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ソフトバンク、“Yahoo! BB 12M”に関する記者説明会を開催──「ルール違反との指摘は遺憾」と孫氏

2002年07月17日 11時54分更新

文● 編集部 佐々木千之

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ソフトバンク・グループ、ビー・ビー・テクノロジー(株)、ヤフー(株)は16日、都内のホテルで6月27日に発表した下り通信速度最大12MbpsのADSLサービス“Yahoo! BB 12M”に関する記者説明会を開催した。席上、ソフトバンク・グループ代表の孫正義氏は「TTC(情報通信技術委員会)の標準化うんぬんで(Yahoo! BB 12Mが)なにか問題があるかのような報道がなされているが、これは全くの誤解によるもの」また、同サービスで利用している規格“Annex A.ex(アネックス エードットイーエックス)”は「国際規格であるITU-T(※1)に準拠したものであり、何ら問題はない」などと述べた。

※1 ITU-T(International Telecomunication Union Telecommunication sector):国際電気通信連合通信標準化部門。通信の標準化作業を行なう国際組織

ソフトバンク・グループ代表の孫正義氏ソフトバンク・グループ代表の孫正義氏

Yahoo! BB 12Mは、Annex A.exの採用によって最大通信速度(リンク速度)を従来(Yahoo! BB)の8Mbpsから12Mbpsに引き上げ、サービス可能な回線収容局からの距離も5~6km(従来は2~3km)に延長可能というサービス。さらに回線収容局からの距離が1~2km程度のユーザーでは、従来と比較して通信速度(リンク速度)が平均1Mbps程度向上するとしている。

孫氏が説明会で示した技術資料によると、Annex A.exの主な技術的ポイントとして、エコーキャンセラー(EC)技術とS=1/2技術があるとしている。

エコーキャンセラー技術に関する説明図
エコーキャンセラー(EC)技術に関する説明図。上が従来のもの、下がEC技術を使ったもの
S=1/2技術の効果の説明図
S=1/2技術の効果の説明図。グラフは縦軸がリンク速度、横軸が収容局からの距離を示している

Annex A.exでは従来のAnnex A(およびAnnex C)が上り通信のために使っていた25~138KHzという周波数帯域を、EC技術によって下り通信用にも利用する。EC技術には、スペクトルオーバーラップによる周波数帯域の有効利用、上り速度にほとんど影響を与えずに下り速度を大幅に改善する、(距離による)減衰量の少ない定収は数体域を利用することで到達距離が改善、ITU-T規格に準拠、といった特徴があるとしている。

孫氏は技術の説明中、12日に行なわれたイー・アクセス(株)の高速ADSLサービス“ADSLプラス”説明会(※2)に関する各IT関連メディアの報道について「一部に、私どものこの機能がTTCの標準化うんぬんで、なにか問題があるような報道がなされているがが、これはまったくの誤解によるものであり、私どもの規格は国際規格ITU-T規格に準拠している。今日午前中に総務省に正式に書面によって、ITUの基準に我々の技術はのっとっており何ら問題ないということを提出してきた」と述べて反論した。

※2 ADSLプラスは最大12Mbpsの通信と、通信可能距離を延長するサービスの名称。この説明会の冒頭で、イー・アクセス最高技術責任者でTTCのメンバーでもある小畑氏が、Yahoo! BB 12MサービスがTTCに事前に情報提供することなくフィールドテストを実施したことなどについて、イー・アクセスとして総務省に文書で苦情を提出したことを明らかにした。

Yahoo! BB 12Mのフィールドテストでの実証データ
Yahoo! BB 12Mのフィールドテストでの実証データ(下りリンク速度)。収容局からの距離が1km程度でもリンク速度が1Mbps台のデータもあるが、これらについては宅内回線の障害によるものと説明した

また、S=1/2は回線状況の良いユーザーに対して、エラー訂正符号である“リードソロモン符号”による訂正を“雑”にすることで従来よりも高い転送速度を得る手法。回線収容局からの距離が1km以内でノイズが少ないユーザーでは12Mbpsという最大リンク速度が得られるほか、それ以外の距離においても著しくリンクスピードが改善するとしている。

Yahoo! BB 12Mのフィールドテストでの実証データ
Yahoo! BB 12Mのフィールドテストでの実証データ(上りリンク速度)

Yahoo! BB 12Mサービスでは、ADSL接続サービス“Yahoo! BB”とIP電話サービス“BBフォン”の一体型“コンボモデム”を使用する。この『Yahoo! BB コンボモデム 12M』(コードネーム:カメレオン)は、Annex A.ex、Annex A、Annex Cの3つのADSL規格に対応しており、ユーザーの通信環境に応じて切り替えられるという(基本のモードはAnnex A.exに設定)。

Yahoo! BB 12Mサービスで使用するコンボモデム
Yahoo! BB 12Mサービスで使用するコンボモデム
説明会場となったホテルオークラで、実際にYahoo! BB 12Mの接続デモが行なわれた
説明会場となったホテルオークラで、実際にYahoo! BB 12Mの接続デモが行なわれた。リンク速度10488Kbpsを示している

孫氏は「他社は(高速サービスの)発表は私どもより何日か前に行なっているが、どうも現物はできていないようだ。秋からサービス開始ということだが、実際にいつ出てくるかは分からないが、私どものものは3月の時点でほぼ完成しており、愛知県大口町において実証実験を極秘に開始しており、まったく繋がらないというお客様はほぼゼロにすることができた。これをベースに7月1日から一般公開によるフィールド接続サービスを試験的に開始する」と述べた。

報道陣とのQ&Aには多くの時間が割かれたが、質問の中心となったのはAnnex A.exの干渉に関する話題と、フィールドテスト開始に伴うTTCとの検証作業に関する話題。以下、Q&Aのなかから主なものをお伝えする。質問には孫氏とBBテクノロジー社長室長の宮川潤一氏が答えていた。

[報道陣] イー・アクセスの最高技術責任者の小畑氏から、Annex A.exに関して、TTCの審議を経ずにフィールドテストを行なったことがルール違反だ、ということと、他社のADSLサービスの上り速度に対して干渉で影響を与える可能性がある、という2点の指摘があったが。
[孫氏] TTCに対してフィールドテストの事前に届けでなければならないという認識はない。TTCに直接的にそのような権限があるとは認識していない。また(Annex A.exは)ITU-T 992.1の基準にのっとったものであり、TTCあるいはイー・アクセスの小畑さんのほうで異論があるようであれば、ITU-Tに直接議論をしていただくのが筋なのではないか。日本国も、日本の主要なメーカーもITU-Tのメンバーとして加盟しているわけであるから、そこに直接言いたいことがあればおっしゃっていただければと考えている。

これ(※3)に関しては、正式に私どもも、今日(16日)に逆に抗議をしている。たいへんな営業妨害である。まるで私どもが規格に反しているような形で表現されたことについては、はなはだ遺憾に感じている。本来、技術に関する競争は技術をもって競争していただくことが健全なあり方だと考えている。
※3 イー・アクセスは12日、総務省に対してAnnex A.exがTTCに対して提案なしに進められ、またすでにフィールドテストをすませてサービスに入ろうとしていることに関し、民間企業同士による自主的な話し合いによる技術の進展を求める総務省の方針に反するものだとして、総務省に対して抗議文書を提出している。

[報道陣] それではAnnex A.exがほかの回線に影響を与えることはないという認識なのか?
[孫氏] 同一カッド(※4)内に異なった規格のものが入っているときに、現実的に影響のある場合がある。しかし、実際には(Annex A.exの)自らの上り信号に対する影響が最も大きいわけだが、我々の実証実験の結果、上りのリンク速度に対する影響は見られなかったことを確認した。であるから、自分に対する影響がほとんど無いのであれば、自分よりも離れている電線にあるもの、同一カッドに無いものに関しては著しく影響は減るはず。何か問題があるのなら、我々自身に影響が一番あるはずだが、実質的にはほとんど影響がないという実証実験の結果が出ている。
※4 カッド:電話線は2本ずつ対になった4本の銅線からなり、これで2回線収容している。この1まとまりをカッドと呼び、カッドを複数束ねて1ユニットとしている。

[報道陣] 自己干渉が最大の問題という説明があったが、TTCで実施しているスペクトルマネージメントの意義は、事前にそれぞれ規格間の相互干渉を調べて信号出力などを調整するという作業を行なった上でフィールドサービスに移るというところにあったと思うが、そのような検証作業を積極的に受けるという考えはあるか?
[宮川氏] 他社さんと今後、フィールド上でサービスがぶつかり合うとすると、後1年後2年後というサイクルで見れば、当然そういった試験というのは積極的にやっていきたいと考えている。

ITU-TのG992.1という規格は1999年の6月に国際的にオーソライズされたもの。Yahoo! BBのサービス開始にあたって、スペクトラムマスク(使用する周波数帯域の特性グラフ)を(1年半ほど前に)NTTに提出した際に、ECモード、S=1/2モードは規格内として共に提出しており、新たに提出するまでもないという認識だった。
[報道陣] ではTTCの、日本のISDNのような特殊事情に配慮しながら、規格をリファインして最適化を図っていくような趣旨には賛同できず、国際標準であるのだからよいのではないかという主張なのか?
[宮川氏] 違う。我々は国際標準でサービスしているが、どこかに基準が必要だと考えており、日本の中に特殊事情があることは理解している。ただ今回のサービスでは、Annex A、Annex C、Annex A.exという切り替えが可能であり、さらにAnnex C.xの規格もサービスできるモデムを使っている。ただ、我々がC.xを使っていないのは、実はどこに国際標準という基準値があって、どこに従って、どうしたらいいのかということが不明確なため。我々としては国際基準のITU-Tを重要視しているということ。
[報道陣] BBテクノロジーのADSLモデムを含む投資額は約870億円ある。うちリース分が360億円ということだが、これだけ投資した上で12MのモデムやDSLAM(局側装置)に投資するのは非効率なのではないか?
[孫氏] 今回の12Mサービスが可能なDSLAMはすでに(Yahoo! BBがサービスしている)局舎の半分くらいに入っている。いま急に始めたのではなく、だいぶ前から極秘に12Mのものを準備していた。DSLAMの投資額の大半は870億円に含まれる。モデムへの投資額は一部が含まれている。
[報道陣] 一部地域でフィールドテストを行なったということだが、今後広い地域でサービスを実施するにあたって、他社のサービスに問題が出た際の対応はどのように考えているか?
[宮川氏] フィールドテストの結果と、ダム環境(回線エミュレーターによる試験環境)での試験結果がすべてだとは思っていない。ただ、規格の中でやっていることであり、サービスするのに違反行為をしているというつもりはない。ただ、日本全国の中には、古い紙巻きの電話線や芯線の細い電話線が想定される。また、集合住宅などでは工事業者によって、品質保証できる回線ではないという場合がある。そのようなときは、ISDN、Annex A、Annex Cも含めて、今後同一カッド内での問題が出てくるようであれば、規格が変更できるというモデムの特性を生かして、Annex CやAnnex Aに切り替えたりといった対策をとろうと考えている。
[報道陣] 仮に他社のユーザーに影響が出た場合、Annex A.ex使っているYahoo! BB側からは、ほかのサービスに影響が出ているかどうかは見えづらいのではないか? なんらかの情報収集を行なうのか?
[孫氏] お客様のほうから申告があった場合には、懇切な対応をしたいと考えている。ただ、自らに対する影響もほとんど出ていないわけで、実際にはそう過敏に心配するようなことではないのではないかと考えている。
[報道陣] Annex A.ex同士以外の干渉についても問題ないのか?
[宮川氏] Annex A、Annex C、ReachDSLなど、我々ができる範囲でのあらゆる組み合わせの干渉状況は試験しており、(問題となるような)干渉は見られなかった。

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