このページの本文へ

【INTERVIEW】「大学向けにマルチメディア教材を提供する公共機関を設立」----イタリア電子出版協会代表、ロベルト・リーシャ氏に聞く

1998年11月27日 00時00分更新

文● 報道局 白神貴司、アスキーDOS/V ISSUE 小林久

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 (財)マルチメディアコンテンツ振興協会および日本経済新聞社が主催する、デジタルコンテンツの展示会“ContentCreation + NICOGRAPH 98”が25日より千葉・幕張メッセで開催されている。今回は、同展示会のために来日したイタリア電子出版協会(ANEE)の代表Roberto Liscia(ロベルト・リーシャ)氏に、イタリアにおける電子出版の現状や同協会の取り組みについてお話を伺った。

イタリア電子出版協会代表、ロベルト・リーシャ氏
イタリア電子出版協会代表、ロベルト・リーシャ氏



イタリアのパソコン、ゲームソフト市場は約500億円

----まずはじめに、イタリアにおけるデジタルコンテンツの現状について聞かせてもらえますか。

「イタリアにおけるデジタルコンテンツの市場はまだまだ小さいのですが、これから大きく普及する段階に入っていくでしょう」

「イタリアの全人口は5700万人で、世帯数は約2000万世帯です。現在普及しているパソコンの台数は445万台で、そのうちの22パーセントがホームユースです。インターネットに接続している世帯数は約50万世帯。インターネット利用者は、ホームユーザーが約80万人、オフィスからインターネットにアクセスしているのが100万人以上となっています」

「また、それ以外に100万台のコンシューマーゲーム機が使用されており、そのうち約70パーセントがソニーの『PlayStation』、残りの30パーセントがセガ、任天堂となっています」

----イタリアのソフトウェア市場の規模はどの程度でしょうか。

「現在の市場規模は、パソコン用ソフト、コンシューマーゲーム機用ソフトがそれぞれ250億円ずつ、合計500億円です。パソコンソフトの約55パーセントがゲームソフトで、そのほかは美術、百科事典、教育、子供向けソフトとなっています」

「このうち伸びているのは、教育、子供向けの分野ですが、その大半は海外の製品です。特にゲームに関してはほとんどがアメリカ製という状況です。しかし、イタリアにコンテンツがないわけではありません。例えば、美術に関していえば、歴史的に見ても、イタリアには優れたものが集まってきましたから」

----来日されての印象はいかがですか。

「日本ではイタリアの文化に対する関心が高いですね。非常に驚いたのですが、東京にはイタリア料理の店が1000軒以上もあるそうです。また、毎年300万人の日本人がイタリアを訪れていると聞きます」

「私は、イタリアのコンテンツと日本の最新技術を融合し、新たなコンテンツを提供することができたら、と考えています。これは日本の出版業界にとってもメリットがあるでしょう。デジタルメディアを通じて両国の文化の融合を図ることができればと思います」

大学向けにマルチメディア教材を提供する公共機関を設立

----ANEEの今後の活動に関してお聞かせください

「ANEEは'86年に設立されました。現在約300社のメーカーが参加しており、イタリア国内のほとんどすべてのソフトメーカーを網羅していると言えるでしょう。これは、イタリア産業界においてもかなり大きな団体となります」

「今後は、家庭に文化や教育コンテンツを普及させるための取り組みに注力していきたいと考えています」

「著作権保護に関しても積極的に取り組んでいくつもりです。イタリアでは現在、1本のソフトウェアに対して平均で1.5本の海賊版が出回っているといわれています。ANNEでは著作権保護のための法改正の提案も含めた活動を行なっていきます」

「また、教育機関向けの活動としては、ミラノ工科大学などと共同で行っている2つの講座が挙げられます。修士課程に在籍中の学生を対象にした技術者向けの講座と、マルチメディアを使ったマーケティングの講座で、後者はイタリアでも唯一のものとなっています」

「文部省などの公的機関との連携も図っており、大学へマルチメディア教材を提供する公共機関を設立しました。このような活動を通じ、私たちは、さらなるデジタルコンテンツの普及を目指していきたいと考えています」

ブース内に展示されたイタリア製のデジタルコンテンツ
ブース内に展示されたイタリア製のデジタルコンテンツ

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン