フィードバック制御もしてみたい
ところで、このロボットアームは駆動源としてDCモータを使っている。実はDCモータを正確に電子制御しようとすると、ちょっと面倒なのだ。というのは“位置”や“速度”を制御するためには、フィードバック制御をする必要があるからだ。
“フィード”とは、英語のfeedで“食べものを与える”という意味だが、食べたもの(電流や電圧など)の一部を制御系に戻してやって、現在の変化状態を一定に保つように修正してやるわけだ。
DCモータを駆動するためによく使われるのはトランジスタで組んだブリッジ回路。DCモータに流れる電流の方向を切り替えて、正回/反転させる。DCモータにはエンコーダ(回転位置を検出するためのセンサ)を付け、フォトトランジスタやLEDなどを組み合わせて、回転角度をデジタル信号に変換する(発生したパルスをカウントして、位置と速度を検出する)。
このロボットアームではフィードバック制御までは行っていないけれども、そういったクローズド制御が行えるキットがあればさらに応用の幅が広がるだろう。ぜひ発売して欲しいと思う。
ちょっとだけ改造してみました
というわけで制御の話をしたついでに、もう少しネタを広げてみることにした。フィードバック制御とまではいかないけれど、ステッピングモータを購入して、ロボットをちょっとだけ改造してみる。なぜステッピングモータを選んだかというと、比較的簡単に制御しやすいからだ。怠慢でゴメンなさい。
ステッピングモータは、前述したようなフィードバック制御をしなくても、通常のオープンループで高精度な位置決めができるというメリットがある。名前のとおり、専用駆動回路にパルス(デジタル信号)を入力すると、それに同期してステップ状にモータが回転する仕組みなのだ。
ステップ角度は、モータの仕様や励磁方式により決まる。たとえば、ステップ角度が1ステップあたり0.72°だとすると、ドライブICに5ステップのパルス(デジタル信号)を入力すれば、0.72°×5=3.6°ほどモータが回転するようになる。それほど誤差を考慮しないでもいいような簡単な位置(回転)制御ならこれで事が足りる。
また、ステッピングモータは励磁状態(電流が流れている時)で停止しているときに、大きな保持力(ホールディングトルク)がかかるので、機械的ブレーキがなくても停止位置を保つことができる。
購入したステッピングモータ |
ステッピングモータと制御・駆動回路キットは、秋葉原の秋月電子通商で購入してきたものだ。どちらもだいたい1000円程度。ステッピングモータを駆動させるための専用ICもたくさん売っているが、このキットでは制御ICにワンチップマイコンを使用している。
制御・駆動回路キット。PICマイコンとトランジスタ、定電圧レギュレータ、抵抗、電解コンデンサなどの部品がセットになっている。はんだ付けすれば完成 |
このICは、最近この手の制御系で頻繁に使われるようになった米国マイクロチップテクノロジ社(Microchip Technology Co.) のPICというワンチップマイコンだ。たくさんのシリーズがあって、モータの制御に役立つPWM回路(Pulse Width Modulation)まで内蔵しているタイプもある。
マイコン内蔵のEEPROMを焼くためのROMライターキットや、PIC専用のプログラム開発環境も提供されている。自分でプログラムを組んで、バグフィックスをしながら何度でも書き換えができるので人気があるようだ。興味がある方はトランジスタ技術の別冊でPICを特集しているので、参考にしてみるといいだろう。
組み立てたキットでステッピングモータを動かす実験。ボード上のボタンスイッチを押すとモータが動き出す |
ロボットアームの肩のモータを交換
さて、改造にとりかかろう。ステッピングモータのキットが完成したところで、ロボットアーム肩部のDCモータを取り外し、写真のようにステッピングモータを付けてみた。ギヤとモータのシャフトがうまくかみ合うように、スペーサーをかまして調整する。
さっそくステッピングモータを動作させてみると……。ずずず、腕が静かに下がった。うまくいった! と思ったのだが、今度はモータの回転を逆にして腕をあげてみると……。ガクガクガクと音を立ててなかなか持ち上がらないのだ(苦笑)。
肩部にステッピングモータを取り付けてみた |
改造ロボットで実験。横にステッピングモータ用のスイッチング電源がある |
横からみたところ。スペーサをかまして、ギアのかみ合いを調整 |
まあ、なんとか動くには動くのだけれど、中間ギヤをかましていないため、ちょっとトルクが足りないみたいだ。やっぱりちゃんとトルクの計算とかGD2(慣性)の計算とかをやって、調度いいパワーのモータを選ばないと駄目みたいだ。
そんなわけで成功したのだか、失敗したのだか、なんだかよくわからない歯切れの悪さなのだが、やっぱりこういう工作は年齢を問わず、いくつになっても楽しいものだ。けっこう簡単にできるので、興味のある方は1度チャレンジしてみてはかいかが? PCであんなこともこんなこともできるという、新しい発見があるかもしれませんよ。