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高齢者向けコミュニケーション支援用対話型ペットロボットを開発

1999年03月24日 00時00分更新

文● 報道局 桑本美鈴

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 松下電器産業(株)は、高齢者向けのコミュニケーション支援器具として、対話型ペットロボットを開発した。

 このペットロボットは、本体に音声認識用マイクや接触センサーを内蔵しており、ユーザーの音声や、なでるといった接触に対して応答する。内部の処理は、表情や身振り、音声を組み合わせたマルチモーダー対話処理技術を利用して行なわれる。

手触りはまさにぬいぐるみ
手触りはまさにぬいぐるみ



 ペットロボットは、目の部分が液晶画面になっており、喜怒哀楽など20パターンの表情が用意されている。「おい」などの呼びかけ、「おはよう」など時間に依存するあいさつ、「行ってきます」などの時間に依存しないあいさつ、「かわいい」などの感情に近いやり取り、時間を聞くと現在の時刻を表示するなどの特定機能用途、といった5つのパターンを対象に音声を認識する。また、ペットロボット自身が話すフレーズは「おはよう!」など50種類ある。ペットロボットの動きは、「あまり動き回ると高齢者の方は疲れてしまわれるため」(同社)、身振りなどの最小限に押さえたという。主電源は単3電池8本またはACアダプター(5V)。サイズは幅24×奥行き30×高さ30cm(突起部分を含む)、重量は1.4kg(電池込含む)。

「いま何時?」と問い掛けると目の部分に時刻が表示される
「いま何時?」と問い掛けると目の部分に時刻が表示される


 ペットロボットはシリアルインターフェースを装備しており、ISDNなどデジタル回線網を利用して、高齢者看視用ネットワークシステムを構築することが可能。ネットワークの中心となる看視センターを設け、そこで録音した「体の具合はいかがですか」といった音声を回線を通じてペットロボットから発することができる。また、ユーザーとペットロボットの使用履歴がメモリーに記録され、その履歴が看視センターに届く仕組みとなっている。履歴内容ではプライバシー保護のため、ユーザーがペットロボットに話しかけた内容は記録されない。

尻尾の部分にシリアルインターフェースを装備
尻尾の部分にシリアルインターフェースを装備


 ペットロボットの開発費用は、助成金を含め1億5000万円。製品発売時期は、2001年以降になる見込み。製品化した際の価格は、ペットロボットが5万円以下、看視センターシステムを含めたものは50万円以下を予定しているという。ペットロボットの形態は最終形ではないが、親しみやすいアニメ的なデザインにしたいとのこと。

 発表会場には、ぬいぐるみのネコ型ペットロボット“タマ”が登場。松下電器産業(株)健康医療事業推進室の小澤邦一室長と水谷研治技師は、「さまざまな企業で福祉介護に関する商品開発が行なわれているが、高齢者の精神的な介護を目的としたものはほとんどない。われわれは、動物を飼育することがメンタル面のケアに有効というアニマルセラピーをもとに開発を行なった。高齢者向けの対話型ペットロボットである“タマ”は3年かけて開発した。ペットロボットを通じて、コミュニケーションが図られ、高齢者の快適な生活に役立てると考える」としている。

小澤邦一室長(右)と水谷研治技師
小澤邦一室長(右)と水谷研治技師


----高齢者向けということだが、緊急事態時などにペットロボットを使って対応するといった使い道は?
「技術的には可能だが、あくまでコミュニケーション支援のために開発したもので、緊急事対応の実験などは行なっていない」

----高齢者はペットとしてとらえているのか、デバイスとしてとらえているのか
「ペットとデバイスの中間くらいにとらえているようだ。完全なペットというわけではない」

----音声の認識距離は?
「10~20cmの距離を想定している」

----電話のかわりに使うといった用途は?
「今後の課題。NTTと相談しなければならないだろう」

----海外展開は?
「米ではファービーなどの人形が人気。視野に入れていきたい」

発表会場には登場しなかったが、クマ型ペットロボットも用意されている
発表会場には登場しなかったが、クマ型ペットロボットも用意されている

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