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【Seybold San Francisco 2000 Vol.8】今後20年間の印刷業界の見通しとは?

2000年09月07日 19時19分更新

文● 水無月 実

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“Seybold Seminars”レポートの最後は、“The 20-year View”と題するキーノートと、“Publishing Strategies Conference”の冒頭に行なわれた“Visions of the Future”と題するキーノートからである。いずれも、将来像を探るためのビジョンを紹介したものである。

“The 20-year View”にはゼロックス社パロアルト研究所Cheif Scientist and DirectorのJohn Seely Brown氏、サンマイクロシステムズ社Cheif Researcher and DirectorのJohn Gage氏、アドビシステムズ社Chairman of the Board、CEO and CofounderのJohn E. Warnock氏、そしてInstitute for the FutureのDirectorであるPaul Saffo氏が登場した。

“The 20-Year View”に登場したスピーカーたち。左端は司会者、左2人目からゼロックスのJohn Seely Brown氏、サンマイクロシステムズのJohn Gage氏、アドビシステムズのJohn E. Warnock氏、右端がInstitute for tee FutureのPaul Saffo氏

ピクセルが染み込んだ布――“デジタルペーパー”

このキーノートでは、さまざまなスタイルでプレゼンテーションが行なわれた。その中で強調されていたことは、コンピューターとインターネットで変化する将来の世界像だった。Seybold Fundationの創設者、Jonathan Seybold氏が印刷業界に向かって情報を発信し始めてから、今年で30年になる。しかし、これまでの30年に比べて、今後の20年間に世界はさらに大きく変わる。

新しいマン・マシン・インターフェースの将来を解説するサンマイクロシステムズのJohn Gage氏

今後の変化で象徴的なのは、やはりコンピューターと人間のあいだにある距離感がなくなることである。今後、コンピューターのインターフェースは進化を続け、人間の感覚に更に近づく。つまり、人間とコンピューターがもっと直接的に向かい合い、シームレスな関係になるという。インターフェースの進化は、ついには人間と人間の間にある距離を消し去ることにもなる。

その進化の過程として、ゼロックス社は“デジタルペーパー”を開発している。今回はその機能を知ることができなかったが、John Seely Brown氏が手に持っていたデジタルペーパーは外見上は普通の紙と変わらなかった。しかし、彼はこのデジタルペーパーをピクセルが染み込んだ布と説明する。つまり、この紙の表面は全部がコンピューターのスクリーンのようなものである。

デジタルペーパーを手にデバイスの将来を解説するゼロックスのJohn Seely Brown氏

また、電子出版の世界では読書のコンテンツが現在のコンピューターのスクリーンから、Palm Pilot、さらには短いものは携帯電話のパネルで読めるようになる。しかし、読書のコンテンツがさらに普及するためにはデジタルでの権利保護が問題となる。将来的には、政府レベルで音楽、書籍やWebのさまざまなコンテンツを保護するべきだろう。今後、コンテンツの権利関係を上手く処理することが、Web文化発展の鍵となる。

印刷の分野でのインターネットの影響

“Visions of the Future”と題されたキーノートでは、Backweb Technologies社Chairman and CEOのEli Barkat氏、Digital Deliverance LLC社President and Managing PartnerのVin Crosbie氏、Seybold PublicationsのInternational EditorであるAndy Tribute氏が登場した。

このキーノートでは“印刷の分野”にもインターネットの影響が大きくなっていることが強調された。これまでは大規模な投資の上で独自性を保ちながら成り立ってきた印刷業界である。しかし、これからは他の産業と同じように、Webの影響を受け、大きく変革するだろう。すでに、欧米の商業印刷ではインターネットが当然のものとなり、インターネットの世界に傾倒し始めている。そこではインターネット(Web)を使った協業体制が確立し始めている。そのために、これまで小さな規模でしかなかった市場も大きな規模に拡大している。もちろん、その変化に追随していけない消極的な印刷会社は淘汰されている。

新しいデジタル化の社会像を紹介した、Digaital Deliverance LLC社のVin Crosbie氏

さらに新聞の読者は減りつつあり、雑誌の発行部数も少なくなっている。雑誌の市場もさらにニッチになっている。従来から印刷物の制作には多くのコストが必要であった。それがインターネットを活用することで、他の電子媒体を通じて、より迅速に低コストで効果的な情報配信が可能になった。その結果、どうしても印刷物でなければならない物を除いて、情報伝達の手法がインターネットと電子媒体に移行し始めている。

印刷業界の将来を語るSeybold PublicationsのAndy Tribute氏

携帯電話、携帯型のPDAが注目の端末に

今後は携帯電話、携帯型のPDAが注目の端末である。これらの端末へのカラー画像を含めた情報提供サービスが進んでいる。

これまでの発展形態はハードウェアの進歩を中心としたものであった。そのため、変化が進行していることも、人々の目に付きやすい。しかし、これからの変化はインターネット、Webの活用など、ソフトウェアとコンテンツを軸とした物となる。ここでは、そこに直接関わっている人間はともかく、それを外部から眺めているだけでは、その変化に気付かないこともある。突然、その変化の結果が目の前に現われることもあるだろう。

インターネットの新しいソリューションを紹介した、Backweb Technologies社のEli Barkat氏

しかし、このような急速な変化はそう簡単には進まないという考えもある。テレビがラジオや映画を消し去れなかったように、飛行機が電車を消し去れなかったように、インターネットも印刷物をなくして、それに代わることはできない。やはり、印刷物は効率的な情報伝達手段であり、それは将来も残るだろう。何より急速な変化の妨げになるのは、人々の安定(これまでと同じ生活)を望む心であろう。

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