、電気通信網に関する標準の作成、調査および研究、標準の普及を行なう民間の標準化機関。

スペクトル管理標準とは、既存の電話線で利用者が満足できるADSLサービスを提供するために、電話回線での漏話や線路損失の許容範囲を明確に標準として設定するもの。アメリカでは2月に“ANSI T1.417”として制定されており、日本でも旧郵政省(現総務省)がTTCに標準化を要請していた。TTCでは、2000年11月に同標準を扱うSWG(サブワーキンググループ)4-6-5を設置し、以後7回の委員会および上位の委員会の承認を得て、今回の発表となった。

堀崎修宏TTC専務理事堀崎修宏TTC専務理事

説明会冒頭で挨拶に立った堀崎修宏TTC専務理事は、スペクトル管理標準を制定するに至った経緯について、「ADSLはISDNの干渉で通信品質が下がる。干渉の管理をするためのマニュアル、加入者が十分なサービスを受けられる仕組みが必要」なためだと説明した。

続いて、SWG4-6-5のリーダーである小畑至弘氏(イー・アクセス(株)取締役兼CTO)が説明を行なった。スペクトル管理の目的は、同一のメタリックの電話線において、複数の通信事業者による複数の伝送システムが共存できることにある。この伝送方式が共存できる状態を、“スペクトル適合性”と呼ぶ。

小畑至弘SWG4-6-5リーダー小畑至弘SWG4-6-5リーダー

このスペクトル適合性を、全ての通信事業者が守ることが望ましい。スペクトル管理の定義とは、このスペクトル適合性を確保する方法を明確にすること、電話線内で相互干渉が発生する可能性を最小化し、周波数スペクトルを有効に利用することにあると、小畑氏は説明した。

スペクトル管理の適用範囲は、利用者宅からNTT電話局までのメタリック線。途中の機器やラジオなどからのノイズ、Home PNAといった宅内配線からの干渉、NTTのメンテナンス信号や雷などは適用範囲に入っていない。小畑氏は、今後xDSL以外の通信方式などが普及した場合、あるいは途中まで光ファイバーでそこから先は銅線といった形態が普及するなど、実態との乖離が明らかになった場合に改訂したいとしている。

標準化では、悪条件が重なってもサービスが提供できる“最悪条件”を設定し、この条件のADSL回線にISDNやSDSLなどの干渉を加味して信号の減衰を測定する。設定した最悪条件は、99%累積値(※2)の0.4mm紙絶縁ケーブルを使用し、同一カッド(※3)を含む、周囲に24回線のISDNもしくはSDSLなどを収容している。

※2 漏話特性が、ケーブルの特性分布のうち、漏れにくい方から数えて99%に位置する。つまり、100本のケーブルの内、2番目に漏れやすいケーブルということになる。

※3 電話線は4本の電線から成り、1対で1回線を2回線収容している。これをカッドと呼び、このカッドを複数束ねて1ユニットとする。

最悪条件
最悪条件の考え方

各伝送方式の干渉状況だが、AnnexC FBM(Fixed Bit Map)とISDN・SSDSL(Synchronized Symmetric Digital Subscriber Line:Annex H)の間は漏話影響が少ないが、AnnexC DBM(Dual Bit Map)およびAnnex AとISDN・SSDSLの間では大きな漏話影響がある。

標準システムでは、伝送システムを2グループに分ける。第1グループは、音声帯サービス、ISDN、ADSL。第2グループはSDSL、SHDSL、SSDSL。第1グループは優先して守るべきシステムであり、また相互に漏話影響が少ないため、ケーブルの収容に条件は設けない。それに対して、第2グループは第1グループとの相互干渉を避けるため、第1グループと同じカッドに収容しない、限界線路長の範囲内で使用する、などの制限を設ける。

同一カッドを除くことの効果
同一カッドを除くことの効果

スペクトル管理標準は、11月に標準化会議で正式に承認されれば、2002年2月に標準として発行する予定。

説明会終了後、小畑氏はAnnex Aについて、日本では信号の減衰が激しく、利用者に十分な通信速度を提供できないと語った。ちなみに、Yahoo! BBはAnnex A規格を採用している。

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