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【INTERVIEW】「もうフォントなんていらない!?」杉本重雄助教授、多言語利用システムについて語る

1998年09月14日 00時00分更新

文● 井上哲郎、報道局 降旗敦子

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 「世界中のさまざまな文字を画面上に表示できたら…」--そんな希望をかなえるべく、図書館情報大学の田畑孝一教授らは、Webブラウザー上で文字化けすることなく多言語を表示できる“多言語利用システム(mhtml言語)”を開発した。同システム開発者のひとりである同大学助教授、杉本重雄氏に、具体的な利用方法について解説していただいた。



----多言語利用システムとは何ですか?

「私たちが開発したシステムは、JAVAアプレットを利用したもので、パソコンの持つシステム言語(フォント)に依存せずに、多言語を表示できるというものです。通常、パソコンで文字を表示する際、受信情報に対応した言語セットを持っていないと、文字化けが起きてしまいます。わたしたちのシステムの場合、必要な言語データはそのつどサーバー(Web上に設置されているフォントサーバー)から、接続されたパソコンに送信されます。そのため利用者側は、Webブラウザーを使用するだけで、特別な設定をすることなく、多言語を表示できるのです」

「この研究と開発は、'95年から始まり、すでに昨年の夏から無償でのダウンロードができるようになっています。私たちも、海外に出張や留学で赴く機会がよくあるので経験するのですが、現地にあるパソコンは(フォントなどの)設定を変えられないため、わざわざ日本から運んでいかなければなりません。このシステムを使えば、そんな手間も省けるでしょう」

----システムを利用した具体的な例を見せていただけますか?

「たとえば、現在、本大学のホームページでは、韓国語やタイ語、中国語などが利用できます。その中に“日本昔話の多言語ディジタル文庫”というコーナーがあります。これは、世界中の人が、母国語で日本の昔話を読めるようにと作成したページです。このコーナーでも多言語利用システムを使っており、中国語で『かさじぞう』を読むなど、楽しみながらシステムを理解してもらえると思います。大部分の挿し絵や翻訳をお願いしたボランティアの方には、大変感謝しています」

----どのような人たちの利用が考えられるでしょうか?

「このシステムは海外での使い勝手の良さに加え、Unicodeと違って今すぐ使えるといった利点があります。そして無料です。そのため、利用者の対象をプロではなく、エンドユーザーにおいています。パソコンを持っていない人でも、図書館などで気軽に使って欲しいですね。私は、日本に来ている留学生などに紹介し、喜んでいる姿を見るのが一番うれしいです」

----このようなシステムの開発によって生まれてくること、必要なことなどはありますか?

「日本における情報の定義ですね。情報というのはとても曖昧な分野で、日本は、米国などと比較すると出遅れている部分が多いと思います。また、情報は物ではないので、価値を見出せない場面も多いでしょう。そのような時代の中で、資料をデジタル化したり、行政、文化といった情報の公開を均等に行なったり、と図書館情報大学や電子図書館が担う部分は大きいと考えています」

杉本教授らは、現在表示だけであるこのシステムを、入力も可能なものへと改良し、簡易メール機能としても利用できるようにするという。期待したい。

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