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地域づくりの討論会“SVJトークin電脳村”富山県山田村で開催

1998年08月11日 00時00分更新

文● 会社員 新川雅之(写真提供 持田修示ら)

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 富山県山田村で開催中の村民と学生の交流イベント“電脳村ふれあい祭'98”で、サポート団体の一つであるスマートバレー・ジャパン(SVJ)有志が集い、ふれあい祭運営に関わる学生たちと意見を交わした。

 “SVJトークin山田村”と題した講演会および討論会が、8日午前、山田村交流センターで行なわれた。SVJの伊東代表他4名から地域づくりに関する先進事例の紹介があった後、参加した学生たちと意見交換を行なった。参加者は、応援にかけつけた地元の富山政策サロンのメンバーも含めて25名であった。



 まず最初に、SVJの伊東代表から米国シリコンバレーでの、企業や市民を巻き込んでの教育プロジェクト、“Net Day”の紹介があった。シリコンバレー地域の幼稚園から高校までの公立学校約500校すべての教室をインターネットにつなぐことを目的に、毎年1回、日を決めてボランティアや寄附を募り、PCの整備とインターネット接続を進めていこうというものだ。すでに地域の94%の学校にネットワーク環境が整備されているという。今年の“Net Day”には30億円もの企業からの寄付が集まり、125人もの企業からの派遣ボランティア、1万4500人もの市民ボランティアが参加した。

 なぜ企業が参加するのか。情報を使いこなせる人材を育てることこそが10年後のシリコンバレーの繁栄、すなわち自らの企業の繁栄を約束してくれるからだ。先生と親とがインターネットを介して、一人ひとりの生徒に関するデータベースを共有し、その生徒専用のカリキュラムを先生と親が協働でつくることで生徒一人ひとりの個性を伸ばしていく。そんな試みがシリコンバレーの強さにつながっている。

 対して日本は、公立小中学校1校あたり平均で2.5本しか電話回線が引かれてない、という状態。伊東氏は「ネットワークの話をする以前の段階」と指摘した。

 和歌山県美里町の“みさと天文台”台長の尾久土(おきゅうど)氏は、'95年に美里町役場からの誘いを受けた際に、「町にインターネットをつなぐこと」を条件の一つにあげたという。尾久土氏自らは天文の専門家だが、美里町の過疎化は天文台というハコモノだけでは止められない、インターネットの力を借りて美里発の天文情報を発信しなくてはダメだ、との思いがあった。

 かくして、尾久土氏が赴任した4日後に、全国の町村で初めて、美里町のホームページがオープンした。沖縄まで出かけていって日食の中継をしたり、土星の輪を観測して映したり、今年11月に全国各地でしし座流星群を観測する“天文甲子園”を企画したり、天文台とインターネットと町のホームページをフルに活用したまちづくりに取り組んでいる。

 その尾久土さんの目下の夢は、ハワイに天体望遠鏡を設置してインターネットでつなぎ、日本と米国の子供たちが時差を利用して交互に覗き、同じ星空を題材にいっしょに学習することだという。星をみながらの国際授業にロマンを感じる方、ぜひスポンサーになって欲しいとのことだ。



 京都府職員の長谷川さんは、宇治茶の産地として有名な京都府南部地域の和束町のまちづくりに、学生といっしょになって取り組んでいる。

 今年の2月26日から28日の3日間、学生アントレプレナー連絡会議(ETIC)の全国大会が和束町で行われたのをきっかけに、有機農法でお茶の栽培をしている町の農家に共鳴した京大生が中心になって、“開墾太郎”というプロジェクトを起こした。

 お茶の収穫作業はとてもつらい仕事で、かつ5~6月に集中する。“開墾太郎”で人集めを請け負うとともに、“和束茶”のブランド化を目指して、茶葉そのものや缶入り和束茶の販売促進を行なっている。

 和束町の住民は、学生の食環境に対する意識の高さや地域をよくしていきたいという情熱に刺激を受けた様子で、長谷川さんは学生たちが地域を変える原動力になるかもしれないとの手応えを感じ、側面支援にまわっているそうだ。

 東京都町田市に住む奥田さんは、東京郊外の多摩ニュータウン長池地区の住民ネットワーク“ぽんぽこ”に参加している。そこでは、一昔前の井戸端会議がメーリングリスト上で交わされる。新住民も旧住民も寄り合って、地域の伝説や牧場農家の話、お祭り、安くてうまい店の話まで、日常社会の交流の場があるという。

 人を一人でも幸せにする情報が飛び交えば、それがより快適な日常につながって、住みやすい地域、よい地域になるのではないかと奥田さんは感じている。

 参加した学生からは、「電脳村ふれあい祭は、村民にパソコンを教えることが目的なのではない。パソコンを教えることを通じて村民と心がふれあって交流に発展することが目的のはずなのだが、初めて山田村にやってきた身にとっては実際問題として難しい。参加する学生の間でも温度差があるようだ」「昨年から連続して来ているが、子供のいる家庭の方が、パソコンやインターネットに、よりなじんでいるようだ」といった、ふれあい祭の活動を通じての感想が述べられた。

 SVJ代表の伊東氏は、「ふれあい祭の長期的ビジョン、ゴールをおいてそれを参加者で共有するべき。村民とも交流のコンセプトもはっきりさせよう。ただ、地域づくりを行うのは地元の人たちであり、よそから来た君たちはそれをサポートすることしかできないんことを肝に銘ずるんだよ」「僕がシリコンバレーから学んだことは、“人は住みたいところに住み、働きたいところで働く”ということ。でもその住みたいところ、働きたいところ、を作るのはあくまでも“人”なんだ」と結んだ。

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