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【INTERVIEW】デジタルカメラ用OS『Digita』が新たなステージに--初来日の米フラッシュポイント社CEOに聞く

1999年04月27日 00時00分更新

文● 聞き手/文/写真:アスキーDOS/V ISSUE編集部 小林久

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昨年4月に登場した汎用のデジタルカメラ用OS『Digita』。その開発元である米FlashPoint Technology社は、20日、同OS上で動作するフォトレタッチソフト『Digita FX』と電子メールソフト『Digita Post』を発表した。さらに同社は、ユーザーの撮影したデジタル画像を、インターネットを経由して、最寄りのプリントサービス店(*)から好きなときに出力するサービスなど、インターネット上でデジタル画像を活用するためのインフラ作りにも注力していく方針である。

デジタルカメラの可能性に挑戦するDigitaについて、FlashPointの最高幹部に伺った。記者会見のため来日した同社の社長兼CEOデビット・プラット(David B. Pratt)氏と、創業者でセールス・マーケティング担当の上級副社長を務めるステファン・セイラー(Stephen D. Saylor)氏とである。

(*)米国では、すでに"KINKO'S"など、パソコンや出力機を自由に使えるビジネスコンビニエンスストアがかなり普及している。

いつでもどこでも誰でも、そしてパソコンがなくてもというのがキーワードに

--貴社は撮影した画像を加工したり、インターネットで送信するといったことを、パソコンなしで実現するアプリケーションを発表しました。ノンPC環境でのデジタルカメラの利用についてどうお考えになりますか?

プラット「エンドユーザーの反応を聞くと、彼らにとってデジタルカメラは、あくまでもカメラであるということがわかります。デジタルカメラを、複雑な操作を必要とするパソコンと一緒に使わなければならないというのではマイナスなのです」

記者会見でFlashPointのインターネット戦略について説明するDavid B. プラット氏
記者会見でFlashPointのインターネット戦略について説明するDavid B. プラット氏



プラット「そんな中、撮影した画像を加工できるというデジタルならではの楽しみを複雑な操作なしに利用できることが必要だと感じました。それが『Digita FX』を開発した背景です」

セイラー「昨年、あるカメラ量販店でヒアリングテストを行なったところ、デジタルカメラを購入しない理由のトップは"パソコンを持っていないから"というものでした。われわれが目指すのは、写真を楽しめるシステム作りです。非常にインテリジェントな機能を持つが、ユーザーに複雑さを求めない。これが、今後求められるポイントとなるでしょう」

エンドユーザーに複雑さを見せないことが重要だというStephen D. セイラー氏
エンドユーザーに複雑さを見せないことが重要だというStephen D. セイラー氏



セイラー「次世代のDigitaでは、携帯電話などを使いインターネットに接続し、サーバーに蓄えた画像を友人と共有したり、デジタルキオスクや家庭のプリンタから出力するといったことが実現されますが、その際に複雑さや難しさをユーザーに強いてはいけません。いつでも、どこでも、そしてパソコンがなくてもがキーワードになります」

フォトラボの制約を超えるが、カメラはカメラ

--簡単かつパソコンなしでカメラをインターネットに接続させることで既存のフォトラボの置き換えを狙うということですね。

セイラー「そうです」

プラット「インターネットを利用すれば、既存のフォトラボの制約を越えて、すぐに、どこでも、そして簡単に写真をプリントできます。また、既存のフォトラボでは撮り損ねた写真にもお金を払わなければなりませんが、撮影した画像をプリントするまえに確認できるデジタルカメラなら余分なお金を払わず、必要な写真を必要なだけプリントすることができます。誰もが失敗のない素晴らしいカメラマンになれると言えるでしょう」

--カメラが多機能化すると、PDAとの境界が曖昧になりますが。

セイラー「人々は、被写体を撮影する機械としてパソコンやPDA以上にカメラに親しんでいます。ですから、あくまでもデジタルカメラはカメラ的でなければなりません。撮影の際の使い勝手を最優先に考えなければならないのです。確かにPDAは、電子メール機能以外にも、予定表、アドレス帳、ワープロなど多彩な機能を持っており、テキストを入力する用途にも優れています。しかし、写真の撮影に特化した場合、カメラにはかなわない。われわれはあくまでもカメラの使い勝手を向上させる部分で勝負していきます」

デジタルカメラ中のコンピューター機能をOSで引き出す

--多機能さとシンプルさの追求のために今後Digitaはどうなっていくのでしょうか。

セイラー「よりシンプルな操作性を実現するために、次世代のDigitaでは、撮影モードでは起動とシャッターを押すだけのシンプルな機能のみを提供します。また、プレビューモードでも、撮影した画像を、単純なボタン操作だけで電子アルバム的に見られるようにするつもりです」

セイラー「そして、それとは別に、デジタルカメラの中にあるコンピューターの機能を利用できる"Digitaモード"を設定し、情報機器的な役割をそこで実現するのです。これにより、ユーザーが必要なだけの機能を提供できるとともに、起動時間など、今までDigitaの問題とされていた部分を改善することができます」

セイラー「フイルムを利用した既存のフォトシステムは非常に複雑です。銀塩写真のプリントには、暗室や現像液などの設備や化学変化に対するノウハウが必要です。しかし、ユーザーの目にはその複雑さが隠されている。そのため誰もが利用できるのです。デジタルカメラも同じです」

セイラー「デジタルカメラに、インターネットプロトコルが使われていても、パソコンやPDAのように複雑な設定をさせてはならない。ちょうど携帯電話を使う際に、基地局の仕組みや電波の受け渡しの方法など、その背後の仕組みを知らなくていいように、普通にカメラを使うのと同じ感覚で、意識しないうちにインターネットのパワーを利用できる。こういった多機能さと使い勝手の両立が今後のDigitaの目指す方向性となるでしょう」

Digita FXの画面。デジタルカメラ上で、明るさ/コントラストの変更、フィルタ処理などが指定できる。PCなしでデジタルの楽しみを満喫できる点が特徴だ
Digita FXの画面。デジタルカメラ上で、明るさ/コントラストの変更、フィルタ処理などが指定できる。PCなしでデジタルの楽しみを満喫できる点が特徴だ



Digitaの特徴が、スクリプトやアプリケーションの追加によるカメラの機能拡張にあるのは、いうまでもない。しかし、その恩恵を受けられたのは、これまではパソコンを所有し、自らプログラムを作成できる一部の人々に限られていた。その意味で、画像処理、電子メールといったデジタルならではの醍醐味をパソコン以外の環境で使用できることは、Digitaのユーザー層を広げる、大きな一歩である。

プログラムを組めない、さらにはパソコンを所有しない人々でも体験できるようになった“デジタル”の恩恵。その新たな特徴が本当に生きてくるためには、そのインフラとなるインターネット経由のプリントサービスや画像共有システムが確立されなければならない。それが軌道に乗るかどうかは、同社のリーダーシップとデベロッパーやカメラメーカーの協力に掛かっている。

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