このページの本文へ

【KNN特約 NAB'99レポートVol.3】パーソナルテレビ時代の到来

1999年04月21日 00時00分更新

文● KandaNewsNetowork 神田敏晶

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

“HOLLYウェブ LIVE!”では意欲的なプログラムが開始されるが、“エンハンスTVとインターネット”というセッションには、かなりの衝撃を受けた。

エンハンスTVとインターネット(EnhancingTV with the Internet)

パネラリストとして、米ウェブ・ティービー・ネットワークス社のディレクター、ジェームズ・アグイラー氏、米TiVO社のバイスプレジデント、ステイシー・ジョルナ氏、米Replay Networks社のアンソニー・ウッドCEO、米@HOME(アットホーム)社のラジ・カプーア氏らが登場した。

EnhancingTV with the Internetのセッション風景
EnhancingTV with the Internetのセッション風景



デジタルテレビによって、映像の放送機材は変わる。コンテンツに関しても、さまざまな臆測がなされている。しかし、デジタルテレビによって変わりゆくコンテンツの正解はまだ見えない状態だ。このセッションは、そうした不確実性の中における胎動を示唆するものだった。その周りの環境、特にセットトップボックスと呼ばれる環境が今年あたりに大異変が起きそうなのだ。

WebTVは、テレビとインターネットの架け橋という形で、新たなニーズを生んだ。洗練されたインタフェースで、操作感も向上させた。アットホームは、ケーブルテレビ会社であるが、6MBもの高画性を誇るケーブルモデムサービスを開始。さらにポータルサイトのエキサイトを買収し、インターネットの回線上でもポータルのポジションを確立しようとしている。

視聴者個人ごとのプログラムガイド

そこに、TiVO社とReplay Networks社の、テレビを編集できるセットトップボックスが登場した。

かつて、そして今も、VTRという録画機は、そこに自分がいないがために録画する機械であった。しかし'99年、新しいセットトップボックス(もっとクールな名称が必要だ)は、テレビを見ながらもっと、スマートな視聴習慣を提供するものとなった。

現在、ケーブルやサテライトのテレビで“プログラムガイド”と呼ばれる番組表が標準で。その“プログラムガイド”に自分の好き嫌い応じて番組をはずしたり追加することができればどうだろうか? しかもコマーシャルを飛ばして見るといったことも可能だ。そう、テレビを編集して見ることができる夢の“パーソナルテレビジョン”が登場しているのだ。

TiVO社のバイスプレジデント、ステイシー・ジョルナ氏は、「もう私たちは、テレビの時間に呪縛される必要はなくりました。また、VTRのように巻き戻したり、テープを探したりする必要もなくなりました。これからはTiVO-LUTON(TiVOによる革命)の時代です」と語る。

・TiVO-
 http://www.tivo.com

また、Replay Networks社のアンソニー・ウッドCEOは、「いつでもプライムタイムを可能にでき、いつでも繰り返し見ることができる。自分の好きな番組だけの番組編成が可能になります。しかもコマーシャルを飛ばしながら…」と語る。

・Replay Networks
 http://www.replaytv.com/

テレビをハードディスクに録画

この両社の発想のポイントは同じ。テレビを、巨大なハードディスクにMPEG2でエンコードしながら録画し、それをいつでも再生できるようにする。しかも価格は500ドル(5万9000円)前後から。VTRよりも安いハードの価格設定だ。

TiVO社VPステイシー・ジョルナ氏(左)とReplay Networks社CEOアンソニー・ウッド氏(右)
TiVO社VPステイシー・ジョルナ氏(左)とReplay Networks社CEOアンソニー・ウッド氏(右)



テレビを見ながら、好きな番組だけを自動で判断して録画してくれる。放送局が決めたフォーマットを見るのではなく、自分の好きなタイプの番組が録画される。そこで、さらにその番組の中から好きな番組だけを見るという視聴スタイルが実現できる。録画したものを再生して見るというのとはニュアンスが違う。

カンファレンスではデモが続く。TiVO社のビデオが上映される。例えば、テレビを見ている時に電話が掛かってきた。録画ボタンを押してあれば、電話の後でその続きを見ることができる。さらにCMなどを飛ばすことによって、実際のオンエアータイムに追いつくことができる。これは今まで体験したことがないメディアである。


テレビを録画しながら見るとスポーツ番組では、ストップモーションや、スローモーションをいつでも自分の好きな時に指示できるようになる

その番組を“好き”、“嫌い”で選ぶことによって、次回から自動録画するかどうかを設定できる
その番組を“好き”、“嫌い”で選ぶことによって、次回から自動録画するかどうかを設定できる



また、ハードディスクには、約30時間以上の録画ができる。1日のテレビ情報をとるには十分なサイズだ。また古い番組から自動で捨てていけばいい。また、保存が必要な番組であれば、そこからビデオに収録すればいいようだ。

TiVO社はシリコングラフィックス社の副社長であったマイケル・ラムゼイ氏が起したベンチャー。製品はフィリップス社から発売され、今回の展示会でも実物を20日から確認することができる。製造を担当するオランダのロイヤルフィリップスエレクトロニクス社とハードディスクのQuantum社の両社で展示がなされるする。

フィリップスから発売されるTiVO社『パーソナルTVシステム』
フィリップスから発売されるTiVO社『パーソナルTVシステム』



ポール・アレン氏やマーク・アンドリューセン氏が投資


Replay Networks社は、米マクロメディア社の副社長を務めたアンソニー・ウッド氏が起こしたベンチャーだ。ウッド氏は、Dreamweaverごとマクロメディアに動いた。また、同社には、マイクロソフト社の共同創業者のポール・アレン氏、米ネットスケープコミュニケーションズ社のマーク・アンドリューセン氏らが投資を発表し、注目を集めている。

Replay Networks社の『ReplayTV』
Replay Networks社の『ReplayTV』



テレビの恩恵を受けるのに、デジタルテレビ放送の浸透を待つまでもない。視聴者側のスマートなセットトップボックスによるパーソナルテレビ時代が始まる予感を感じた。

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン