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【INTERVIEW】米フラッシュポイント・テクノロジー、Stephen D.Saylors氏「デベロッパー向け戦略に注力」

1998年11月20日 00時00分更新

文● 報道局 小林久

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 米フラッシュポイント・テクノロジー社は、デジタルカメラ用OS『Digita』を開発しているメーカー。『Digita』の最大の利点は、“Digita Script”という独自の言語を用意することで、Digita上で走るプログラムを開発できることだ。同社ではDigita Script用の開発キットを配布するなど、その充実に努めている。今回は同社の上級副社長でセールスとマーケティングを担当しているStephen D.Saylors(スティーブン・D・セイラー)氏にお話を伺った。

米フラッシュポイント・テクノロジー社のStephen D.Saylors氏
米フラッシュポイント・テクノロジー社のStephen D.Saylors氏



デベロッパー向けの開発環境を整備するのが当面の目標~Digita Scriptでの開発を盛り上げるためのコンテストも

Digitaはデジタルカメラ用の汎用OS。Digitaを搭載したデジタルカメラには、コダック(株)の『DC-260』やミノルタ(株)の『Dimage EX』などがある。Digitaは、Digita Scriptと呼ばれる言語を利用して機能を拡張することができ、その開発キットはフラッシュポイントのホームページから無償でダウンロード可能。すでに多くのスクリプトが、CLUB Degitaのホームページで公開されている。

----Digita Scriptに関して最新の話題は何でしょうか

「現在、弊社は“Digita Photo Adventure”という名前のコンクールを行なっています。Digita Scriptで作成したスクリプトのコンテストで、米イーストマン・コダック社、ミノルタ(株)、米SanDisk社、米Digital Camera Magazine誌などが協賛しています。コンテストには最終的に400~500の作品が寄せられるのではないかと期待しています。Digita Scriptは現在、約300のデベロッパーがダウンロードしています。また、Digita Photo Adventureのようなコンテストは今後日本でも行なっていきたいと考えています」


Digita Photo Adventureのホームページ。優勝者にはハワイ旅行(またはメキシコ、カリブ海)やデジタルカメラなどが進呈されるという。締切は'99年1月15日

----御社は、Digita ScriptのSDK(Software Development Kit:開発キット)を無償提供していますが、今後Digita ScriptやそのSDKをどういった形で拡張していく予定ですか

「Digita向けには、3種類の開発環境が用意される予定です。まず1つめはDigita Scriptです。Digita Scriptは約300のコマンドで構成されたオープンな開発言語で、デジタルカメラ用OSDigita上で動作するスクリプトを作成することができます。Digita ScriptはHTMLやXMLに対応するなど来年拡張する予定で、そのSDKも順次提供していく予定です」

「また、Digitaには、Digita Script以外で書かれたソフトウェアが存在します。1つはツールボックスに機能を追加するモジュールである“プラグイン”、もう1つはDigita Script以外の言語(C言語など)で書かれたアプリケーションです。これらの開発環境は、デバッガーとコンパイラーを同梱したパッケージとして有償提供される予定で、PC/AT互換機用とMacintosh用の両方が用意されます。提供時期はともに来年になる予定ですが、アプリケーション開発環境に関しては一部のデベロッパーのみにベーター版の優先提供を行なっています」

 

Digita対応のスクリプトである『Break Out』。デジタルカメラでゲームをする必要を問われると首をかしげてしまうが、スクリプトで実現される機能の1例としては興味深いDigita対応のスクリプトである『Break Out』。デジタルカメラでゲームをする必要を問われると首をかしげてしまうが、スクリプトで実現される機能の1例としては興味深い



----御社はデベロッパー向けの戦略に注力していくということでしょうか

「弊社は開発者向けの戦略を中心に据えていきます。現在のデジタルカメラ用OSは組み込み型の専用OSが主流であり、それらは非常に閉じた規格です。これをオープンにすることで、可能性が広がってくるのではないかと考えています。例えば、多くのデジタルカメラに搭載されているIrDA端子を利用した『IrDA Phone』や、PHSでインターネットに接続するためのブラウザーの開発などが一例として挙げられます」

写真のデジタル化によって、まったく異なったマーケットが生まれる

----デジタル市場の広がりに関して、どのようにお考えになっていますか

「現在、銀塩写真をプリントするマーケットの規模は約360億ドル(約4兆3560億円)。非常に大きなマーケットとなっています。今後、こういったプリントの用途は銀塩写真から、デジタルへと移行していくでしょう。デジタル化によって、カメラは自由になります。バリエーションに富んだ大きさや種類のプリントが可能になるほか、化学変化を利用した既存のフォトシステムが持っていた様々な制約を超えることができます。そして、様々なプリントが可能になることを通じプリントの需要が飛躍的に増え、その市場は4000億ドル(48兆4000万円)規模にまで広がるのではないかと考えています」

「銀塩カメラは、早晩、プロフェッショナルと一部のマニア層を除き完全にデジタル化するでしょう。その中でDigitaは、デジタルカメラとそのプリントとの間をつなぐソフトウェアとしての役割を果たしていくことになると思います」

----御社はパソコン周辺機器としてのデジタルカメラをターゲットにするのでしょうか

「フラッシュポイントは、ソフトウェアメーカーです。デジタルカメラはパソコンを持たないユーザーにとっても大きなメリットを与えてくれるとは思いますが、より多くの恩恵を受けられるのはパソコンユーザーなのではないかと思います」

----パソコンユーザー以外のデジタルカメラの広がりに関してはどうお考えになっていますか

「デジタルカメラには、簡単にプリントできる、簡単に見ることができるという長所があり、ホビー用途での広がりに注目しています。デジタルカメラは、今後、パソコンを持たないユーザーにも広がっていくでしょう。ある調査によると、デジタルカメラを持たないユーザーの大半は『私はパソコンを持っていないから』と答えます。でも、私は『あなた方にパソコンは必要ありませんよ』と答えるでしょう。パソコンがなくても、デジタルカメラを使用することができるのです。今から、パソコンなしに印刷していく方法をお見せしましょう」

セイラー氏はそう言って、セイコーエプソン(株)製のプリンターのデモを始めた。同プリンターでは、撮影した画像を格納したコンパクトフラッシュカードやスマートメディアなどを直接プリンターに差し込むことでプリントできる。同氏は「パソコンユーザーでなくとも大丈夫でしょう?」と笑いながらA4サイズの用紙に印刷された画像を手渡した。



編集部補足:この種のプリンターはエプソン以外の各社からも販売されている。また、既存の現像所を利用して、デジタルカメラで撮影した画像をプリントするための統一規格“DPOF”が先日発表されるなど、パソコンユーザー以外でもデジタルカメラライフをエンジョイできる環境が少しずつ整いつつある

----現在、競合として考えている他社はありますか。また、デジタルカメラ以外のデバイスへの搭載に関してはどうお考えになられていますか

「私たちは、新しいマーケットに乗り出しているため、今のところは目立った競合他社はいないと考えています。今はどちらかというと啓蒙の段階で、私たちのOSの利点を良く知ってもらい、デベロッパーにDigita対応のスクリプトをたくさん作ってもらうことが先決です。敵はむしろデベロッパーでしょうね(笑)。また、現在はデジタルカメラの分野に特化していますが、今後は液晶ディスプレーやテレビなど、家電の分野にもDigitaを応用していく道は十分にあるのではないかと考えています」



スクリプトの1つ『Digita Theater』について説明するセイラー氏(上)。撮影した画像をスライドショー表示するJavaアプレットを作成できる(下)
スクリプトの1つ『Digita Theater』について説明するセイラー氏(上)。撮影した画像をスライドショー表示するJavaアプレットを作成できる(下)



----最後に今後の抱負などを聞かせてください。

「未開拓の分野だけにさまざまなビジネスチャンスがあると思います。あとは、Digitaを盛り上げてくれるデベロッパーの賛同と力次第だと思っています。デベロッパー向けにSDKを提供したり、スクリプトを作ってくれる数百のベンダーと協力して、Digitaの開発環境を盛り上げていきたいと思っています。また、弊社は、イメージ・エフェクトやVR(Virtual Reality)などを手がけるサンノゼ市内のキーデベロッパー3社と協力し、Digita用のアプリケーションを今後開発して行きたいと考えています」

マンションの一室を事務所としたフラッシュポイント社の日本オフィスで、セイラー氏は私たちをフランクに迎えてくれた。「今後はデベロッパー次第」と語るセイラー氏。フラッシュポイントの歩み出した1歩は大きな1歩となりうるだろうか。

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