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ベンチャーの育成を目指す“ベンチャー2000 KANSAI”開催(その1)

2000年09月06日 11時47分更新

文● 服部貴美子 kimiko@oct.zaq.ne.jp

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去る9月4日と5日の2日間に渡り、関西広域連携協議会や日本経済新聞社などの共同主催による、ベンチャー企業の育成と進行を目指した複合イベント“ベンチャー2000 KANSAI”が開催された。

“ベンチャー2000 KANSAI”。大阪・中之島の大阪国際会議場で開催

日米のベンチャー企業経営者が講演を行なうほか、台湾などアジア各地からも起業家やベンチャーキャピタリストを招くなど、オリンピック招致を目指す大阪らしく、国際色豊かなプログラムとなった。

会場は、大阪・中之島の大阪国際会議場(グランキューブ大阪)。本稿では、4日のオープニング直後に行なわれた、京セラの稲盛和夫取締役名誉会長と米国ゾラン社のレビー・ゲルツバ-グCEOによる基調講演の模様をお伝えする。

APO(アジア生産機構)関連ほか、アジア各国の経済人を含め、企業経営者、ベンチャーキャピタル、学生など一千数百名が訪れる盛況ぶり
オープニングセレモニーには、太田房江・大阪府知事も登壇。起業率が廃業率を下回るという状況に陥った大阪では、府と市の垣根をこえた産業支援策が求められている

起業家の社会的地位の低さがベンチャー育成を阻んでいる

“新産業創出”をテーマに行なわれた基調講演で稲盛氏は「新しい産業を育てることは、国の命運を決めるほどの非常に重要な課題である」と強調。特に、京セラが年間3億円というファインセラミックス市場をつくるにいたった過程にも、アメリカで生まれたトランジスタ技術という“一粒の種”が、フェアチャイルド社によって成長の機会を得たという経緯があったことについて触れ、「企業経営者の地位が、大企業の社員に比べて低いという日本社会の風潮の下で、ベンチャーを育てようとしても無理。まず、社会的なインフラを作ることが大切」と述べた。

社会的な基盤が整ったことを前提に、稲盛氏は「独創性があることはもちろん、意外かもしれないが、細心で緻密な行動をとれる人が起業家として成功すると思う」と分析。加えて、「起業の目的を明確に打ち出すことによって、賛同者を得ることが大切」と語った。現在は、日本でもベンチャーキャピタルの存在が大きくなり、さらにマザーズやナスダック・ジャパンといった新しい株式市場からの資金調達(直接金融)の道も開けており、資金面での心配は軽減されている。しかし「IPOが始まりであることを忘れずに株主に対する恩返しができるようにして欲しい」と、まず資金調達ありきという風潮にも警鐘を鳴らした。

最後は「事業を一生涯の天職と考えられる人を育てるためには、社会の成功者が後輩に手ほどきをし、尊敬される存在になること。それが起業家の社会的ステイタスのアップにもなる」と、魅力的な起業家像を確立することの重要性について繰り返した。

フェアチャイルドからスピンオフした人材が、インテルなどの有名メーカーをつくりあげたことについても触れた稲盛氏

日本で一流の起業家が育つためには、政府や大企業の意識改革が不可欠

稲盛氏に続いて登壇したのは、米国のIT関連ベンチャー・ゾラン社の最高経営責任者(CEO)である、レビー・ゲルツバーグ氏。自社のソフトウェア部門の売却など、自らの経験談を交えながら、新しい産業が開花するための4つの要素――スピード、グローバルリーチ、リスクテイキング、ベンチャーキャピタルについて説明した。

ゲルツバーグ氏の経営する“ゾラン社”の社名は、ヘブライ語でシリコンの意味。「中国語では“卓然”と書き、卓越した、という意味をもつと後で知り、中国でもビジネスを始めています」とジョークをとばした

'80年代前半に創業したゾラン社が、'95年にはナスダックにIPOを果たし、現在は時価16億ドルの起業へと成長したポイントについて、ゲルツバーグ氏は「どの事業に力を入れるか絞り込むかを決めた上で、パートナーを世界に求め、必要なテクノロジーをもつ会社を買収していったこと」などを挙げた。さらに、「それらの行動や決断において、スピードが勝負のわかれ目になりうる」と強調。また、優れた技術力とベンチャースピリッツをもつイスラエルとのマッチングや、スピンオフからのスタートアップ、M&A、ハンズ・オン型のVCの台頭など、米国で起こったムーブメントのいくつかが、日本にも起こりうると示唆する。

ただし日本には、税制、大企業志向、ローカル化など、成功への障壁があるのも事実。「ノウハウや人材、VCはあるのだから、チャンスは十分ある。提携案について、小さな企業から大企業に申し入れてみるといったチャレンジも必要なのでは?」と中小ベンチャーをは激励するとともに、政府が障壁を取り去る努力をし、大企業もリスクの大きいスタートアップ時に投資をするといったサポート体制も必要であると指摘した。

午後からのシンポジウム“関西・アジアの牽引役に”において、日本電産社長の永守重信社長が、「大企業がリストラをするなら、気力が残っている35歳前後の優秀な社員を出すべき。50歳を過ぎてからでは意味がない。30代からなら、良い経営者として育つ可能性もある」と発言。それを受けて、司会者から「日本電産に若手社員を出してみては」との質問を投げかけられた、大阪ガスの領木新一郎会長が「私はいいです。が、社員が何というか……」と答え、参加者からも苦笑がもれる一幕も。奇しくも、起業についての“意識改革”の必要性を裏付けるかたちとなった。

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