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【RoboCupジャパンオープン2000 Vol.4】全方位カメラでロボットの“目”を強化――中型機リーグ編

2000年06月29日 00時00分更新

文● 浅野純也

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RoboCupジャパンオープン2000の中型機部門は、9×5メートルのフィールドを舞台に、45~50センチメートル大のロボットを使って競技を行なう。基本的にロボットは完全自律であり、状態のモニターや設定用のコンピューターがピットに置かれてはいるものの、試合中は個々のロボットがカメラなど自分のセンサーによる情報を処理して行動している。ロボット同士の連携もある。ロボットのサイズが大きく見やすいこともあって、RoboCupでも最も華やかな競技でもある。*

* ちなみにこの競技で使われるロボットの製作記事が昨年、1999年のASCII DOS/V ISSUE誌の4月号~7月号に掲載されているので参照してほしい。

従来タイプに全方位カメラを搭載したNAIST-2000のロボット。紫色の帽子の中にはロボット識別用の番号を書いた紙が入っている
従来タイプに全方位カメラを搭載したNAIST-2000のロボット。紫色の帽子の中にはロボット識別用の番号を書いた紙が入っている



こちらはNAIST-2000の従来タイプ。ラジコンベースの4つの車輪とカメラを搭載、東芝製Librettoで制御するタイプ。今回も基本的なアプローチは同じだという
こちらはNAIST-2000の従来タイプ。ラジコンベースの4つの車輪とカメラを搭載、東芝製Librettoで制御するタイプ。今回も基本的なアプローチは同じだという



NAIST-2000の全方位カメラ。漏斗状のミラーが見える。識別しやすいように紫色の帽子をつけている
NAIST-2000の全方位カメラ。漏斗状のミラーが見える。識別しやすいように紫色の帽子をつけている



全方位カメラによる視界。左側がカメラの映像で、右がそこから色によって抽出した壁とゴールの様子。この情報をもとにしてロボットは動く
全方位カメラによる視界。左側がカメラの映像で、右がそこから色によって抽出した壁とゴールの様子。この情報をもとにしてロボットは動く



大坂大学のロボットも全方位カメラを搭載。前方カメラとあわせて良好な視界を得ていた
大坂大学のロボットも全方位カメラを搭載。前方カメラとあわせて良好な視界を得ていた



この中型機部門でも個々のロボットが全方位カメラを搭載するケースが目立った。もともとこの部門のロボットは自前のカメラを持っており、それでボールやフィールド、ゴールを認識・識別していた。最初は前方だけを見るカメラだったが、それがパン(首振り)も可能なテレビ会議用のカメラになり、より広い視界が確保されていたが、TrackeisやNAIST-2000は前方を見るカメラに加えて頭上の高い位置に全方位カメラを装備したロボットを投入していた。全方位カメラの絵は魚眼レンズのように丸く見えて周囲が歪んだ像になるが、補正用のプログラムによってオブジェクトまでの距離や位置を算出できるよう工夫されている。当然ながら前方カメラに比べて視界が広がり、ボールを見失うことも少なくなったという。

今回参加したのは最初のRoboCupから参加をしている『Trackeis』(大阪大学)や『NAIST-2000』(奈良先端科学技術大学院大学)、『UTTORI United』(宇都宮大学・東洋大学・理化学研究所の合同チーム)を始めとする7チーム。予選を勝ち抜いたのは、TrackeisとNAIST-2000、UTTORI-United、『Win KIT』(金沢工業大学)の4チーム。結局、大阪大学が優勝した。同チームの監督でRoboCupの創設メンバーでもある浅田教授は「ロボットの動きや画像認識など基本能力は上がったものの、まだまだ課題は多い」と総括。さらなるブラッシュアップが必要だということだ。

決勝戦はTrackeis対UTTORI Unitedの対戦。UTTORI Unitedは旧ロボットから大幅にスリム化させた新型ロボットを披露した。青いプレートを貼ったシリンダー形状がそれ
決勝戦はTrackeis対UTTORI Unitedの対戦。UTTORI Unitedは旧ロボットから大幅にスリム化させた新型ロボットを披露した。青いプレートを貼ったシリンダー形状がそれ



最後の試合となった決勝戦は大勢の観客が注目した
最後の試合となった決勝戦は大勢の観客が注目した



表彰式で総評を語る浅田・大阪大学教授。実機部門はさらなるブラッシュアップが必要だと語った
表彰式で総評を語る浅田・大阪大学教授。実機部門はさらなるブラッシュアップが必要だと語った



それでも国内トップチームが性能アップを果たしたのに対し、初参加の三重大や慶應義塾大はトラブルが頻出。初参加の難しさを体現してみせた。これは小型機部門にも言えることだが、ロボット製作にはどうしても多くの費用がかかることから、学生の希望があったとしてもどの大学・研究室でも参加できるものではない。ロボットによっては3ケタの費用がかかることもある(1台につき)。これでは複数台でチームを作ることは難しく、ましてや紅白戦のような練習試合さえままならないのが現状だ。単独では問題なく動作するのにいざ対戦となるとトラブルが頻出するのにはこうした背景がある。米国やドイツなどの強豪国は人員・費用ともに日本の数倍規模で取り組んでいるという。

初出場の慶應大学のロボットはどれも構造が異なるロボットばかり5台でチームを構成している
初出場の慶應大学のロボットはどれも構造が異なるロボットばかり5台でチームを構成している





こちらも初出場の三重大学チームのロボット。コンピュータ部分はパソコンがそのまま搭載されたかのような感じだ。作業時間がなく上手く動かなかったらしい
こちらも初出場の三重大学チームのロボット。コンピュータ部分はパソコンがそのまま搭載されたかのような感じだ。作業時間がなく上手く動かなかったらしい



試合の合間にはサブフィールドにてロボットの調整を行なう
試合の合間にはサブフィールドにてロボットの調整を行なう



RoboCupの提唱国である日本は、第1回大会こそ優秀な成績を収めてはいるが、その後は外国勢が本領を発揮、日本勢は勢いを失いつつある。RoboCupでは毎年レギュレーションを変更し、人間のサッカーのそれ(FIFAのオフィシャルルール)に近づけている。つまりロボットに対する技術的ハードルを高くしており、現状のままでは外国勢に勝つチャンスが遠のくばかりだ。何らかの資金援助なり、プロジェクトなりが必要な気もするのだが。

【関連記事】
【RoboCupジャパンオープン2000 Vol.1】“RoboCup”の日本国内大会をプレビュー
http://www.ascii.co.jp/ascii24/call.cgi?file=issue/2000/0626/topi02.html

【RoboCupジャパンオープン2000 Vol.2】2足歩行ロボットも登場――小型機リーグ編
http://www.ascii.co.jp/ascii24/call.cgi?file=issue/2000/0626/topi06.html

【RoboCupジャパンオープン2000 Vol.3】世界レベルのチームが対戦――シミュレーション部門編
http://www.ascii.co.jp/ascii24/call.cgi?file=issue/2000/0628/topi05.html

junya@sepia.ocn.ne.jp

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