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【INTERVIEW】既存流通クーポンと電子マネーが融合する?---ビットキャッシュ取締役に聞く

1999年04月05日 00時00分更新

文● 山木大志、報道局 伊藤咲子

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 インターネット上でのビジネスでは、その可能性だけが話題として一人歩きしており、まだ多くの課題が山積している。なかでも、大きな課題は少額決済の簡便性と信頼性である。そこに大きな風穴を開け、ブレイクスルーへの道を示唆しているのがプリペイドカード『BitCash』である。ビットキャッシュ(株)のマーケティング担当取締役、根本忍氏に『BitCash』のセキュリティーや市場戦略などについてうかがった。

ビットキャッシュ(株)マーケティング担当取締役を務める根本忍氏
ビットキャッシュ(株)マーケティング担当取締役を務める根本忍氏



少額決済に大きな実績を積み重ねる『BitCash』

 『BitCash』の仕組みを簡単に説明する。買った『BitCash』カードの銀色のスクラッチをコインなどでこすり取ると、16文字のひらがなが現れる。これがカードID兼プリペイドキャッシュの口座番号兼パスワードである。1000円のカードなら、その16文字で指定されるサーバー上の電子的な口座に、1000円が積んであることになる。ユーザーは、オンラインショッピングのウェブサイトなどで、16文字の文字列と金額を入力することで、自分の口座からお金を支払っていく。

 現在、インターネット上では、各種の決済手段が試行されている。既存の決済手段を利用するものとしては、クレジットカード、銀行口座引き落としなどが代表的である。インターネット専用の決済手段としては、電子マネー(Digital Cash)、電子財布(Digital Wallet)などがある。

「既存の決済手段に関しては、個人情報が他に流れるのではという懸念などからユーザーサイドでは、その利用をためらわれているのが現状です。また、インターネット専用の決済手段に関しては、その機能と内容が十分ユーザーに浸透していないこと、入手窓口が限られるなどの理由でやはり浸透しているとはいえません」(根本氏)

 そんな中で、急速に利用者を増やしているのが『BitCash』である。'97年の6月に発行を開始し、'98年の6月までの1年間に50万枚が発行され、その後も利用は増え続けている。インターネットビジネスに関わる人々の間には「少額決済のデファクトスタンダード」とささやく声さえある。

 『BitCash』は機能的には電子マネーの一種だが、形態面からプリペイドカードと呼んだ方が適切だろう。他の電子決済手段と異なり、現金で購入でき、即時に使える点に特徴がある。しかも、レコード店、書店など約200店舗と、コンビニエンスストアチェーンのサンクス、ミニストップ約1000店舗と全国どこででも容易に入手できる。

 『BitCash』の発行母体、ビットキャッシュ(株)には、伊藤忠テクノサイエンス(株)、国際電信電話(株)(KDD)、(株)小学館、住商エレクトロニクス(株)、住友信託銀行(株)、凸版印刷(株)、日本電気(株)、丸紅(株)など、そうそうたる企業15社が出資している。むろん、『BitCash』のポテンシャルに着目しての投資である。

『BitCash』プリペイドカード『BitCash』プリペイドカード



既存決済手段よりも広範なユーザーに訴求

 インターネット上での決済の現状について、根本氏は次のように語る。

「代金の回収が可能なインフラを整備しなければ、参入企業も出ないだろうし、商品も売れません。多くの電子マネーでは、専用端末あるいは専用ソフトでの特殊操作が必要であるほか、クレジットカードが必須であったり、セキュリティー強化のために詳細な事前登録制や会員制がとられたりしています。こうした要素は、少額決済にとっては大きなハードルとなってしまうのです」

 これら既存の決済手段の問題点をことごとくクリアし、即時購入、即時利用、即時決済を実現したのが、『BitCash』であると根本氏は主張する。

 しかも、『BitCash』は利用環境をコンピューターに限定していない。ウェブサイトにアクセスできる端末さえあれば、誰でも利用できるのである。携帯電話や携帯型情報端末(PDA)ばかりか、今後普及が期待されるJAVA端末、インターネット家電などでも利用できる。ここに『BitCash』利用の裾野の広さがある。

 暗証番号を16文字のひらがなで入力するというのも使いやすい。キーボードがなく、入力環境の劣る情報端末での利用もしやすく、またタイピング能力が十分でない人たちにも使いやすい。

 金を扱うとなればセキュリティーが気になる。16文字の組み合わせによる暗号強度は88bitと平均的なものであるが、「これを破ることによって得られるのは、1000円、2000円というわずかなものなので、そもそも犯罪の動機になりにくいでしょう」と根本氏は言う。

流通業のクーポンとの融合でさらに拡大か?

 この『BitCash』が近い将来、“流通業のポイント制とBitCashの相互乗り入れ”によって、さらにその間口を広げそうである。これは、デパートなど小売店で買い物をしたときに得られるクーポンと、『BitCash』の与信額とを交換できるようにするものだ。これが実現すれば、『BitCash』が手元になくても、ユーザーはインターネット上での買い物ができるようになる。

 流通クーポンの利用は低迷を極めている。物不足だった時代に始まったこの制度では、現在の消費者の購買心に訴える賞品、製品を提供できないからだ。しかし、『BitCash』との交換はこの状況にもインパクトを与えるだろう。

 残念ながら、このポイント制の相互乗り入れ計画の詳細は「まだ公開できない」(根本氏)とのこと。この計画が動き出せば、冷蔵庫など大型家電の買い物直後に、携帯電話の操作でウェブサイトで書籍を購入する、などということが日常的な風景になるのかもしれない。

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