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日本経営協会が、“デジタル文書推進機構”を設立

1998年07月24日 00時00分更新

文● 報道局 佐藤和彦、白神貴志

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 (社)日本経営協会や、NTTデータ通信(株)など23社は、企業・団体などの文書管理のデジタル化を推進する“デジタル文書推進機構”を設立した。同団体は、本日、都内で発足記念講演会とパーティーを開催、同団体の発起人メンバーの代表を務める土屋俊千葉大学文学部教授などが講演を行なった。

土屋俊千葉大学文学部教授



 土屋氏は千葉大学文学部教授で、同大付属図書館長も務めている。本日開催された講演会では、“デジタル文書推進機構”発起人の代表として“デジタルな文書の未来”と題する講演を行なった。

 「ワープロが登場してから20年近くがたつ。PCを取り巻く環境も著しく変化し、5年ほど前は大学の研究室などでしかインターネットに接続できなかった。しかし、予想をはるかに超えるスピードで進歩し、一般に浸透した。特にここ2~3年の進歩は目覚しい。ここまで速いスピードで進歩するとは予想もできなかった。この講演のテーマは“デジタルな文書の未来”ということだが、自分の予想も、今後の進歩で覆されることになるかもしれない。“デジタル文書推進機構”は、文書のデジタル化をどのように行なっていくかを考えていくために設立した団体。日本では規格が天から降ってくるものと考え、受け身になっている人が多い。SGMLやHTMLなどのデジタル文書の規格を学ぶことに力点を置くのではなく、メンバーが互いに具体的な言葉で意見を交わして、新しい規格を作り出して行けるような運営を、発起人の代表として考えている」

古瀬幸広立教大学社会学部助教授



 “デジタル文書推進機構”発起人メンバーのひとり。“ワープロ誕生20年 デジタル文書の過去・現在・未来”と題して、日本のワープロの歴史に触れながら講演を行なった。

 「日本のワープロは、黎明期から大きな問題を抱えていた。アルファベットをタイプするだけの英語に比べ、日本語にはかな/漢字変換というプロセスが存在する。これが大きな障害となった。'85年に東芝がパーソナルワープロ『Rupo』を発売したときも、売上はさほど期待されていなかった。しかし、これが大ヒットとなって、メーカーによる開発競争の時代が始まった。ただ、当時の競争は印刷機能ばかりに注目が集まり、アナログ文書をデジタル化するというワープロ本来の存在意義は忘れ去られていた。各メーカーが互いに自社の規格をデファクト・スタンダードにしようと争ったため、各社の機種に対応した文書コンバーターの登場が遅れ、異なる機種間の文章データのやり取りができなくなってしまった。このことが逆に手書き文字礼賛のような風潮を生んでしまった。しかし、インターネット時代の到来で、ようやく紙を使わずにコミュニケーションを行なおうという動きが目立つようになってきた。ワープロは、これまでの文書作成のツールとしてではなく、情報のデジタル化を行なうためのシステムとして使われるべきだと考えている。今後は、文字のコード化や機種依存文字の克服などを、技術者やユーザーも含めたすべての“デジタル文書推進機構”メンバーと話し合っていきたい」

大野邦夫INSエンジニアリング(株)主任技師

 “デジタル文書推進機構”ビジネスDTP推進協議会の委員のひとり、“わが国企業の文書管理システムの実態”と題し、日本の企業における文書のデジタル化の課題を述べた。

 「企業における文書のデジタル化においては、日本と欧米の文化の違いが出ていると思う。日本には、欧米のような系統的文書管理を行なうカルチャーが無い。欧米では、正確な記録と自らの主張を記録することを心がけているが、日本では、時候のあいさつや敬語に神経を注ぐ一方で、大事なことは文書に残さない、という傾向がある。また、日本では、厳密な事実の記録にはこだわりがなく、書類を決裁した日付けを、後から少し前に遡って記録しても、いっこうに気にしない。こうした傾向は、仲間内ならば許せることかもしれないが、この仲間内感覚は、コンピューターの世界とはなかなか共存しにくいものだ。特にネットワークでコンピューターがつながっている時代では、世界中のデータを自分たちの都合でかえなければならず、それは不可能というものだ。また、日本では、官庁や企業では、文書管理を外注化する傾向にあり、専門家が育ちにくい。欧米では、図書館学をはじめとして、文書の系統的処理を行なう学問が発達しており、専門家も育成されている。最近では、日本でも大学に社会工学や図書館学を教える学部も増えつつあり、徐々にではあるが改善しつつあるようだ」

高橋滋子(株)ハーティネス社長

 高橋氏は、コンピューターやネットワークを活用した企業を紹介する記事を、雑誌などに寄稿している(株)ハーティネスの社長。大野氏と同じく“デジタル文書推進機構”ビジネスDTP推進協議会の委員のひとりで、“DTPシステムが目指すもの”と題し、日本の企業でのDTPシステムの活用事例などを紹介した。

「企業でのDTPを利用した文書の作成は、管理部門、営業部門などさまざまな分野でよい効果をもたらしている。これらは、ネットワークでデータを共有することで、一層の効果をもたらしている。管理部門では、ビジネス文書の雛形をあらかじめ作っておき、ネットワークでデータを共有することで事務作業の効率化が進む。また、ある住宅機器メーカーの営業部門が、客に商品を紹介するための資料を作成するためにDTPを使用しているケースを取材したこともある。それまでは、ワープロで作った文書に写真を切り張りしていたが、ライバルメーカーがDTPを利用して資料をつくるようになると、客がそちらに流れてしまうようになった。商品の中身もさることながら、見栄えのいい資料も重要だと気づき、そのメーカーでは、DTPによる資料作成を始めるようになったという。また、ネットワークで資料のテンプレートを共有することにより、地方の支店にも短期間でDTPを導入することができたという。ただ、企業がDTPや文書管理を行なううえで、ハードやソフトをどれにするか迷うことが多い。高橋さんは先程、『日本人の文化は文書管理に向いていない』とおっしゃったが、わたしは、むしろ日本の文化にあったハードやソフトが生まれてくることに期待したい」

 “デジタル文書推進機構”は、企業・団体・自治体向けのセミナーや、“'98デジタルドキュメント/DTP展”(12月開催)などのイベントを随時開催する予定。

    問い合わせ先:(社)日本経営協会内TEL.03-3403-1332

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