このページの本文へ

みんなが幸せになる電脳広告---博報堂電脳体 平塚元明氏セミナー

1999年03月04日 00時00分更新

文● 報道局 伊藤咲子

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 デジタルクリエイターズカレッジWAO!は24日、「インターネット広告の可能性~博報堂電脳体の取組から~」セミナーを開催した。講師は(株)博報堂 博報堂電脳体でクリエイティブプロデューサーを務める平塚元明氏。平塚氏は電脳体創設者の1人である。

博報堂電脳体の平塚元明氏
博報堂電脳体の平塚元明氏




博報堂電脳体とは


 博報堂電脳体が創設されたのは、'96年7月。それまで、同社にはデジタル領域に関わるチームがいくつかあったものの、受注された範囲でデジタル広告を制作するだけであった。同部署を設立した目的は、インターネット上でのマーケティングノウハウの蓄積、プロデューサーの育成、マーケティングサービスの実施の3つ。

 電脳体は、企画からシステム制作、事務運営までこなす“ミニチュア博報堂”だとか。平塚氏は「クライアントがデジタル分野の広告をオーダーしているというのに、代理店がその将来を考えないのはおかしいのではないかという話になりました。電脳体は、こんな広告ができますよ、とクライアントに提案するような団体を目指します」と言う。

みんなが幸せになるデジタル広告とは

 電脳体は'96年、新しいデジタル広告の手法として、“お年玉くじつき電子年賀状”や“プレゼントくじつき暑中見舞い”といった、電脳グリーティングカードを発案した。この企画広告では、日本経済新聞のメディア&アド面に一面広告を打ち協賛企業を募集、三菱電機やキリンビールといった各業界の大手企業から賛同を得た。

“お年玉くじつき電子年賀状”の見本“お年玉くじつき電子年賀状”の見本



 平塚氏はその広告宣伝効果に対して、「ユーザー側は、カード作成、完成カードを見る、プレゼント抽選の結果報告と最低でも3回はホームページに足を運ぶ仕組みになっています」と語る。

 現在、通算で5回を数えるこの電脳グリーティングカードは、国内最大規模のグリーティングカードシステムに成長した。'99年の“お年玉くじ付き電子年賀状”には200万通の応募が寄せられたとか。

 平塚氏は「電脳グリーティングカードの特徴は、カードを受け取った人のみならず、送った人にもプレゼントが当たるということです。プレゼント選びは、ユーザーにとって1大イベント。プレゼント選択のページは、広告主サイドからみると、商品を露出し、宣伝しているポイントになっています。まさに“幸せな出会い”なのです」と語る。“ついで”に見せるバナー広告と異なり、プレゼント選択=広告閲覧という“主菜”としての広告手法がここでは展開されている。



インターネットのユーザー観測

 電脳体が企画広告以外に受け持つ大きな仕事として、'97年から行なわれている“電脳生活者レポート”というマーケティング白書の作成がある。これは首都圏で最近1年間にパソコンを購入した(新規/買い替え/買い増し不問)300世帯を対象に、調査員が各家庭を訪問してインターネットに関する全45項目の聞き取り調査を行なったもの。'97年版ではインターネットユーザーを、8つの種族(非ユーザーも含む)に分類した。



種族


1


希望に胸踊る「電脳生活新入生」


2


眉をひそめる「肩越しの家族たち」


3


道具とわりきる「クールなパワーユーザー」


4


面倒見ましょう!「頼りになるベテラン」


5


電脳空間で「自分さがしの主婦たち」


6


買ったはいいが「もてあましユーザー」


7


才能開花?「日曜電脳クリエイター」


8


仕事に必要だから「お勉強ユーザー」
最も構成比が大きいのは種族1。詳しくは、『電脳生活観測レポート97年版 電脳生活観測~電脳生活者8つの種族』(発行:博報堂)


 電脳体は種族1~2、5~8のような、新しくパソコンを始めた層にアプローチすることが、パソコンの本格的浸透のキーになると結論づけている。

「従来のマスメディア広告のような、“到達リーチが広い-->広告が成立”という、いわゆるGRP(Gross Rating Pointing)発想では、インターネット上の広告は現段階では成立しにくいのでしょう。米国ではすでに、単純な“Audience=視聴者”として受け手をとらえることから、“Customer=顧客(予備軍)”として受け手をとらえる考え方に移行しつつあります。バナー広告を露出するだけという段階から、クリックがどれだけあるか、何らかのトランザクションがどれだけ成立するか、という評価形態に移行しています。バナー規格外の新規な試みも含めて、ユーザーが自ら喜んで深く関わりたくなるような広告手法を考えることがテーマになっていくでしょう」

 電脳体が手がける“お年玉くじつき電子年賀状”などの広告物件には、1広告あたり数千通にもおよぶユーザーからの問い合わせメールがあり、反応は上々とか。電脳体は電脳グリーティングカードの他にも、ランダムアクセスシステムを採用したゲーム風広告“ガチャロボ”などインターネット上で企画広告をいくつか実施している。ネットサーファーたちは気づかない間に、電脳体の広告の世界に引きずり込まれているのかもしれない。

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン