ソフトバンク・グループ、ビー・ビー・テクノロジー(株)、ヤフー(株)は16日、都内のホテルで6月27日に発表した下り通信速度最大12MbpsのADSLサービス“Yahoo! BB 12M”に関する記者説明会を開催した。席上、ソフトバンク・グループ代表の孫正義氏は「TTC(情報通信技術委員会)の標準化うんぬんで(Yahoo! BB 12Mが)なにか問題があるかのような報道がなされているが、これは全くの誤解によるもの」また、同サービスで利用している規格“Annex A.ex(アネックス エードットイーエックス)”は「国際規格であるITU-T(※1)に準拠したものであり、何ら問題はない」などと述べた。
※1 ITU-T(International Telecomunication Union Telecommunication sector):国際電気通信連合通信標準化部門。通信の標準化作業を行なう国際組織![]() | ソフトバンク・グループ代表の孫正義氏 |
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Yahoo! BB 12Mは、Annex A.exの採用によって最大通信速度(リンク速度)を従来(Yahoo! BB)の8Mbpsから12Mbpsに引き上げ、サービス可能な回線収容局からの距離も5~6km(従来は2~3km)に延長可能というサービス。さらに回線収容局からの距離が1~2km程度のユーザーでは、従来と比較して通信速度(リンク速度)が平均1Mbps程度向上するとしている。
孫氏が説明会で示した技術資料によると、Annex A.exの主な技術的ポイントとして、エコーキャンセラー(EC)技術とS=1/2技術があるとしている。
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エコーキャンセラー(EC)技術に関する説明図。上が従来のもの、下がEC技術を使ったもの |
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S=1/2技術の効果の説明図。グラフは縦軸がリンク速度、横軸が収容局からの距離を示している |
Annex A.exでは従来のAnnex A(およびAnnex C)が上り通信のために使っていた25~138KHzという周波数帯域を、EC技術によって下り通信用にも利用する。EC技術には、スペクトルオーバーラップによる周波数帯域の有効利用、上り速度にほとんど影響を与えずに下り速度を大幅に改善する、(距離による)減衰量の少ない定収は数体域を利用することで到達距離が改善、ITU-T規格に準拠、といった特徴があるとしている。
孫氏は技術の説明中、12日に行なわれたイー・アクセス(株)の高速ADSLサービス“ADSLプラス”説明会(※2)に関する各IT関連メディアの報道について「一部に、私どものこの機能がTTCの標準化うんぬんで、なにか問題があるような報道がなされているがが、これはまったくの誤解によるものであり、私どもの規格は国際規格ITU-T規格に準拠している。今日午前中に総務省に正式に書面によって、ITUの基準に我々の技術はのっとっており何ら問題ないということを提出してきた」と述べて反論した。
※2 ADSLプラスは最大12Mbpsの通信と、通信可能距離を延長するサービスの名称。この説明会の冒頭で、イー・アクセス最高技術責任者でTTCのメンバーでもある小畑氏が、Yahoo! BB 12MサービスがTTCに事前に情報提供することなくフィールドテストを実施したことなどについて、イー・アクセスとして総務省に文書で苦情を提出したことを明らかにした。![]() |
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Yahoo! BB 12Mのフィールドテストでの実証データ(下りリンク速度)。収容局からの距離が1km程度でもリンク速度が1Mbps台のデータもあるが、これらについては宅内回線の障害によるものと説明した |
また、S=1/2は回線状況の良いユーザーに対して、エラー訂正符号である“リードソロモン符号”による訂正を“雑”にすることで従来よりも高い転送速度を得る手法。回線収容局からの距離が1km以内でノイズが少ないユーザーでは12Mbpsという最大リンク速度が得られるほか、それ以外の距離においても著しくリンクスピードが改善するとしている。
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Yahoo! BB 12Mのフィールドテストでの実証データ(上りリンク速度) |
Yahoo! BB 12Mサービスでは、ADSL接続サービス“Yahoo! BB”とIP電話サービス“BBフォン”の一体型“コンボモデム”を使用する。この『Yahoo! BB コンボモデム 12M』(コードネーム:カメレオン)は、Annex A.ex、Annex A、Annex Cの3つのADSL規格に対応しており、ユーザーの通信環境に応じて切り替えられるという(基本のモードはAnnex A.exに設定)。
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Yahoo! BB 12Mサービスで使用するコンボモデム |
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説明会場となったホテルオークラで、実際にYahoo! BB 12Mの接続デモが行なわれた。リンク速度10488Kbpsを示している |
孫氏は「他社は(高速サービスの)発表は私どもより何日か前に行なっているが、どうも現物はできていないようだ。秋からサービス開始ということだが、実際にいつ出てくるかは分からないが、私どものものは3月の時点でほぼ完成しており、愛知県大口町において実証実験を極秘に開始しており、まったく繋がらないというお客様はほぼゼロにすることができた。これをベースに7月1日から一般公開によるフィールド接続サービスを試験的に開始する」と述べた。
報道陣とのQ&Aには多くの時間が割かれたが、質問の中心となったのはAnnex A.exの干渉に関する話題と、フィールドテスト開始に伴うTTCとの検証作業に関する話題。以下、Q&Aのなかから主なものをお伝えする。質問には孫氏とBBテクノロジー社長室長の宮川潤一氏が答えていた。
これ(※3)に関しては、正式に私どもも、今日(16日)に逆に抗議をしている。たいへんな営業妨害である。まるで私どもが規格に反しているような形で表現されたことについては、はなはだ遺憾に感じている。本来、技術に関する競争は技術をもって競争していただくことが健全なあり方だと考えている。
ITU-TのG992.1という規格は1999年の6月に国際的にオーソライズされたもの。Yahoo! BBのサービス開始にあたって、スペクトラムマスク(使用する周波数帯域の特性グラフ)を(1年半ほど前に)NTTに提出した際に、ECモード、S=1/2モードは規格内として共に提出しており、新たに提出するまでもないという認識だった。
