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【KNN特約】 新たなコンテンツ市場に期待を感じさせた“Macromedia International User Conference99”レポート(速報)

1999年05月31日 00時00分更新

文● KandaNewsNetowork 神田敏晶

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25~27日(米国時間)の3日間に渡り、米マクロメディア社主催による“Macromedia International User Conference99”が、サンフランシスコ・モスコーンコンベンションセンターで開催された。今回で9年目となるこのユーザー・カンファレンスには、カンファレンス登録者が約2000名、展示会来場者が約1万名、訪れた。

“Macromedia International User Conference99”が開催されたサンフランシスコ市モスコーンコンベンションセンター
“Macromedia International User Conference99”が開催されたサンフランシスコ市モスコーンコンベンションセンター



豪華なキーノートスピーチと、多彩なコンファレンス

キーノートのゲストには、米アメリカオンライン社(以下AOL)のチーフ・テニクニカル・オフィサーのマーク・アンドリューセン氏やアットホームネットワーク社のCEO、トム・ジェフモルク氏らが登場した。

マーク・アンドリューセン氏のキーノートでは、AOLでの新展開などの発表はないまでも、プライバシー、広帯域、インターフェース、コンテンツ、アルゴリズムなど、それぞれの将来のビジョンについて述べた。息をつく間もなく語り続ける約1時間の講演であった。

「さまざまなテクノロジーが、複雑になるのではなく、今後はさらにシンプルさを目指し、融合しあい、情報弱者に対しても、さらに使いやすさを提供していかなければならない。新しい技術や端末、そしてコンテンツが登場するが、常にそれらがもたらす影響と機会を我々は注意する必要がある」と説明。技術の話というよりも、むしろインターネットのもたらす社会観についての話がメインとなった。アンドリューセン氏は、1つの時代を象徴する人物。その彼が新たなメディアに対してのリテラシーについて語りはじめたこと自体が、非常に興味深いことでもあった。

大きな体を駆使してプレゼンテーションするAOLのマーク・アンドリューセン=チーフ・テニクニカル・オフィサー
大きな体を駆使してプレゼンテーションするAOLのマーク・アンドリューセン=チーフ・テニクニカル・オフィサー



コンファレンスは、3日間で82セッションを開催。マクロメディアの最新技術に関する情報が同時多発的に各ホールでレクチャーされた。特に今回発表されたばかりの『Flash4』のセッションは、足の踏み場がないほどの大盛況。MP3の対応以外は、地味な『Flash4』の新機能を少しでも深く体験すべく、多くのユーザーが集まった。

Flash4のカンファレンスでは、プレゼンテーションソフトも当然、Flash4を駆使した多彩な表現が見られた
Flash4のカンファレンスでは、プレゼンテーションソフトも当然、Flash4を駆使した多彩な表現が見られた


マクロメディアのコンテンツビジネス事業戦略shockwave.com

今回のユーザーカンファレンスの1番の目玉は、『Director』のアップグレードでもなく、『Flash4』のMP3対応でもなく、マクロメディア社のコンテンツビジネス事業としてのshockwave.comそのものであった。

近日公開予定のshockwave.comは、マクロメディアのコンシューマー・エンターテインメント・ビジネスに参入するためのコンテンツ事業会社。CEOには、元米ウォルトディズニー社のステファン・フィールズ氏が就任。shockwave.comは、プロのツールを一環して販売し続けたマクロメディアのコンテンツ事業への本格的な参入事業となる。Shockwaveコンテンツを“検索”、“送信”、“保存”などのコントロール機能を持たせた“Shockwave Remote”(無料)と、さらに“無制限保存”、“パーソナライズ”、“エクスクルーシブ”などの機能を搭載した『Shockmachine』(19.95ドル。約2400円)を来月中にラウンチ予定である。

そのshockwave.comのスニークプレビューが2日目に実施された。プレゼンテーションは、すべて米国で間もなく公開予定の映画、オースティンパワーズの'70年代の雰囲気で進められた。エンターテインメントを非常に意識したプレゼンテーションだ。

超満員となったshockwave.comスニークプレビューの会場
超満員となったshockwave.comスニークプレビューの会場



「shockwave.comの豊富なコンテンツは、『Shockmachine』などによって、インターネット上に新たなエンターテインメントのブラウザが提供するようなものだろう」とマクロメディアのプロダクトマーケティングバイスプレジデントであるトム・ヘイル氏は語る。その言葉に嘘がないと確信できる3Dのコンテンツやインタラクティブなコンテンツがスニークプレビューを飾る。一インターネットの新技術であったShockwaveが、ビジネスモデルとしての事業としてターニングポイントに立ったことが象徴されるプレビューでもある。

“ワーロック”や“トータルディストーション”などのエンターテインメントコンテンツで知られるジョー・スパークス氏は、今回のshockwave.comで“ネットワーク・アルバム”を披露した。

ジョー・スパークスも、もちろんオースティンパワーズ調で登場する
ジョー・スパークスも、もちろんオースティンパワーズ調で登場する



“ネットワーク・アルバム”は、グリーティングカードを自由に作ることができるコンテンツ。壁紙を変えたり、額を変えたり、手許にアプリケーションがなくてもshockwaveだけで多才な表現ができるネットワーク型のアプリケーション。さらに“チャットポーカー”もチャットをしながらポーカーができ、しかもポーカーフェイスを自由に選択することもできる新しいネットワーク型のゲームとなっていた。まもなく公開されるそうなので今から非常に楽しみだ。

“ネットワーク・アルバム”は、さまざまなDTP的な処理をインターネット上で構成できるアプリケーション的なコンテンツ
“ネットワーク・アルバム”は、さまざまなDTP的な処理をインターネット上で構成できるアプリケーション的なコンテンツ



“チャットポーカー”では、ポーカーフェースを装いながらのチャットに興じることができる
“チャットポーカー”では、ポーカーフェースを装いながらのチャットに興じることができる



さらに、マクロメディアの最新技術のデモでは、PDA『Palm V』で動作するFlashバージョンなど、新たなプラットフォームへの意欲的な移植の成果も披露する。このスニークプレビューで、マクロメディアがプロをターゲットとしたツール販売だけではなく、コンテンツのディストリビューションとインフラを兼ねる新たなコンテンツ市場への挑戦を確信することができた。

フィナーレは'70年代の衣装でエンジニアが大集合。彼らはユーザーの意見に深く耳をかたむけている
フィナーレは'70年代の衣装でエンジニアが大集合。彼らはユーザーの意見に深く耳をかたむけている



展示会の中でも群を抜いた新製品、『カノマ(CANOMA)』

今回のユーザーズカンファレンスの展示会場では、デベロッパーからコンテンツ提供者の出展があったが、クリエイターツールを提供する米MetaCreations社は写真から3Dムービーを作成できる『カノマ(CANOMA)1.0』をリリースした。

この『カノマ1.0』は、写真の上に立体のモデリングを設置するだけで、パースペクティブを自動的に計算し、2Dを擬似的に3Dで表現するソフトウェア。パノラマ写真ではなく、2次元の世界に奥行きをつけ、擬似的に3次元にするもの。たとえば、角度が異なる2枚の写真を合わせるだけで、3Dに表現することができる。しかも、それらが標準で用意されたボックスを設置するだけで堪能できる点が非常に評価できる。動画のウオークスルーモードやQuickTimeエキスポートなどの機能がある。Mac版Win版共に価格は499ドル(約6万円)。日本語版も間もなく登場ということ。

『カノマ(CANOMA)』は2Dの写真を3Dにするための疑似ソフトウェア
『カノマ(CANOMA)』は2Dの写真を3Dにするための疑似ソフトウェア



展示会場の隣は、ランチ専用の会場として場所が大きくとられている。昨今の高額なカンファレンスで注目したいのは、主催社側のプレゼンテーションや展示会、セミナー以外の企画。このユーザーカンファレンスでも、参加者同志が懇親を深めるために、フルサービスのランチメニューが用意された。テーブルクロスは赤・青・白などと色分けがなされ、クリエイター、プログラマー、流通関係社などとテーブルが指定された。それぞれが隣あった人と食事を共にしながら親睦が深められるよう設計されている。

人と人とが出会える場所としてのカンファレンスにはこのような空間が必要なのかもしれない。もちろん費用はすべてカンファレンスの参加費用にインクルードされている。

初対面の人同志でもランチタイムの間に情報交換が盛んに行なわれる
初対面の人同志でもランチタイムの間に情報交換が盛んに行なわれる



マルチメディアのリーディングカンパニーとして君臨してきたマクロメディアがいつまでもその座を守りぬける保証はどこにもない。しかし、ユーザーとともにウェブビジネスを常にアクセラレートしようとする企業としてのスタイルを常にあらわす場としてのメディアがこのユーザーカンファレンスにあるのは明確だ。商品だけをメインに展示する日本のプライベートの展示会とはかなり様相がちがう。しかも今回で9年目という長丁場に渡りユーザーと連携をはかろうとするマクロメディアの姿勢から学べるものは非常に多いと思う。

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