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松下技研、常温・非酸素導入環境下での酸化物透明薄膜形成技術を開発

1998年12月01日 00時00分更新

文● 報道局 植草健次郎

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 松下技研(株)は、常温・非酸素導入環境下でのレーザープロセスを用いた酸化物透明電導性薄膜形成技術を開発した。これは次世代高精細パネルディスプレー開発のための要素技術で、液晶ディスプレーやタッチパネルなどで電極として使用される酸化物透明電導性薄膜を常温、酸素導入なしで作成できるというもの。'96年に発表した直径2~12nmのシリコン超微粒子を用いた発光素子技術と組み合わせ、次世代の高精細小型ディスプレーの実用化を目指している。

技術的な特徴

 この技術では薄膜の形成に、パルスレーザーを材料に集光して照射し、飛び出した分子を基板上に堆積させて薄膜を形成するパルスレーザー堆積法を用いる。従来は、特性を低下させないために薄膜を形成する基板を摂氏300度程度まで過熱するとともに、生成反応室内に酸素を導入する必要があった。このためシリコン超微粒子のような酸化しやすい材料や、高分子材料のような熱に弱い基板材料には薄膜を形成することができなかった。

 同社は、生成反応室内にヘリウムの希ガスを充満させ、ガスに圧力を加えることで基板の加熱と酸素導入の必要ない技術を開発した。これを用いることで可視光透過率が90パーセント以上の結晶性酸化インジウム薄膜の形成に成功した。ヘリウムガスの圧力を調整することで透度や電導率を制御できるという。

ヘリウムガスの圧力を変化させることで、薄膜を透明化できたという
ヘリウムガスの圧力を変化させることで、薄膜を透明化できたという



 基板の温度を上げなくとも薄膜を形成できるので、基板を高温にできない有機エレクトロニクスの分野や、強誘電性薄膜、圧電薄膜、超伝導薄膜などへの応用が考えられるという。

次世代高精細ディスプレーのための技術の応用

 この技術は同社が開発を進めるシリコン超微粒子を用いた発光素子のために開発した技術。この発光素子はシリコン超微粒子の層に電圧をかけると発光する現象を利用するもの。シリコン基板にシリコン超微粒子を堆積させて形成する機能構造体は厚さ約200nm、直径2mmの円形で、シリコン超微粒子の堆積層の上に透明電導性薄膜を形成し、電極として使用する。シリコン超微粒子は酸化しやすいため、従来の方法では薄膜を形成できなかった。この発光素子では1画素の大きさを5μm程度にできるという。また、シリコン製の超LSIに光素子を融合させることも可能。これを用いて小型高精細なディスプレーや受光素子を開発しようとしている。この発光素子の技術は2004年ごろの実用化を目指している。

発光素子の概念図
発光素子の概念図



 同社の山田由佳工学博士は、「今回開発した技術と、シリコン超微粒子による発光の技術を組み合わせて2001年度末を目指して多色発光できる素子を開発したい」とコメントしている。

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