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【INTERVIEW】第3の伝説を作るモバイルマシン──ThinkPad X20に迫る(1)

2000年09月16日 12時34分更新

文● 編集部 小林久

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日本アイ・ビー・エム(株)のB5ノート『ThinkPad X20』を8月末に発表した。ThinkPad X20は、薄型の精悍なフォルムが印象的なB5ノートで、筐体には、本体底面にマグネシウム合金、パームレストにCFRP素材、天面にチタン配合のCFRP素材と3つの素材を使い分けている。幅279.4×奥行き226.8×高さ26.9~30.2mmというサイズ、約1.5kgの重量に、数値的に飛びぬけた部分はないが、ひとたびマシンに触れれば、そのバランスの良いスペックと操作感に誰もが納得できるはずだ。

CPUは、モバイルCeleron-500MHzまたはPentiumIII-600MHzが用意され、12.1インチのXGA表示可能なTFT液晶ディスプレー、18.5mmピッチ/2.5mmストロークのフルサイズキーボードを装備する。また、X20は同社が5月に発表したThinkPad A20シリーズ、同T20シリーズのとオプションが共通化されており、B5ノートとしてはかなり高い拡張性を持っているのも特徴のひとつだ。

ThinkPad X20の設計/開発は、神奈川県・大和市にある同社の東京総合研究所で行なわれ、日本市場の意見が存分に反映されている。編集部では、このThinkPad X20の開発に携わったメンバーに対するインタビューを2回に分けてお届けする。第1回目の今回は、製品企画を担当した同社PS製品 モバイルコンピューティングの北原祐司氏にお話を伺った。

ThinkPadのブランドマネージャーを務める北原祐司氏

カバンに縦に入るPCのベストを目指した

[編集部] ThinkPad X20について聞かせてください。
[北原] できるだけニュートラルな気持ちで入ろうということで、既存にあるマシンを一切考えないようにしたのが最初です。どのラインナップかではなくて、“持って歩ける重さ”の限界はどこかと言う点から単純に入っていった。うちの会社の面白いところは、マーケッティングが要望を挙げて、開発がそれを満たす方針を取っている点。となりに技術者がいて、できるできないで話を進めているわけじゃないんです。

いろいろな選択肢があって、どうするかというときに、僕らは1台のノートパソコンで全部やりたいと思った。オフィスの環境で使っていて、毎日のメールを確認しているマシンを、そのまま持って歩いて、ほかの事業所で使うことを想定して、一番使いやすいものを作ろうと思った。

そのときは、世界で一番薄くなくてもいいし、一番軽くなくてもいいけど、とにかくカバンの中にスッポリと収まるやつがほしい。それからキーのタッチがしっかりしていて、いつものカバンに縦に入る大きさで一番パネルを大きくしてほしい。しかもXGAで。というのが僕らのリクエストなんです。で、重さはどうしますかという話になって、2kgは困るよね、じゃあ1.5kgくらいって。スペック的には1.49kgという数字が出ています。
[編集部] 手に持つと軽く感じますね。最近のマシンでは決して軽いほうじゃないですが。
[北原] 理由はバランスと剛性の高さです。持ってもらえばわかるんですが、バッテリーのサイズを均等にしたし、重さも左右均等にしました。いろんなことを考えてるんです。
本体は非常に薄型で、手に持った際のバランスもいい
[編集部] コンパクトフラッシュスロットも特徴的ですね。
[北原] 僕たちはマイクロドライブを持ってますし、PCカードはコンパクトフラッシュにリプレースされると以前から思ってたんです。そこで、可能ならぜひとも入れてくれと頼んだんです。実際は、PCカードはまだまだなくせないし、かといって、CFをつけるのにアダプターを使うのも違うと思った。じゃあ両方つけようかと考えたわけですね。
[編集部] 使い勝手は非常にいいですね。
[北原] Windowsのノートで、コンパクトフラッシュがそのまま差せるマシンはあんまりないんです。もしかしたら初めてかもしれない。でもCEマシンでは標準搭載されていて、見てみると数多くの周辺機器が出ている。そして、みんなWindowsのドライバーを持ってるんですね。あ、これはいけるなと思ったんです。
本体左側面にはCF TypeIIのスロットを搭載
[編集部] 確かにマイクロドライブやP-in Comp@ctのような通信機器とか周辺機器は揃ってきましたね。
[北原] X20にはEthernetが標準搭載されるので、LANにつないだ状態でPCカードも使える。実際、拡張性はかなり高いですね。
X20と同時に1GBのマイクロドライブとBluetooth対応PCカードが発表された

ユーザービリティーがキーワード

[編集部] 今回、Bluetoothモジュールも一緒に出されましたが。
[北原] まずは、パソコンとパソコンのファイル共有ですね。LANの代わりというイメージです。将来的にはBluetoothモジュールの内蔵も考えないといけないのでしょうが、次の段階では、ウルトラポートに付けるオプションをやります。天面をマグネシウム合金にしなかったのは無線の干渉を防ぐためです。チタンは剛性が高くて、カーボンなどに比べていいので採用しました。
[編集部] パームレストはカーボンですが。
[北原] パームレストは、やらかくないと液晶をだめにしてしまうんで。そういった意味では、TrackPointに関しても考えてますね。当初は600のようになだらかに膨らんでたんですが、テストで液晶が全部傷ついたんで平らにしました。スクロールボタンは、もう一段手前にすると、パームレストがなくなってきて手を置く場所がなくなる。また、キーボードよりにあれば腕を動かさなくて済みますよね。
スクロールボタンの位置を変更した拡張版TrackPoint
[編集部] いい位置ですね。
[北原] 僕は腕を下げて使う癖がついてたんで、最初は違和感があったんですけど、今はもう慣れて普通に使えますね。手元を見ないでわかるようにスクロールボタンにイボイボもつけてますし、これでボタンの右左もわかる。このほかにも、ESCとF1の間に仕切りを一段高くして入れて、どっちを打ったちゃんとわかるようになってます。カーソルキー手前のへこみなんかもそのひとつですけどね。
[編集部] ThinkPadボタンが用意されてますが。
[北原] ここを押すとオンラインヘルプシステムが立ち上がる仕掛けになってます。Windowsの機能はコントロールパネルやシステムのプロパティーとかに分散しててわかりにくいですよね。そこで、ThinkPadの操作はここをたどっていけば、すべてわかる仕組みにしているんです。ヘルプがコンピューター上にあるということは、動画も使えるんで、バッテリーとかメモリーの増設とかそういうものはアニメで手順がわかるようにしています。経験のない初心者に口で言ってもわかってもらえないことを非常にわかりやすく説明してくれるわけです。しかも、どこに行ってもそれが見られる。本体プラスマニュアルを持ち運ぶ感覚ですね。
ThinkPadボタン。コンシューマー向けのi Seriesとは若干キーの構成が異なる

ウルトラベイによる拡張性

[編集部] 企業向けのマシンですが、かなり親切ですね。
[北原] 僕は基本的にビジネスもコンシューマーも同じコンセプトで作れると思ってるんです。X20とi Series(ThinkPad i Series 1620)で違うのはアプリケーション起動ボタンの並びと本体の色。それから1394ポート。あとは添付されているソフトウェアと下につけるウルトラベースが標準で付いている点だけです。X20では、ポート類をかなりシンプルにしたんですが、オプションでウルトラベースを買えば、シリアル・パラレルなんかは残ります。
[編集部] 今後はすべての機種にウルトラベース系のコンセプトでいかれるんですか。
[北原] 必ずしもそうではないですね。今回、何が一番便利かというと、本体の裏面にベイ用のコネクターを残していて、これが従来機のThinkPad A20やT20と共通である点なんです。オプションの互換性もあって、企業なんかで周辺機器を共有している場合、AでもTでもXでも持ってきてガチャンと接続できる。LANや電源も付いてるんで、知り合いの席とか出張先にもマシンだけ持っていけば、今までと同じ環境で仕事ができる。PCカードやLANケーブル、ACアダプターなんかをわざわざ持ち運ばないでもいいんです。
ウルトラベースX2。ドライブはCD-ROMドライブのほか、HDDやDVD-ROMドライブに変更可能
[編集部] 会議室なんかに置いといて、自由に使うイメージですか。
[北原] ええ。ビデオポートまでついてますからプロジェクターをつなげばプレゼンだって可能です。それから、このコネクタは本体のセカンダリーIDEに直接つながる仕組みになってるんで、HDDとかCD-ROMドライブとかをつないで、そこから起動することもできます。
[編集部] バックアップなんかも取れるんですか?
[北原] 私なんかは、ここにセカンダリーのHDDをつけて、ユーティリティーで丸ごとHDDの内容をコピーしてますけどね。もし、データだけをコピーしたいんだったら、スタートアップの中にコピーコマンドを入れておいて、起動するたびにバックアップするようにすればいい。IDEで直接つながってるんで速いですよ。
[編集部] A20やT20のスライサー(後ろにつけるタイプのポートリプリケーター)をつけた場合はどうなるんですか。
[北原] 後ろが浮いてやや斜めになりますね。キーボードが打ち易くなるし、放熱の面でもかなり有利になるんです。
[編集部] よく考えられてますね。
[北原] ええ、かなり真剣にやってる部分ですね。
スライダーは従来機のA4ノートAシリーズ、Tシリーズと共通

ThinkPad X20は新しい伝説を作るマシン

[編集部] ThinkPadには思想があるように感じるんですが。
[北原] 進化することは常に考えているけれど、基本的には変わらないものがありますね。だから、昔のマシンでもそんなに大きくは変わらない。たとえば液晶のフレームは常に貝殻のように覆いかぶさらないといけないというのが設計上決まっていて必ず守らないといけない。パンパンに詰めたカバンに入れてもねじれないようにするためです。X20では格好よくしたかったんで、ヒンジの方向に向かって斜めにカットして下に行くにしたがって薄くなるようにしていますけど。

また、米国ではヒューマンファクター(人間工学)を研究しているところがあって、白を正しく見せるには、何ルクスの光の下でどの光を出すのが人間の目にとっていいのかとか、そういうことを研究している。そのフィードバックを受けて、液晶はどうしようかといったことを考えてるわけです。だから2年とか3年とか長期間うまくThinkPadを使えた経験を持つ人は、IBMのファンになってくれるんです。
[編集部] モバイルノートはどう変わってくると思いますか。
[北原] 軽くなる、薄くなる。金物が減ってくる関係でコンパクトになる。これまでのモバイルノートは、パフォーマンスの劣る2台目のマシンという感じでしたが、そういう時代じゃなくなってきたと思いますね。CPUだってモバイル向けで700MHzを超す時代ですし、数値的にデスクトップとかなり接近している。メールの量なんかも桁違いに増えてきて、外でも早くみたい。また、机と同じ環境を肌身はなさず持って歩きたい。そんな1台目のマシンとして、机の上のマシンを置き換えるだけの力を持っていると思いますよ。
[編集部] ThinkPad X20はB5ノートということですが。
[北原] 基本的になくなるのはThinkPad 570なので、順番から考えるとその後継という位置付けになる。しかし考え方としては、まずIBMはミニノートとしてまずA5サイズのThinkPad 220を'93年に出しました。そして次に'96年にA4サイズで薄型のThinkPad 560を出した。220は小さくて軽くて、マグネシウムを使って、このサイズでもこれだけできるということを見せようと思った。560を機能を犠牲にせず携帯性を重視したモデルとして出した。X20はこの両方でできなかったことを、いくつかメインとして持ってきたマシンです。

その意味で、ThinkPad X20は第3世代のモバイルマシンとして新たな伝説を作るマシンと言えるんじゃないでしょうか。
ウルトラポートには、CCDカメラなどを装着可能

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