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「“企業同盟”がBtoBを変える」――ジュピターのクラーク氏が講演

2000年09月28日 23時18分更新

文● 編集部 小磯大介

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21日に米ジュピター・コミュニケーションズ社と米メディアメトリックス社が合併して誕生した米ジュピター・メディアメトリックス社(Jupiter Media Metrix)は28日、都内で講演会を開催した。講演したのは、同社のティム・クラーク(Tim Clark)シニアアナリスト。同氏は、“いかにBtoBが世界を変えるか”という題目で、米国ならびに世界のBtoB市場の現状、ならびに今後の動向について語った。

クラーク氏

オンラインBtoB取引の今後

講演を開始したクラーク氏はまず、米国におけるオンラインBtoB市場規模について、同社による調査結果を公開。これによると、サービスを含まない、製品販売のみの市場規模は2000年の段階で3360億ドル(約36兆1536億円)で、これが2005年には6343億ドル(約682兆5068億円)にまで拡大するという。また、「2000年の段階では、その大部分が企業間の直接取引で、仲介業者を介した取引はほとんどない。しかし2005年には、直接取引ではないBtoBの形態である、仲介業者を介した“ネットマーケット”が、取引全体の35パーセント程度を占めるようになる」との見解を示した。「直接取引を行なう独立系のBtoB企業はやがて衰退し、ネットマーケットが主流になる」という。

現在、企業間取引の市場では、直接取引や、EDI(Electronic Data Interchange)が主流である。だが、これらの取引では、買い手“バイヤー”と売り手“サプライヤー”はお互いに散り散りで、取引を行ないたい場合にはお互いを探し合う必要がある。たとえば、性能の良い、大量の自動車を安く導入したい企業は、自分たちの眼鏡にかなう企業を求めて、世界中の自動車メーカーに見積もりを出さなければならない。これに対しネットマーケットでは、ウェブ上に文字通りマーケットを開き、仲介業者を立てて、バイヤーとサプライヤーをそこに集約させる。これにより、ネットマーケットに集まる企業は、サプライヤー/バイヤーを探す手間を省き、売買に至るまでのコストを削減することができる。

企業同盟――コーリションネットマーケット(Coalition Net Market)

そして「いま、米国内で最も注目を集めているのが、ブリック&モルタル型(※1)の大企業が共同して、あるいは大企業が中心となって立ち上げるネットマーケット“コーリションネットマーケット”である」とクラーク氏はいう。“コーリション”(Coalition)とは“同盟”“提携”などという意味。これまで直接のライバル関係にあったような企業同士が、いっしょに仲介業者を立ち上げ、ネットマーケットの恩恵を受けようと同盟を結んだものが、コーリションネットマーケットであるというわけだ。ネットマーケットとコーリションネットマーケットの大きな差は、大企業による協業かどうかである。

※1 ブリック&モルタル(Brick & Mortar):重厚なレンガ造りの本社を構えていることが多い、米国の従来型企業を指す言葉

先ほどの自動車の話に戻ると、自動車を仕入れたいバイヤーは、コーリションネットマーケットにアクセスする。そうすれば、同マーケットに参加するライバル企業同士による競争の結果、各社に見積もりを出すまでもなく、安くて良い自動車を導入できる。一方サプライヤーの側も、大企業の集合体であるというブランド力でバイヤーを集められるので、バイヤーを探すコストを削減できる。また、自社の支店などがない場所であろうと、世界規模でバイヤーを獲得可能だ。なお、自動車産業界では実際に、米国自動車業界大手3社(米ゼネラルモータース社、米フォード社、米ダイムラー・クライスラー社)が、コーリションネットマーケット“Covisint”(コヴィシント)を運営している。

米国内ではCovisintのほか、各業界でさまざまなコーリションネットマーケットが立ち上がっていて、60~70社が追従してきているという。

問題点は、そして日本では

コーリションネットマーケットの抱える問題点は「長年ライバルだった企業がどうやって協調関係を結ぶのか」。マーケットのCEO(最高経営責任者)はどの企業が出すのか。運用はどこが行なうのか。出資はどこがするのか。名前はどうするのか。たとえば、「Covisintは、まだCEOを任命できていない」という。

また、同氏は「コーリションネットマーケットという取引で成功するには、複数のコーリションネットマーケットに参画し、リスクを分散し、各所から恩恵を受ける必要がある」と指摘した。「大企業がしのぎを削るような業界で、たったひとつだけが勝者になれるだろうか?」と疑問符をつけた同氏は「まず、1業界でコーリションネットマーケットのインフラを整える。そして、そのインフラを別のマーケットで展開する。これが成功への道程だ」と強調した。

日本におけるコーリションネットマーケットの展開については「伊藤忠商事(株)、丸紅(株)、三菱商事(株)、三井物産(株)などの商社が中心となるだろう」と予測。実際に、これら商社は、米国のコーリションネットマーケットに参画しているとも指摘した。また、「日本の大企業は、インターネットビジネスを取り込みつつ、現在のビジネスを守ろうとしている。しかし、インターネット関連の技術は、一瞬でものごとを変えてしまう破壊的な技術」とするクラーク氏は、守ろうという意識が強すぎる企業は衰退するとし、世界的な企業同盟の流れは不可避だとした。

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